【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた 作:一森 一輝
母さんが紹介してくれたのは、母さんが所属する騎士団お抱えのロリドワーフ鍛冶師だった。
「お、久しぶりじゃんテクト! 前よりもいい体つきになったじゃんか~!」
「だろ? いやぁやっぱ訓練頑張ってるからさぁ。見ろよこの大胸筋。パンパンだろ?」
「おっほ♡ いやぁ確かにパンパ」
「人の息子にセクハラすんな」
母さんが鍛冶師を強めに叩く。「いったぁ! 何だよちょっとした冗談じゃん!」と鍛冶師が、涙目で抗議する。
……んん? セクハラ? 何が?
俺が首をひねっていると、母さんが鍛冶師に言った。
「前に話した通りよ。お願いがあるんだって」
「あいあい。まぁ可愛いテクトの頼みとなったら断れないね。んで? なに作って欲しいって? 恋人に贈る指輪とか?」
以前から付き合いのある、馴染みの鍛冶師。この人物は、一見ロリっ子だった。
初対面の時は驚いたものだが、ドワーフなのだと当時母から教わった。この世界のドワーフ女は、ロリになるのが普通らしい。合法ロリだ。
そんな風だから、当時俺はちょっと戸惑ったものだ。ドレスを着たらお人形さんみたいになってしまいそうな女の子が、半裸に近い恰好で炉を前にしているのだから。
今でも、正直直視は難しい。服、全然汗で透けてるし。
俺はロリドワーフの鍛冶師をあんまり見過ぎないようにしつつ、その前に座り込み、口を開く。
「武器を作って欲しいんだ。ちょっと特殊な奴」
「えー? 男が武器もってどうするの。力もないのに」
「その通りだ。俺は力が弱い。だから、力を補うような武器を作りたいんだ」
「……ふーん? けどさ、男が女に勝とうとするなら、それこそ魔剣とかが必要になるけど? それに足る金か、素材はあんの?」
鍛冶師が母親を見て言う。母親は首を横に振る。
俺は言った。
「戦いの基礎概念が違う」
「……ん? 何言ってんの?」
「まぁ聞いてくれよ。戦いってさ、試合とかは確かに見合って勝負開始って感じになる。けど、実戦は違うだろ?」
長年、力に大きく劣る男が、どうやったら女と対等に戦えるのかをずっと考えていたのだ。
その持論を共有して、そこから詰めていけば、男でも女に並べる。女を守れるような武器は、作れるはず。
そんな想いを抱えながら、俺はロリ鍛冶師に話を続ける。
「まず、会敵前の段階があるじゃんか。森の中の戦闘なら、先に見つけた方が有利になる」
「そうだね。先に見つけたら奇襲できるし」
「だから、
俺が言うと、ロリ鍛冶師は少し考えてから「……続けて」と言った。
「でだ。奇襲が成功したらそれで戦闘は終わりだけど、失敗したらどうなる? 必ず戦闘が始まる訳じゃないだろ?」
「そうだね。奇襲に失敗した方が逃げるのか、それとも奇襲を受けた側が逃げるのか、どっちも逃げるか、そのまま戦うのか。流れ次第で変わってくる」
「だよな。で、それを誰が決めるのかって言ったら、かけっこが速い奴だ。かけっこが速い奴は、戦いたくないなら逃げ切れるし、戦いたいなら追いつける」
つまりだ、と俺はつなぐ。
「
「……ははぁ。テクトったらさ、見てくれもいいのに、中身も面白いんだからずるいよね」
ロリ鍛冶師が勇ましく笑いながら、前のめりになる。母親は「テクト、やっぱあんた頭いいわねぇ」と感心している。
「で? テクト。そんなテクトは、どんな武器が欲しいの」
鍛冶師の促しに、俺は答えた。
「パイルバンカー」
「……パイ……? おっぱい? 何テクト~、こんなのが揉みたいの?」
「いやちが、わぁあああ出すな! 脱ごうとするな! おかしいだろ!」
「おっぱいくらいで、テクトったらウブで可愛いわねぇ~」
ロリ鍛冶師は冗談で普通に脱ごうとするし、俺が慌てたら母親はメロメロだしで、俺はこの世界が貞操逆転していることを再認識させられる。
これアレだよな多分。大胸筋触りたいって言われて、どうぞどうぞ! ってなる男心の奴だよな。鍛えてると自信満々で触ってもらおうとする奴。
貞操逆転っぷりが度し難い……と俺は咳払いをして、話を続けた。
「俺はまず、奇襲を掛けたら絶対に勝てるって武器が欲しい。でだ。奇襲っていう、時間的猶予がある状況で輝く大威力の武器って考えたら、パイルバンカーが思いついたんだ」
「どんな武器?」
「平たく言うと、火薬で打ち出す杭だな。こう、ガントレットに杭を固定して、根元に火薬を……」
俺が説明すると、段々鍛冶師の目が輝き始める。
「テクト! おっもしろいこと考えるね! 確かに前準備が面倒だけど、これなら奇襲を受けた奴はイチコロかも!」
「だろ!? いいだろこれ! 他にもさ……!」
俺は思いつくロマン武器を色々と鍛冶師に話す。
狙った高所に一直線に移動するグラップリングフック。
空を移動するパラグライダーにウィングスーツ。
敵を一方的に捕捉する暗視ゴーグル。
どれも現代での最先端技術だったり、現代でも実現不可能だったりする夢の武器たちだ。
だが、この世界には魔法がある。あとは俺の発想さえあれば実現可能!
