【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた 作:一森 一輝
他にもメイと一緒に暮らすにあたって必要そうなものを買い揃えた俺たちは、無事そのまま帰宅していた。
「あー疲れた~!」
日が暮れるまで色々悩んで買い揃えるのは思ったより気疲れする作業で、俺は買った物をベッド脇に置いてから、ベッドの上に飛び込んだ。
するとメイも俺を見習うように、ポーン、とベッドの上に飛び込んでくる。
「つかれたー」
「お前は何もしてないだろが」
「あう」
メイの鼻をつまむ。メイがパタパタと手足を動かすので、俺は満足して手を放す。
「体力はいつもよりずっと使ってないはずなんだが、慣れないことをすると気疲れするな」
「そうなの? ご主人は軟弱。メイはお買い物楽しかった」
「……メイって呼び方気に入ったのか?」
「気に入った。ご主人のネーミングセンスは悪くない」
ふんす、と満足そうに言うメイ。「何を偉そうに」と頬を引っ張ると「あうあうあう」とまたメイは手足をパタパタさせる。
「……よしっ。じゃあ寝る前に色々済ませるか。まず服一式をクローゼットに纏めよう」
「ご主人がんばれー」
「お前の物なんだからお前がやんだよ」
「ご主人厳しい……」
俺は起き上がってメイの両手を掴んで起き上がらせ、浴衣数着をクローゼットの空きスペースに掛けさせ、パンツなど下着類をタンスに仕舞わせる。
「洗濯とかは魔法コインランドリーみたいなので回すから、俺のと合わせて洗えばいいか。あと歯ブラシ類……っていうかそもそもメイって飯食うのか?」
いそいそパンツを取り畳むメイを見る。懐に取っておいたジャーキーがあったから、口元に寄せてみる。
「……? パク」
「お、食べた」
メイはジャーキーを咀嚼する。もぐもぐと、ひとしきり食べてから一言。
「イケる」
「おお、そうかそうか。もう一ついるか?」
「食べる」
ジャーキーをもう一つ餌付けする。メイはどうやら飯を食べるらしい。
まぁ、元々魔物の生き血を欲しがっていたような奴だ。使って手入れをしようと思っていたら、血脂が消えていたこともあった。タンパク質を摂取するタイプの刀なのだろう。
……考えれば考えるほど魔剣だな。聖剣って誰がメイに言ったんだ?
俺は首を傾げていると、食べ終えたメイが満足そうに言う。
「むふー。今日は楽しかった。ご主人とウィズと沢山話せたし、色んなところに行った」
「楽しかったか」
「うん。いつもは話せなかったから寂しかった。使ってくれてる時は良かったけど」
メイはぴと、と俺に抱き着いてくる。すると小さな子特有の、ミルクっぽい匂いがした。
こうしていると人間の子供そっくりだな、と思う。そう思いながら、昼のことを思い出す。
「メイ、喜んでくれてるところ悪いんだが、明日も授業中あんなにワガママを言うのは止めてくれ。俺たちにもやることがあるんだ」
言うべきことは言わねば、と俺が言うと、メイは絶望のまなざしで俺を見る。
「や、やだ……。話しかけても答えてくれないの、寂しい……」
メイが、悲しそうな目で俺の服をぎゅっと握る。そんな反応をされると、俺も弱い。「う」とつい言葉に詰まって、頭を掻いてしまう。
「……俺もメイに意地悪したいわけじゃないんだが、いかんせんアレはなぁ……」
正直授業どころじゃなかったし。うーんと唸る。それで、思いついた。
「ならさ、メイ。文字は読めるか?」
「文字? ……少し、なら?」
「なら、言葉の代わりに文字を書いて返事するよ。それならどうだ?」
「ん、んん。でも、あんまり読めない、から」
「なら、夜はメイに文字を教えるよ。それでどうだ?」
「教えてくれるのっ? それなら、うん」
メイは、目をキラキラ輝かせて頷いた。俺は笑顔で頷く。
「よし。じゃあ明日から教えるよ。ただ今日は疲れたから、身支度してお休みだな」
「分かった。もう寝るの?」
「いや? 軽く運動してから風呂に入って、その後だな」
特に今日は、運動がまともにできてない。しっかりめにやっておこう。
話ながら、俺は軽く伸びをする。ストレッチすると体が凝っている感じがしたから、「うん」と俺は頷いた。
「ま、腹筋百回、スクワット二百回、腕立て百回くらいを軽くやれば、今日はグッスリだろ」
パッと上半身を脱ぐ。それにメイは、何故か「ひゃ」と言って目を覆った。
「ん? どうかしたか?」
「あ、あの、ご、ご主人、裸……胸板……あ、腹筋もすご……」
「運動するときは上裸くらいにはなるだろ。パンツ一丁とかじゃないんだから気にすんな」
これでも配慮しているつもりだ。普段のように一人だったならパンイチでやる。
俺は地面に腰を下ろし、テキパキ運動を始める。まずは腹筋百回一セット。
「ふっ、ふっ、ふっ」
「ワァ……」
何かメイが赤面して俺を見ているが、俺は気にしない。子供だからかウブなんだなぁと思うだけだ。
少し汗を掻きつつ、百回完了。次はスクワット二百回。これもテンポよくこなしていく。
「ご主人、汗かいてる……」
「そりゃ掻くだろ。汗ばむくらいの運動だけど」
スクワットも完了。最後は腕立て伏せだ。気付けばメイが、やたら距離が近い。運動に興味があるのだろうか。
「興味あるならメイもやるか?」
「え、あ、えと、運動はやらない」
「ああ、そう? まぁいいか」
腕立て伏せの体勢を取る。そして最後の腕立て伏せを始める。
「ふっ、ふっ、ふっ」
「……ごくっ」
腕立て伏せを終え、胸板がパンプアップする。デカくなったな……と我ながら満足だ。
すると不意に、メイがぺたぺたと俺の胸板を触ってきた。
「ご主人の胸板、おっきいね……」
「ん? ああ、だろ? 鍛えてるからな」
「う、うん……はわ……」
無邪気な手つきで、しかし真っ赤な顔で、メイは俺の胸板をしきりに触る。
そこで、メイは言った。
「ご、ご主人……なんかね、あのね。ご主人の裸見てるとね、心臓がドキドキして、お腹の奥がキュンキュンするの……。何でだろ……?」
「……んん」
俺はそこでやっと、メイの様子がちょっとおかしいことに気付いた。
何か聞いたことある言い回しだな、と思う。前世の薄い本の一ジャンルで良く聞く定型文にやたら似ているというか。おねショタジャンルの、ショタっぽい発言というか。
「あ」
そこで俺は、この世界が貞操逆転世界であることを思い出す。胸板が前世で言うところのおっぱい並みに価値があるモノであることも合わせて。
「……メイ?」
「ご主人、何か、あの、あのね……」
メイは困惑した様子で、赤面したままモジモジしている。
それに俺は、こう言った。
「じゃあ俺は、一人で風呂入って寝るから」
「えっ」
いや、ダメだろ。刀とはいえロリに手を出すのは。前世由来の禁忌感が勝つわ。
そう考えると、おねショタのお姉さんって結構ヤバいことしてんだな……と思う。俺は半眼でスタスタ進み、自室のシャワーを浴びるのだった。