【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた 作:一森 一輝
魔導回路を修復して、エレベーターのように稼働し始めた地面ごとみんなを迎えに戻ると、みんながドン引きの顔で俺を出迎えた。何で。
「テクト君って、その、アレですか? 実は、鳥だったり……?」
「違わい」
ウィズが純粋な目で疑ってきたので、俺は渋い顔で否定だ。
他の面々にも散々イジられつつ、みんなして地面ごと深く深く下がっていく。みんな逞しいから、魔物の死体まみれの地面にもツッコまない。
「……」
「チャミー。大丈夫か」
「き、気にするな、カノン」
訂正。チャミーだけちょっとグロッキーだった。そりゃそうか。死体見慣れてないか。
自由落下でも一分掛かっただけあって、エレベーターでの降下は十分程度時間を掛けて、俺たちは地下に辿り着いた。「うわぁ……」と遠い遠い小さな空を見上げて、みんな嫌な顔。
とりあえず先に進めそうな道を見つけたから「ほら、みんな行くぞ」と声をかけて、俺は歩き出そうとする。
すると、服を掴まれ止まる。振り返ると、アイギスが俯いて俺の服を掴んでいる。
「アイギス?」
「っ、あ、ごめん。何でもないわ。行きましょ」
答えるなり、俺の顔も見ずにアイギスは前を歩き出す。そういえば、俺が穴に飛び込む前、何か言っていたような。
そうして少し歩くと、俺たちはピンチに直面した。
「水没してる……」
続いていた道。その先にある階段。それが、途中から見事に水没していた。
「うわぁ、嫌ですね。まぁ木々も入り込んでるので、どうとでもできますけど」
リーフィが独特の視点から水に触れる。すると木から波紋が広がり「ひとまずは入れるくらいは浄化しました。飲むのはダメですからね」とリーフィが言う。仕事が早い。
「はむ」
そしてまたカバンからお菓子を取り出して食べている。こいつずっと食べてんな。無人島の時食べてなかったのは、シンプルに食料が足りなかったからか? 食いしん坊め。
「ここまで来たら、水に浸かってでも先に進む、か?」
みんなに問いかける。一応島だし、水遊び用の水着は持ってきてあるが。
そう思った瞬間、チャミーとカノンが勢いよく脱ぎだした。
「もちろんだ。ここまで来たら、最後まで行こう」
驚くも、服の下に水着を着ていたようだ。そんなにノリノリだったのかチャミー。そういえば今回の遺跡調査の発起人だったなチャミー。
そんなチャミーに、みんなして微妙な顔で顔を背ける。俺はキョトンとしてから「じゃあ俺も」と服に手を掛ける。
「待ちなさい」「待ってください」
するとアイギス、ウィズのストップが入った。
「何かさっきから二人とも過保護じゃないか?」
「違うわ。テクトに前科があるのよ」「そうですよ」
「……質問だけど、テクトさんも二人みたいに下に水着を着てる、ので?」
渋面の二人に続き、セラフィが俺に質問してくる。
俺は言った。
「いや? まぁ適当にササっと着替えようかと」
「……!」
「セラフィ!? 鼻血出てるぞ!」
セラフィが流した鼻血に俺は驚いて、軽く手当てする。セラフィは「あの、よ、余計出そうになるから、放っておいて欲しいので」と顔を真っ赤にして俺を押しのける。
すこで、わなわなと震えていた赤面のリーフィが叫んだ。
「テクトっ!? ここで全裸になろうとしたんですか!? 無人島生活の水浴びとは全然違うんですけど!?」
顔を真っ赤にしたリーフィの悲鳴に「え? どういうことなので……?」「リンドホルムさん。詳しくお話を……」とセラフィ、ウィズが詰め寄る。リーフィが一転して蒼白に。
すると、アイギスが音頭を取った。
「とりあえず、テクトはあの隙間で着替えて。他の面々はこの辺で適当に着替えましょう」
「であれば、私とカノンの二人で軽く先を見てこよう。行くぞ、カノン」
チャミーとカノンの二人が、水に足を踏み入れ潜っていく。俺はそれを見送って、女性陣の視線に追われて、物陰の小さなスペースでササっと着替えた。
それから、女性陣の着替えが終わったのを確認して出る。
