【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた 作:一森 一輝
どうすんのこの子
俺は対応に迷いに迷った挙句、登校時間がやってきてしまって、とりあえず制服に着替えて寮を出ることにした。
「ご主人、何で置いてくの。連れてって」
「ヤ、とかじゃない! 全裸のロリとか連れてけるワケないだろ!」
「置いてかれるの寂しいからヤ。いいから連れてって」
「何でそのクールな感じで寂しがりなんだお前!」
俺は無理やり明鏡止水を名乗るロリを自室に閉じ込め、外から鍵を掛けて寮を出た。
するとウィズが、パァアアッ、と表情を華やがせて迎えてくれる。
「テクト君っ、おはようございます! じゃあ一緒に登こ……」
「あっ、ああ、おはよう、ウィズ……」
俺が挨拶すると、ウィズが奇妙そうな顔をする。
「テクト君、どうしました? 何か妙にソワソワしてるような……」
「あ、ああ、えっと、それなんだけど、何というか」
相談していいものか悪いのかも分からないままに俺がごちゃごちゃ言っていると、不意に背後でガチャと音がした。
振り返る。すると明鏡止水を名乗る全裸白ロリが、扉を開いて現れる。
「ご主人、置いてっちゃヤ。意地悪しないで」
「――――ッ」
見られてしまった! と俺は凍り付く。鍵を開けてきたか。そりゃそうだよなチクショウ! と俺は焦る。それから、油を刺していない機械のような動きでウィズを見る。
「え、えっと、ウィズ。これにはその、ワケがあって」
直後だった。
ウィズは、普段の動きからは考えられないほど俊敏に動いた。ひっ、と俺が竦むと、ウィズは――――全裸ロリの頭を鷲掴みにして、至近距離で睨みつけていた。
「あ? 何ですかあなた。テクト君のこと何て呼びましたか? 何者ですか? 速やかに答えないと魔法でブチ転がしますが」
「ひっ」
「ウィズっ!? あ、そっか貞操逆転世界だとそうなるんだ!?」
戦慄である。この世界マジで女の子に対して厳しすぎない? そういうもん?
とにかく、と俺はウィズをとりなしに掛かる。
「ちょっ、ま、待とう! いや、俺も困ってはいるんだけど、一回俺の部屋で話を」
「お話ですか? でしたらこんな朝から女子が男子寮に入るのは真剣にまずいので、女子寮の私の部屋に移動しましょう」
「えぇっ? いや、だとしてもこの子全裸」
「私の上着着せときゃいいですよ女なんて。しかも子供なので、多少は何とかなります」
クソ雑提案を受け、「えぇ~……?」と思う。思うが、ウィズの部屋から全裸の小学生男子が出てきたら、確かに俺もこんな対応をするかもしれない。
う、ううむ。何というか、こういうとき貞操逆転世界は感覚バグるなぁと思いつつ。
俺たち三人は、急遽ウィズの部屋に避難することとなるのだった。
さて、ウィズの部屋である。
女子寮は想像よりは少し雑然としつつも、女子特有の甘い匂いがして、落ち着かない気持ちで入った。
「えっと、さ。い、いいのか? 女子寮に男子が入って……」
「原則良くないですけど、男子寮に女子が入るよりはよっぽどいいんじゃないですか?」
言われて、逆転フィルターに掛け、「まぁそうか……」と一旦納得する。一旦。
俺たちは廊下を進み、ウィズに招かれて部屋に入った。
ウィズの部屋は、数人の相部屋のようだった。女子らしく整理整頓がされ、どことなくガーリーな装飾が目に付く部屋。貞操逆転世界でも、こういうのは男女変わらないんだよな。
……男子が個人部屋で、女子は相部屋……。むず痒いというか、気持ち悪い。
「ルームメイトは登校してるはずなので、人の目を気にせず話せると思います」
どうぞ、とウィズが俺に座布団を出してくれる。半裸ロリがウィズを見ていると、「あなたにはないですよ。適当に座ってください」とウィズも座布団とか無しに座る。扱い。
