【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた   作:一森 一輝

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我らが盾

 扉を開けた先にあったのは、シンプルな広場だった。

 

 真中へと足を進めながら周囲を窺うが、今のところ何もない。最初のエリアみたいに泉があったり、謎解きのヒントが書かれていることもない。

 

「休憩エリアか?」

 

「どうでしょうね……。結構進んできましたし、そろそろダンジョンボスが来そうな気もしますが」

 

「っていうか、本丸倒すためのテクト用の魔石をずっと探してるのに、全然魔物が出てこないんだけど~?」

 

 俺たちが好き勝手言っていると、奥の壁から、三つの爆発が起こった。

 

「ッ! 警戒!」

 

 俺が号令をかけると、それぞれ武装する。

 

 俺は刀。ウィズはバラの杖。アイギスは盾。

 

 そして待っていると、煙の中から、俺たちほどの背丈のゴーレムが、三体現れた。

 

 ……俺たちほどの背丈、っていうか。

 

「何かあのゴーレムたち、俺たちに似てね?」

 

 ゴーレムと言うには、細身の石の人形たち。刀を持つ者、バラを握る者、盾を持つ者の三つがいる。

 

 俺は言った。

 

「ウィズ、魔法で足止めできるか? アイギス、俺たちでゴーレムを叩くぞ」

 

「は、はい! でも、テクト君……」

 

「刀だけでゴーレム倒すのは厳しいでしょ。石よ? 刃が通らないような相手、女でも刀じゃ挑まないわ」

 

 心配そうな二人に、俺は肩を竦める。

 

「ダメだったら二人に任せる。行くぞッ!」

 

 俺が駆け出すと、「ああっ、もう! 陰キャ! アタシは良いから、テクトのサポートを!」「舐めないでください! 全員サポートします!」と二人は言い合う。

 

「ファイアボール! ファイアボール、ファイアボール!」

 

 ウィズが杖を振るい、三つの火の玉を打ち出した。それらはゴーレムたちにぶつかり、その体をのけぞらせる。

 

 スタン。俺たちには、それで十分だった。

 

 素早く駆け寄る。スタンが入っている以上、敵の反撃は考えなくていい。

 

「ふぅぅうううう――――」

 

 長く息を吐く。限界まで集中する。

 

 刀に意識を集める。刀筋を立て、駆け抜け様に渾身の力で振るう。

 

「―――シッ!」

 

 一閃。

 

 重い、手応えだった。手がビリビリするほどのそれ。

 

 本来なら、刀の方が敵ゴーレムより脆かったのだろう。女でも刀で挑まない、という理由を知る。つまりそれは、飴細工で鎧を殴らないのと同じ理由だ。

 

 しかし、だからこそ、俺の技量が生きる。

 

「テクト! こっちは砕いたわ! すぐそっちの、……え、マジ……?」

 

 俺は立ち上がる。振り返った先では、胴体を真っ二つにしたゴーレムが、そこに崩れていた。

 

「ふぅ……アイギス、お前が正しかった。刀で挑む敵じゃないわ」

 

「い、いやいや……それを刀で斬っといて、何言ってんのよ……」

 

 アイギスは引きながらも、「まぁいいわ。残る一匹はアタシが砕く!」と跳躍し、巨大な盾を叩きつけ、粉々に変えてしまう。

 

「ふぅっ! やっぱこの手の敵は、破壊力よね! で、テクト!」

 

 アイギスは砕けたゴーレムの中に手を突っ込んで、俺に何かを投げつけてきた。

 

 空中で掴む。手を開けば、二つ魔石が乗っていた。

 

「これでパイルバンカーは動くかしら?」

 

「任せろ。魔石一つで、パイルバンカー一発分になるからな」

 

 俺は自分で倒した一匹からも、魔石を回収する。これで三発分。

 

 あとは、パイルバンカーがどの程度敵に通じるか―――

 

 そう考えていた、その時だった。

 

 ズシン、と地響きが起こった。最初の巨大ゴーレムが動き出したのだろう。だが、魔石が揃ったこのタイミング。ここに来るなら好都合だ。

 

 そう思いながら待ち構えていたから、いざ奴が現れて、俺はギョッとした。

 

 何故か。

 

「ハァーッハッハッハッハッハ! 僕を殺さなかったことを後悔するんだね! 君たちが恐れていた巨大ゴーレムは、いまや僕のシモベさ!」

 

「ナルシス乗ってる!!!」

 

 ナルシスが乗っていたからである。ゴーレムの肩に。

 

 何で乗ってんだよ。従えたってこと? どういうこと? っていうか想像以上に復活が早すぎる。

 

 俺の困惑に答えるように、ナルシスは大声で語り始める。

 

「僕のオルヴィエート家はね! 元々王家に求められるものを作る、魔法具職人を輩出してきた家系! そしてこの『王家の秘密』と呼ばれる鏡は、僕の家が献上した魔法具!」

 

 つまり、とナルシスは続ける。

 

「ここの試練を、知り尽くしているのさ! 巨大ゴーレムのことも、君たちが乗り越えてきた迷宮についてもね!」

 

 再び高笑いを上げるナルシスに、俺たちが来た扉からぞろぞろと現れるクラスの女子たち。

 

「もっとも、過去の職人が手を入れたのは、オルヴィエート家の人間にゴーレムが従う、という命令だけだったからね。どうしたものかと考えていたら、君たちが挑むようだったから、利用させてもらったのさ!」

 

「……ともかく、ナルシスが徹底的に俺たちの敵だってことまでは分かった」

 

 もっとも、分からない点はいくつか残っている。

 

 ナルシスはデカゴーレムを従える手段はあったが、ここの試練を乗り越える抜本的な手段はなかった。そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 何だかきな臭くなってきた。そう思っていると、ナルシスは手を振った。

 

「先ほどは屈辱をありがとう! そのお返しに、ゴーレムの一撃をお返ししよう!」

 

 巨大ゴーレムが動き出す。遠目にはゆっくり見えるそれが、しかしその巨大な体躯ゆえに、俺たちが全力で逃げ回っても逃げきれないと悟らせる。

 

「ッ、まずい! ああクソ、どうする! あの野郎ふざけやがって。ここでのしたら、さっきの比じゃないくらいボコボコにしてやる!」

 

「そっ、そんなこと言ってる場合じゃないです! まずは自分の身を守らないと―――マジックウォール!」

 

 ウィズが俺の前に飛び込んで、防御魔法を掛ける。しかし、オークの連撃で砕けたような防御だ。きっと巨大ゴーレムには通じない。

 

 ゴーレムの拳が迫る。視覚的にはゆっくりと、しかし眼前に迫るにつれ、まるで隕石が降りくるような光景に、思わず歯を食いしばる。

 

 だから。

 

「アンタらバカなのッ!? このレベルの攻撃防ぐなら、アタシの盾以外に選択肢があるわけないでしょ!」

 

 岩石のような鎧を身に纏いながら、俊敏に飛び込んできたアイギスが、ゴーレムの拳の前に立ち塞がった。

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