【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた 作:一森 一輝
その後、一緒にシャワーを浴びたがるメイを退け、一緒に寝たがるメイに押し切られ、一進一退に末に、俺たちは朝を迎えた。
無論おにロリ展開は、お兄さん(俺)がその気にならないと関係など進まない、ということで、特に何もなく俺たちは早朝に起きた。
「ん~! いい朝だな。今日はちゃんと朝早く起きれたか」
「……お゛はよ゛う……ご主人……」
「うわメイ声ガッラガラだぞ。どうした」
「……何か、ドキドキして、モンモンして、寝れなかった……」
「なる、ほど……?」
そんな好きな女の子と同衾した少年みたいな、と思う。まぁ人間の姿で過ごす初めての夜だし、思うところがあったのだろう。
と、俺はすっかり昨日の一幕のことなど忘れて「よし、じゃあ早朝訓練行こうぜ」と身支度を整える。
するとメイが俺の手を取って、こう言った。
「ね、ご主人。せっかく訓練するなら、メイの新しい力も試して欲しい」
「新しい力?」
「これ」
メイが俺から手を放し、指を広げる。するとその中心で、立方体の鉄が現れる。
「それ、昨日出してた奴か」
「これ、ワタシ本体ほどは体積作れないけど、ん、んん……!」
メイが力を籠めると、脇差のように変化する。それを俺に手渡してきた。
作りは、しっかりしている。俺がほうと感心していると、メイが言う。
「こんな風にすれば、サブの武器としてもワタシ使える。だから他の武器使わないで。ご主人には、聖剣のワタシ一つあれば十分」
「メイは道具に嫉妬するよな」
俺は苦笑しつつメイの頭を撫で、脇差を眺める。
「んー、脇差は微妙だが……質問いいか?」
「うん。何でも聞いてご主人」
「この脇差さ、例えばこう、敵に刺してその敵が崖から落ちたとするだろ? すると脇差も手元から離れる。そうしたらどうなるんだ? もうこの操れる鉄は戻ってこないのか?」
「ううん。貸して」
脇差をメイに返す。するとメイは脇差を鉄球に変え、ポイっとベッドの上に投げる。
「こんな風に手元から離れても、支配下の鉄は戻せる。こんな風に再構成するから」
メイが言うなり、ベッドの上の鉄球は散り散りの光になって、メイの手元に戻った。メイの手の中に、再び脇差が現れる。
「へぇ……。いいな。再構成はどのくらい魔力を食う?」
「魔法よりも全然食わない。形を変えてるだけだから。魔法は戻ってこないけど、鉄は戻ってくるし。再構成も簡単な構造なら一瞬」
「なるほど、なるほど、なるほど……。それなら、うん、やれるな。イケる」
「ご主人?」
不思議そうな顔をするメイに、俺はニヤリ笑いかける。
「メイ、お前の新能力、もっとすごいことに使えるぞ。とんでもない武器になるかもしれん」
その日の放課後、俺はウィズとメイとで集まって、学生街の空き地にたむろっていた。
「テクト君、ちびっこ2は人間の姿にしてていいんですか?」
「ウィズ、ちびっこ2って呼び方、ヤ。名前で呼んで」
「え、あ、えと、あの、な、名前で呼ぶのは、ちょっとは、恥ずかしい、というか」
「ウィズ、照れ屋さん……?」
「え、だって友達みたいじゃないですか」
「友達だと認められてない……」
「ゴホン」
二人がよく分からんやり取りをしているのを、俺は咳払いで遮った。それから、持ってきた道具を見せる。
「まず、二人に見せたいものがある。これだ」
「ご主人、それ何? 弓がついてるけど弓じゃない」
「クロスボウですね。しかもちょっと機構が珍しいタイプの……あっ」
ウィズが察したのを見て、俺はニヤリと笑う。
「ご明察。これはクロスボウだが、ただのクロスボウじゃない。いわゆるリピータークロスボウってものだ」
リピータークロスボウ。俺は持ってきた武器を触る。
「基本の構造はクロスボウまんまだ。弓は腕で引くが、クロスボウはレバーだったり道具で引く。弓を引いたまま構えなくていいから、素人でも狙いを定めやすい」
現代人向けに伝えるなら、クロスボウとは弓を乗せた銃のようなもの。火薬を使わない代わりに、弓を弾いて弾となるボルト(短い矢)を込める必要がある。
「で、リピータークロスボウっていうのは……こう使う」
俺は上部についているレバーを引く。するとストックされていたボルトが落ちてきて、同時に弦が引かれ、弓がつがえられる。
で、レバーを引き切ると、そのまま弦がボルトを弾いて、射出された。レバーを戻す。でもう一度引くと一瞬でまた矢が飛んでいく。
「おおー、楽しそう。ご主人、メイも。メイもやりたい」
「いいぞ。使い方はレバーを引いて戻すだけだ。あ、絶対人には向けるなよ。ケガするから」
「分かった」
メイがレバーをガシャガシャ引いたり戻したりして、秒間でバコバコクロスボウを連射する。「わほー」とメイは楽しそうだ。
一方、ウィズは目を輝かせてリピータークロスボウに見入っている。
「知ってはいましたけど、直接見るのは初めてですっ。よくこんなの持ってましたね」
「ああ、色々戦闘方法を模索してた時に、連射力がある武器っていうので作ってたんだ。現代兵器を除けばこれが最高連射速度だからな」
「現代兵器? えっと?」
「すまん、妙なこと言った。気にしないでくれ」
ちょこちょこ口を滑らせて前世知識を言っている。反省。
そこで、メイが「あれ、ご主人。弾切れた」と言ってくる。
それに俺は、ニヤと笑って、こう言った。
「メイ、脇差じゃなくてボルトを新能力で作ってみたらどうだ?」
「! 分かった」
メイは頷いて、鉄を操り、リピータークロスボウの弾倉に数十発ボルトを詰め込んだ。
それを見て、ウィズが目を剥く。
「て、テクト君、まさか、そういう事ですか」
「ああ、ウィズは話が早くて助かる」
俺はご満悦で語る。
「メイに聞いたあの能力だが、放った矢弾はローコストで回収して手元に戻せるらしいんだ。メイが作れる限界のサイズはざっと600グラム、矢弾は20グラム。つまり」
「弾丸総数は30で、それを打ち切る前に最初の弾を回収できれば―――実質無限」
「その通り! メイの回収能力に合わせる必要があるが、リピータークロスボウの作りを魔石で動くエンジン式にすれば、火力と連射力を同時に担保できる」
例えば、引き金を引いている間、常に弓を引いて矢をつがえて発射、という風に作れば、サブマシンガンもかくや、というロマン武器の完成だ。近~中距離で猛威を振るうだろう。
メイを見る。メイはリピータークロスボウが気に入ったらしく、無限に弾を発射している。
そう、無限に。発射弾数はとうに30を超えている。だがスムーズにメイは弾を回収し、疲弊した様子もなく、「おほー」と弾を撃ちまくっている。
「……テクト君。完成したら量産できませんか? 戦争が変わりますよ、これ」
ウィズは全身を震わせて、めちゃくちゃに頭を回している。それに俺は、笑顔で言った。
「悪いな、この能力持ってるのはメイだけなんだ」
「ですよねー!」
ワーン! と泣くウィズに、まぁ本当に量産しようと思えば出来てしまうのだが、とは言わないでおく。銃の仕組みは分かっているが、教えない。
だってウィズ、気付いたらガチで量産して、世界変えちゃいそうなんだよな。だから気付きは与えないでおくのだ。怖いから。