【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた   作:一森 一輝

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濡れ透け♡ラブコメ展開(男)

 で、じゃあどうするのか、という話である。

 

 デカいゴーレムを倒すために、俺たちは魔石を確保する必要がある。何故ならパイルバンカーを動かすには魔石が必要だからだ。

 

 持ってないのかって? 持ってねぇよ! 学外に出られなかったんだから!

 

 で、その魔石を確保するためには、魔物を倒す必要がある。相手は何でもいい。慣らしは済んでいるので、ともかくどんなザコでもいいから魔物を倒さねばならない。

 

 じゃあ、その魔物を倒すためには――――

 

「この部屋から脱出しないといけない、と」

 

「えぇと……? この魔法式なら、いや、そもそも、は? いやいやそこからそう発展させたらもう収拾つかないっていうか」

 

「このっ! おりゃっ! 壊れろ! 壊れろ扉!」

 

 ウィズは泉を覗き込んで頭を抱え、アイギスは扉に向かって暴力を振るっていた。

 

 何故か。それは、この部屋がいわゆる『謎解き部屋』であったからだ。

 

 状況を整理するが、俺たちはゴーレムに追われている。だから元の道を戻ることはできない。

 

 だから前に進もうという事になるのだが、いかんせん前に進む扉は鍵がついている。

 

 じゃあ鍵を探すほかないのだが、俺たちが軽く部屋を探ったところ、扉のカギ穴近くに、こんな文言を見つけたのだ。

 

『水は絶えず形を変え、器の底に収まる。王とは強者にあらず、知恵者にあらず、ただ王は王である』

 

 三人全員で、首を傾げる内容だった。

 

 王は王である。いやまぁそりゃそうだが、というか。その前文は何なんだ、というか。

 

 やっぱりここは、『王家の秘密』に関する場所なのか、というか。

 

「他にもヒントがあるはずだ。手分けして探そう」

 

 俺がそう言うと、みんなしてこの部屋に散らばった。

 

 ウィズが、泉の水面に映る影に気付いたのは、それから少しした後だ。

 

「みんな見てください! ここ! 水面に浮かんでるの、古代文字です!」

 

 ウィズの元に集まると、ウィズは真剣な面持ちでこう語った。

 

「泉の表面に、文字が浮かんでるのが分かりますか? この部屋、光源がいくつかあって、光の塩梅で水面に文字が映し出されているんです」

 

「おぉ! 良く見つけたなウィズ!」

 

「えへへっ、えへへへへへ……! でっ、でですね! 読んでみたら、多分古代文字で魔法について色々書かれていて、それがこの部屋のカギを見つけるヒントかもって!」

 

 それを聞いて、俺は感心だ。なるほど、賢いウィズの知恵の見せ所、というワケである。

 

「ウィズ、やったな! 俺も流石に古代文字は読めないし、任せていいか?」

 

「はいっ! もちろんですテクト君! えへへっ、テクト君が頼ってくれて嬉しいです……!」

 

 とろけるような笑みを浮かべるウィズに、そんなに喜ぶことか? と思わないでもないが。ともかく、その場はウィズに一任した。

 

 問題は、それから二十分たった辺りである。

 

「陰キャ遅すぎ。まだ謎は解けないの?」

 

「うっ、うるさいですね。予想よりもずっと難解なことが書かれていて、困ってるんです。文句を言うなら、私の代わりに古代文字を読んでください」

 

 いちゃもんを付けるアイギスに、苦し紛れの言葉を返すウィズだ。

 

 またケンカか? と俺が止めるべく立ち上がろうとすると、アイギスは言った。

 

「……ふ~ん。ま、確かにアタシは古代文字を読めないけどね―――おらぁっ!」

 

「っ!? 何を」

 

 アイギスは駆けだし、鍵のついた扉に飛び蹴りを食らわせた。

 

 ガゴンッ! と硬質な音がする。困惑するウィズに、アイギスは勝気に笑いかける。

 

「アンタが古代文字読んで謎解きするよりも早く、アタシがこの扉を物理的にどうにかしちゃったら、解決したのはアタシってことでいいわよね?」

 

「―――っ、上等です!」

 

 ……と、まぁそんな感じで。

 

 結果二人は、水面に噛り付くのが一人、扉を蹴り続けるのが一人、と言う塩梅になったわけだ。

 

 そんなこんなで、アイギスが扉への暴行を加え始めてからまた十数分。俺は暇をして、部屋の中をうろうろしていた。

 

 アイギスに近づいて、隣のヒントをもう一度確認する。水は云々、王は云々。

 

 読んで少し思うのは、王は強者ではない知恵ものではない、というところ。

 

「これ、弱肉強食的なことじゃなくて、適者生存的な話してるよな」

 

 恐竜は滅びたがリスは滅びなかった、みたいな話に見える。強ければ王なのではなく、賢くとも王なのではなく、王に適しているのなら王である、と。

 

 では王に適するのは何なのかだが、これは書いてない。しかし、前文にはこう書かれている。

 

『水は絶えず形を変え、器の底に収まる』

 

 適者生存。水は形を変え、状況に適する。そういう比喩に見える。

 

 しかし、少し引っかかるのは、「器の底」という書き方。

 

「器に収まるんじゃなく、器の()に収まるのか」

 