「……で、テクト君。結局この露出狂ロリは何なんですか?」露出狂ロリて。
「俺も戸惑ってるんだが……、鏡の中で回収した剣があったろ?」
「鏡の中というと、テクト君とちびっこと私の三人で、ナルシス君のゴーレムと戦った?」
「そうそう。こいつが言うには、あの時の剣らしくて」
「はい???」
ウィズが眉をひそめてロリを見る。ロリは無表情のままピースする。
「その通り。ワタシはご主人の聖剣・明鏡止水」
「「……」」
俺とウィズは揃って口を閉ざす。こいつ無表情の癖に剽軽だな。
「……テクト君はこれを信じるんですか?」
「実際あの刀はなくなってたけど、原因も何も分からんからうーん……みたいな」
俺が言うと、ロリが言う。
「信じてくれないの? 何で?」
「いや、信じないだろ。信じてもらいたいなら証拠出せよ」
「分かった」
ロリが立ち上がり、くるりとダンスのように回転する。するとキラキラと白い光がロリの体を包み込む。うぉおお何だ何だ。
と思っていると、光の中から、呪刀が現れた。カラン、と音を立てて地面に倒れる。
「「……」」
絶句。俺とウィズはそろって絶句である。
とかやっていたら、再び光が呪刀を包みだし、寝転んだ半裸ロリが現れる。
「これで信じてくれた?」
「……そう、だな。流石に、信じる、か……」
動かぬ証拠過ぎた。そんな感じなんだ? 不思議な白い光に包まれて変身するんだ?
するとウィズが、「だとしても」と続ける。
「何で急に人の形になったのかが分かりません。切っ掛けとかありました?」
「さぁ……。五ねぇ救出のタイミングから、多少意思っぽいのは見せてたけど」
そこで思い出す。五ねぇ救出といえば、戦利品に貰った指輪があった。
武の精霊の加護環、とか言ったか。ちょうどポケットに入れっぱなしなのを取り出す。
「シアが、武器の効果を上げるアーティファクトだって言ってたから、持ち帰ったんだけど」
「そういえばテクト君が選んだのってそれだけでしたね」
ウィズと二人でそんなことを言い合っていると、半裸ロリが指輪に手を伸ばしてくる。
そしてその幼い指が指輪に触れると、指輪が砕けた。
「はっ?」
中から、白い光があふれ出す。ロリの手の中に、その光が吸い込まれる。
「おお」
「おおじゃないが」
壊しやがったこいつ。貴重なアーティファクトを。
と思っていたら、ロリはぐっぱぐっぱと手を開いて閉じてを繰り返す。すると最後に開いた瞬間、その手の内に立方体の鉄が現れた。
ロリが手を動かすと、それに従って鉄は形を変える。針のように尖ったり、輪っかの形になったり、また立方体に戻ったり。
そしてロリは、満足そうにこういうのだ。
「ご主人、朗報。ワタシ、パワーアップした」
「えぇ……」
ロリは目を輝かせている。その姿を見ると、俺は文句を言う気が失せてしまい、ため息を吐きながら「良かったな……」とその頭を撫でた。
「え、ええと。となる、と、元々謎だったあの剣が、アーティファクトの力で人間の姿になるようになったってことですか……?」
「……多分」
ウィズの推測に、俺は頷く。
にしたって、やはり謎に包まれたままだった。他の武器は人間になっていないのに、こいつだけが何で、とか。そもそも意思をもって人間として動くのも何故か、とか。
だがそんな謎を追うのは、現状に余裕ができてからだろう。俺はロリに目を向ける。
「ご主人、パワーアップしたワタシで魔物を切ろ? やっぱり朝は生き血吸わなきゃ」
ご機嫌で、クールっぽい態度のままねだってくる半裸ロリに、俺は言った。
「言ってることが完全に魔剣なのは置いといて……とりあえずお前には、真っ先に常識を叩き込む必要があるな」
「?」
首を傾げる半裸ロリに、俺は深くため息を吐くのだった。