そう思っていたら、鍛冶師は言った。
「けど、ムリかな」
「えっ」
カラカラ笑う鍛冶師に、俺は愕然とする。
「……何で?」
「素材が足りない。魔剣を作ろうってレベルで無理なわけじゃないけど、必要な素材の中にこの地方じゃ揃わないものが結構あるし」
「じゃあ、それを遠出して取ってきたら」
「作れなくはない。けど、旅ってのは女でも危険だよ。山賊も出るし魔物もいる。まずガーランドさんが許さないでしょ」
ガーランド、というのはウチの家名だ。この場合は母さんのこと。
俺は母さんを見たら、笑顔で「もちろんダメよ」と言われた。
「……ダメ?」
「ダメ」
「どうしても?」
「どうしても」
詰んだ。と俺はがっくり肩を落とす。
それに鍛冶師は笑った。
「アハハハハッ! そう肩を落とさないの~。テクト、見どころがあるし、これから数年……そうね。アンタが貴族学園に入学するまでなら、鍛えてやれるでしょ」
「鍛冶を鍛えられたところでどうなるんだよぉ……!」
俺が失意に唸ると、「えぇ、知らないの?」と慌ててロリ鍛冶師は言った。
「このコンスタンティン王国の貴族の子女が必ず通うことになる、王立貴族学園だよ。その周辺じゃあ、昔っから魔物も鉱石もより取り見取りなんだって」
「……貴族学園……?」
俺は顔を上げる。話には聞いていたが、あまり意識していなかった存在。
貴族学園。
俺は騎士という一代貴族の息子ではあるが、貴族学園に入学することになっている。
古くより、慣習なのだそうだ。騎士の子女は平民ながら貴族学園に入学し、身を立て再び貴族となるべし、とか何とか。
俺の返答に、「そう!」と鍛冶師は笑顔になる。
「これから学園入学まで、テクトをあたしが鍛える。そうしたら、テクトは学園入学後に何だって作れるようになる」
「……うん」
「そして学園周辺は、多様な素材が全部そろう夢の場所! テクトに必要な素材は、全部揃う。全部だよ!?」
「……おぉ」
「あとは、分かるよね? テクトは鍛えた鍛冶の力で、テクトが思うように武器を作ればいい。そうすればお前は、女すら目でもない、最強になれるって寸法ってワケ!」
「おぉおおお!」
俺は段々ワクワクしてくる。
なるほど、なるほど! 確かに自分で武器を作れるようになっておけば、あとは素材を集めて自分で作っちゃえばいい話だ。
俺は気分が上がってくる。それから目を輝かせて、母親に振り返った。
「……確かに、学園入学は避けられないしね。それまで訓練に並行して鍛冶を学ぶって言うのなら、止めることはないわ」
「やりぃ! ありがとう二人とも!」
俺が満面の笑みで言うと、鍛冶師も母親も「ま、このくらいはね」「親のつとめよ、このくらい」と得意げだ。
「じゃあ明日から教えてもらっていいか? 師匠!」
「師匠……いい響き~。もちろん! いつでも来て!」
ロリ鍛冶師はニコニコで言う。俺は全力で首を縦に振った。
そんな俺を見て、母親がぽそっと呟く。
「……我が子ながら、おそろしい女ったらしよねぇ。家族全員に、今度は鍛冶師まで……」
母親が何を言ったのかは俺には聞こえなかったが、ともかく俺は、母親からの訓練に加えて、鍛冶を学ぶことになるのだった。