 俺はくるりと踵を返す。扉相手に暴れていたアイギスが、「テクト?」と俺に振り返る。

 

 俺が向かうのは泉だ。その水面には光が差し込み、膨大な細かい古代文字が映し出されている。

 

 つまり、泉の中がどうなのかが、この光によって隠されているのだ。

 

「ウィズ、文字読みづらくなったらごめんな」

 

「えっと、だから……えっ? テクト君、今何て―――ええっ!?」

 

 前置きするや否や、俺は泉の中に飛び込んだ。

 

 ざぷん、と入水。水は透き通っていて、中に魔物らしい魔物もいないようだった。

 

 どころか、プールの水並みに清潔に保たれた水の中で―――奥底に、輝く何かを見つけた。

 

 あれだ。

 

 俺は水を掻いてさらに奥にもぐる。水深五メートルくらいに至り、その異物を手に取った。

 

 浮上。「ぷはっ」と水面から顔を出し、俺は泉のヘリに上がる。

 

 そして手の内を確認すれば、そこには鍵があった。水が凍らずに形を成したような、不思議な鍵が。

 

「テクト君っ、いきなりどうし、えっ?」

 

「え、テクト。……それ、鍵?」

 

「ああ。最初のヒントのこと考えてて、もしかしたらって思ってな。つまり」

 

 俺は二人に向けて、びしょ濡れでドヤ顔をする。

 

「この問題を解決したのは、俺ってワケだ」

 

「……、~~~~っ!」

 

「ぅっ、くっ、この! ナマイキテクトめ~!」

 

「あははははっ」

 

 ウィズは顔を真っ赤にして声もなく叫び、アイギスは赤面がちのニヤケ顔で、悔し紛れ風に俺に絡んでくる。そんな二人に、俺はカラカラと笑った。

 

 にしても、と俺は自分の体を見下ろす。思い付きで飛び込んでしまったが、その所為で全身びしょ濡れだ。

 

 濡れた服は体温を奪う、と俺はさっさと服を脱いで上裸に。

 

「ッッッ!? てっ、ててててっ、テクト君っ!?」

 

「わぁぁあああああ!? テクト何してんの!?」

 

「えっなに」

 

 上裸になれずに止められた。何?

 

「なっ、なっ、ななな、何をしようとしてるんですかっ? こっこんな人前で脱ごうなんて」

 

「え、いや、濡れた服はよくないだろ。風邪ひいちゃうって」

 

「もーっ、もー! テクトは本当、昔からもー! 人前で脱いじゃダメって言ったでしょ!」

 

「人を裸族みたいに言うな」

 

 服が濡れたら脱ぐのは標準的な対応だろ。

 

 二人はさっき以上に顔を真っ赤にして、ものすごく弱った表情で俺を制止する。

 

 そんな、自分の裸が見られたわけでもあるまいに。

 

「つーか女の子ならまだしも、男が脱ぐのをイチイチ気にすんなって」

 

「しますけど!? っていうか女が脱いでも気にしませんけど!?」

 

 俺はハッとする。そうだった、貞操逆転世界だったここ。

 

「いやでも、このままだと体冷やすし脱がせてくれ。寒い」

 

「えっ、あっ、うっ」

 

「あーもう、陰キャは役に立たないわね! ならテクト、ちょって待ってなさい!」

 

 俺が不満たっぷりに言い返すと、ウィズはフリーズし、アイギスが動き出す。

 

 動き出すっていうか脱ぎ始めた。

 

「おいおいおい! 待て待て、アイギスが脱ぐ必要はないだろ!」

 

「確かにアタシは小さいけど、テクトが裸になるよりマシでしょ」

 

「マシじゃねぇよ!」

 

 上着を脱いで、薄い肌着一枚で、俺に服を差し出してくるアイギス。

 

 着ろと? 俺にこれを着ろと? っていうかアイギスもかなり薄い肌着一枚なんだが? 真っ白で華奢な素肌が露出してるんだが?

 

 俺はなるべくアイギスを見ないようにしつつ、服を押し返す。

 

「い、いや、これはアイギスが着てくれ。流石に入らないし、っていうか俺は別に、パンイチでも気にしないからほっといてくれれば」

 

「ほっとけるわけないでしょ! 裸の男の子に何も着せずに平然としてる女がいたら、アタシが殴るわ!」

 

 顔を背け、なるべく俺を見ないように、アイギスは服を掴む手をぐっと押し付けてくる。

 

 えー、いや、着るのこれ、いや、えー…?

 

 そこで、硬直していたウィズが、我に返った。

 

「テクト君、……私のローブ、どうですか?」

 

「……あー、まぁ、そうだな。確かにウィズのローブなら……」

 

 ローブだけあって大きいし、基本羽織る感じになるから窮屈でもないだろう。

 

 俺自身はまったく気にしないのだが、二人がワーワー言うので、俺は少し離れた先で服を脱ぎ、パンイチにウィズのローブを羽織って戻ってくる。

 

「よし、じゃあ気を引き締めて行こうぜ」

 

「ちびっこさん可哀想ですねぇ、せっかく服を差し出したのに、サイズが合わなくて断られちゃって……ぷぷぷ」

 

「ぶっ殺す」

 

「ケンカ止めろ」

 

 二人を仲裁しつつ、俺たちは鍵を開けて奥へと進む。

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