【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた   作:一森 一輝

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行間の思い

 みんなによって拉致未遂で済んだ俺は、気絶していたウィズ、シアを起こして、一旦俺の部屋に避難させることとなった。

 

「て、てててて、テクト君の部屋、テクト君の部屋……!」

 

「陰キャ、そういう状況じゃないから」

 

「分かってますよちびっこ! それでも女心はこういうのに弱いんです!」

 

 ウィズとアイギスはいつも通り。

 

「……前後不覚になると、あんなにあっさりやられるんですね」

 

 シンプルに不覚を取って反省しているシア。

 

 そして。

 

「……」

 

 全身を拘束されつつも、頬をぷっくり膨らませて、不満そうな五ねぇことヴィーである。

 

「えー、と、いうことで、改めてみんなに紹介するな」

 

 俺は五ねぇの隣に座り、手で示す。

 

「俺の一つ上の姉、ヴィー・ガーランドです。今回は身内が大変ご迷惑をおかけしました」

 

「てっ、テッ君! テッ君が謝ることじゃないよ! 元はと言えば、テッ君を弄ぶ姫様たちが悪、痛い!」

 

「だまらっしゃい! 弄ばれてないと何度言ったら分かるんだこのアホ姉が!」

 

「ひぃ~ん……!」

 

 五ねぇは俺に叱られ、おいおいと泣いている。

 

「……わ、わたくしが呆気なく負けた相手が、これ……」

 

 そしてシアが愕然としている。これに負けたと思うと恥なのは分かる。

 

 すると、ベッドに腰掛けたアイギスが、頬杖をついて言った。

 

「でも、流石ガーランド家とは思わされたわ。何が『最弱』よ。血統持ち三人を下しといて」

 

「ああ……五ねぇの『最弱』は、『私最弱なのであらゆる手を使いますけど許してくださいね』の『最弱』だから」

 

「開き直ってんじゃないわよ」

 

「みんなしてペシペシ叩かないでぇ!」

 

 俺とアイギスでペシペシ頭を叩くと、五ねぇがウェーン! と泣きだした。

 

「だ、だってぇ……! テッ君がわたし、一番大切なんだもん……! もし騙されていいようにされてるのかもって思ったら、居ても立ってもいられなくてぇ……!」

 

 えぐえぐと泣きながらそんなことを言われると、俺たちも叩く手が止まるというもの。

 

「……まぁ、気持ちは嬉しいよ。ただ、すぐ暴走せずに、事実確認をしっかり取ろうな」

 

「そうね。いずれ騎士になるなら、ぐっと堪える場面もあるから。忍耐力も必要よ?」

 

 俺とアイギスで揃ってよしよしと五ねぇを撫でる。背後でシアが、ウィズに「何だか赤ちゃんみたいですね」「王女様は人のこと言えないんじゃ」「えっ」と刺されている。

 

「ともかく、だ」

 

 俺は手を叩き、この場の総括に掛かる。

 

「五ねぇ、この状況見たら、流石に分かるだろ? みんな俺をいいようになんか扱ってないし、むしろ親身になりすぎてるくらいだ。みんなのこと認めてくれ」

 

「っ! て、テクト君のご家族にご挨拶……!」

 

「友達としてな」

 

「ヴっ」

 

 ウィズが背後で食らっているのを無視して五ねぇに迫ると、五ねぇは唇を尖らせ、ぷい、とそっぽを向いた。

 

「……やだ」

 

「何でだよ。深夜に張り込んで俺を守ろうとしてくれるんだぞ? こんないい友達、なかなかできないだろ」

 

 俺は渋面になる。背後で「テクトに友達って言われるたびにちょっと辛くなっちゃうわね」「分かりますよアイギス」と何か言い合っているが、スルーして五ねぇに詰め寄る。

 

 五ねぇは、しばらくすると観念して、こう言った。

 

「……だって、『最弱』のわたしよりも弱い子なんて、テッ君にふさわしくないもん」

 

「「「ッ!」」」

 

 この場に戦慄が走る。三人が愕然として五ねぇを見る。

 

 五ねぇは、勢いづいて、好き勝手言い始めた。

 

「わたし、ガーランド家で一番弱いもん。そんなわたし相手に三対一で負けかけるとか、テッ君を守るのにふさわしくないもん。家柄も正直高すぎるし」

 

「友達に守ってもらうつもりないっての! 家柄も友達なら関係ないだろ!」

 

「友達友達って、テッ君の嘘つき! その子たち完全にテッ君のことそういう目で見てるもん! 女は狼なんだよ!? 簡単に信用しぎゃっ」

 

「ちょっと黙れ! 思春期の繊細な人間関係に土足で踏み入るな!」

 

 五ねぇの脳天にチョップを叩き込み、強制的に黙らせる。

 

 こいつ、何てこと言うんだ。普段俺が気を使って触れないようにしている話題を、気軽に滅茶苦茶にしやがって。

 

 すると、ウィズが立ち上がった。

 

「お姉様!」

 

「おねっ!? わ、わたしはあなたのお姉さんじゃありません!」

 

「いえ、お姉様! そこまで言うなら、私、鍛え直します! お姉様に勝って、テクト君(のお嫁さん)にふさわしいって認めさせて見せます!」

 

「うっ」

 

 ウィズの熱意に、五ねぇが怯む。

 

 そこに、アイギス、シアと続いた。

 

「そうね。(テクトの嫁に)ふさわしくないって言うなら、強くなって見返すしかないわ」

 

「ですね。ちょうど力をつけ直すタイミングでしたし、(テクトの正妻に)ふさわしいと認めさせて見せましょう」

 

 みんながやる気を出している。一方、逆方面にやる気を出すのが五ねぇ。

 

「うっ、み、認めないもん! テッ君はわたしの弟なんですー! わたしこそ鍛え直して、テッ君(のお嫁さん)にふさわしいのはわたしだけって認めさせてやるんだから!」

 

 五ねぇと三人が、全力で睨み合う。それを蚊帳の外から見つめつつ、俺は言った。

 

「……おかしいな。何か、言ってないはずの行間の言葉が聞こえる気がする……」

 

 はたまた中高位貴族の令嬢たち、はたまた血の繋がった姉。どれだけ想いあっていても、結婚などできない美少女たち。

 

 俺は歯を食いしばりながら「婚活一生上手く行かねぇ……」と頭を抱えるのだった。

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