セラフィ、リーフィは以前見た通りの水着で、相変わらず似合っていた。
ウィズは清楚な重ね水着。アイギスは上半身ビキニにショーパンジーンズ。セラフィはミニマムダイナマイトだし、リーフィがフリフリガーリーな奴だ。
すでに全員見た水着だが、水着は何度見ても良い。俺は心の中で合掌だ。褒めたたえたい。
貞操逆転だから、本人たちは何とも思っていないのが、何とも歯がゆいところだ。じゃあ何でこんなに種類あるんだよ女性水着。
「……いやぁ、何で見ても良いですね。テクト君……」
「陰キャ、これ以上エロい目でテクトを見たらアンタを殺すわ」
「えぇ!? いやだって、だってちびっこ!」
「うるさいわね! テクトがあれだけ無防備なんだから、アタシが守護らなきゃでしょ!?」
「アイギスさん、それは酷なので。まったく関係ない女はともかく、身内は許すべきと思う」
「セラフィ!?」「聖女候補様!?」
「まぁ流石に、見慣れちゃったのを責められたくはないですけど……」
「リーフィルテは後で絶対〆るわ」
「りっ、理不尽なんですけど!」
よく分からない話を横目にしつつ、俺は「さて」と水没した階段に向かう。
「じゃあとりあえず行こう。あ、っていうか泳げない奴とかっているか?」
「ぼく泳げないけど、この水着に呼吸系の魔法掛かってるから、気にしなくていいので」
「あ、私のにも軽い補助入ってるので平気ですよ」
「……俺のにはそんな入ってないが」
「普通男性は無理して泳がないじゃないですか」
「アタシのにもいくらか魔法掛かってるわよ。女用はこれが普通」
俺が困惑するとそう説明される。あ、女性用水着に種類があるのってそういうこと? デザインそのものに魔法的な意味があるから?
俺は奇妙な気持ちになりながら「じゃあ行くぞ」と潜水を開始した。俺は鉄甲冑を着ていても泳げるので、水着であれば余裕だ。
少し先に行くと、再び上がる場所がある。
上がると、そこには凄絶な破壊痕があった。
「もういい、カノン。振動で碑文が壊れる」
潜水した先。そこでは恐らく、巨大な何らかの魔物が棲みついていたのだろう。
だろう、という推測なのは、つまり、その魔物が肉片となって転がり、原形が分からなくなっていたからだ。
「分かった、チャミー」
偉丈婦カノンは、手をかざす。するとそこに、魔物の肉片に突き刺さっていた巨大なハンマーが、一人でに舞い戻った。
それを危なげなく、パシッと掴み、カノンは腕を下ろす。人間数人分ありそうな巨大な石造りのハンマー。それが魔法で、空を飛んで戻ってくるのか、と俺は驚く。
カノン。その体躯に、『小さな要塞』の次代第一席。ただ者ではないと思っていたが。
そんなカノンに戦闘を任せて、チャミーは碑文を読んでいた。俺はカノンにドン引きの目を向けつつ、そのままでいるのもアレなので、チャミーに近づいていく。
「ちゃ、チャミー。何か見つかったか?」
「ああ、テクトか。来てくれ」
水浸しのまま近づくと、チャミーが碑文を指で叩く。
「ここの記述だが、当時の物資の管理状況についての備忘録のようなものらしい。そして注目すべきは、ここだ」
「なんて書いてあるんだ?」
「『海神の保管庫』についての情報だ」
俺は目を瞠り、チャミーを見る。チャミーは俺に頷く。
「そうだ。この先を進めば、当時の『主』と戦った神、マレデウスとご対面できるらしい」
「……マジか」
ゾワゾワと、背筋が粟立つ。先ほどの碑文の解読だけでもかなりワクワクしたのに、当時の残骸まで見られてしまうとは。
しかしそこで、チャミーが肩を竦める。
「ただ、簡単には行かないぞ。保管庫の鍵は分散管理がされているようだ。その先に続くいくつかの道が、分けられた鍵に繋がっているらしいが」
そこで、みんな自ら上がって合流してくる。それぞれ分かれて、その鍵を取りに行く、という感じのようだ。
なら、と俺は最初に上がってきたアイギスの手を取る。
「分かった。なら、俺たちはそこの道を行く。他のみんなも適当に決めてくれ」
「えっ、ちょっ、テクトっ?」
まだ話が分かっていないアイギスが、戸惑った声を上げる。俺はアイギスを連れて、「こっちだ」と歩き出した。