【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた   作:一森 一輝

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ウィズの新発明

 俺が上手く行きそうだ、とニコニコでいると、ウィズが言った。

 

「……テクト君がこんなすごいのを発明してるんじゃ、私も負けてられません……」

 

「お、ウィズが燃えてる」

 

 ゴゴゴゴゴ、とウィズから凄まじい気迫を感じる。それに俺は、ワクワクしてしまう。

 

 ウィズは俺も認める、すさまじい発明者だ。血薔薇の杖とか、どういう作りなのか聞いた時度肝抜いたからな。被害者の血で自己増殖する魔法陣とかエグすぎる。

 

「せっかくなので、私の新発明の構想も聞いてもらって良いですか?」

 

「もちろん。今回の無限マシンクロスボウは鉄と魔力回路だけだから、安価だし割と簡単に作れそうだしな。偶にはそっちの手伝いもさせてくれ」

 

 お蔭で今回は、アイギス大蔵大臣に借りを作らずに済みそうでホッとしている。いや、借りを作るのが嫌というのではないのだが。ありがたすぎて罪悪感というか。

 

 それはともかく。ウィズが話し出す。

 

「最近思っているのが、私、至近距離が弱いですよね。中距離から遠距離特化というか」

 

「ああ、それはそうだな。でもメイジ系の魔法使いなんだし、仕方ない気もするが」

 

「そう言ったらそうなんですけど、でも至近距離も対応できるならしたいというか。で、最近注目してるのが、キメラで」

 

「キメラ」

 

 思い出すのは、以前作った謎生物。完全に絶えず自壊する泥の人形だった、最期の言葉が「もっこす」の奴。

 

 しかしウィズが燃えているという事は、しっかりとした奴を作るつもりでいるのだろう。

 

「……ウィズもちゃんとマッドサイエンティストやってるなぁ……流石『魔導博士』」

 

「で、ただすごく強い、みたいなのを作ろうとすると、燃費が悪いんですよね。爆速で動き回るドラゴン、みたいなのを作ると大抵一時間とせず餓死するんですよ」

 

「あ~……」

 

 ハチドリ、という鳥がいる。ものすごく羽ばたきが速く、鳥で唯一空中静止、バック飛行ができるとか。

 

 で、そのハチドリはものすごくエネルギーを食う。花の蜜を吸っていなければ、数時間から半日で餓死するという。爆速ドラゴンというのは、つまりそういう死に方をしたのだろう。

 

「だから、燃費が良くて、狙ったタイミングで高いパフォーマンスを出してくれるキメラを作りたいんですよ。それで注目してる要素として、ステルス性というか、そ、その、あの」

 

「ん? ステルス性というか?」

 

 俺が先を促すと、ウィズは恥ずかしそうに言った。

 

「て、テクト君っぽい動き、というか……」

 

「あー……はいはいはい」

 

 確かに、五ねぇ救出の際はステルス性と狙ったタイミングの高火力を発揮した。ああいうのを作りたいのか、と俺は理解する。

 

「となると、俺の動きを研究したい、とか?」

 

「えっ、させてくれるんですか!? あっ、えっと、でゅふ、そ、そうではなくてあの」

 

 出来るなら是非させて欲しい、みたいな反応を聞き流しつつ、俺は続く言葉を待つ。

 

「そ、そそそそそ、そのっ、て、テクト君の、か、髪を、数十グラムほどいただきたくてっ!」

 

 そしてウィズは、大分なことを言い放った。

 

「おぉ……」

 

 俺はすっと居直る。引いてない。引いてないよ?

 

「ああっ、ごめんなさい! 違うんですあのっ! ひっ、引かないでください!」

 

「大丈夫大丈夫。引いてない引いてない。研究開発目的だもんな?」

 

「はっ、はい! そうです! その通りです! 全然あの、私的な目的とかまったくあの皆無というかその!」

 

 まぁ、それならいいか、と俺は思う。いや、キメラの素材にされるのもどうかと思わないでもないのだが。所詮髪の毛で、ケチケチしても仕方ないし。

 

 そういえば入学以来切ってないなぁ、と自分の髪を触る。睨んだ通り、少しもさい。

 

 俺が「メイ~」と呼ぶと、メイはクロスボウを撃つのを止めて、俺の下に戻ってくる。

 

「ご主人、何?」

 

「ハサミ作れるか?」

 

「ハサミ? できる。はい」

 

「お、頼めば手のひらサイズの鉄製品出してくれるの、助かるな。じゃ、早速」

 

「え、あ、え? テクト君?」

 

 俺は自分の髪を、その場でジョキジョキ切っていく。家でもこのノリで整えていたから、鏡がなくともコツが分かっている。

 

「よし、こんなもんだろ。ウィズ」

 

「あ、は、はい! じゃあえっと、ふ、袋、こちらです!」

 

 俺はサクッと刈った髪の毛をウィズに渡す。ウィズはそれを、恭しく袋に詰めた。

 

「わ、わぁ~……! て、テクト君の髪の毛、……すー……はー……」

 

「ウィズ?」

 

「いっ、いえあの、かっ、家宝にします!」

 

「いや、素材にするんだろ?」

 

「そうでした!」

 

 慌てすぎて、何かもうよく分かんなくなってるウィズである。

 

 ……この挙動で正統派黒髪美少女なんだもんなぁ……ずるいよなぁ……。

 

「テクト君?」

 

「ああいや、美人は得だよなって思って」

 

「? 何がですか?」

 

 俺はそれ以上言及せず、「よし、じゃあ明日から、お互いの発明品作りを始めるか」「はい!」と言葉を交わす。

 

 すると一部始終を見ていたメイが、ウィズに言った。

 

「ウィズ、ウィズ」

 

「は、はい。何ですかちびっこ2」

 

「メイって呼ぶ。……ウィズはご主人のことが好きなの?」

 

「ひゃわっ、はっ、あの、あのあのあの、そっ、そういうのを当事者がいる場所で聞いちゃいけないって親に教わらなかったんですか!?」

 

 顔を真っ赤にして、多分親に教わることじゃないことを詰めるウィズ。

 

 それに、メイは何かしらの確信を得たようで、俺に抱き着きながらウィズに言った。

 

「ワタシ、昨日ご主人と一緒に寝た」

 

「っ!?」

 

「おい、メイ?」

 

 俺が諫めようとするが、メイは止まらない。

 

「胸板もたくさん触った。硬くて大きかった。腹筋もバキバキでえっちだった」

 

「何言ってんだこのエロガキは」

 

「ア゜ッ」

 

「ウィズ!?」

 

 ウィズが、深刻な脳破壊攻撃をされ、人間から出てはいけない声と共にひっくり返る。

 

 それにメイは、まっ平な胸を張って勝ち誇った。

 

「ご主人、勝った。ウィズはザコ。痛いっ!」

 

「お前、何を語弊のあることを好き勝手言ってやがる」

 

「いふぁいっ、いふぁいっ、ご、ごへんひゃはいっ」

 

 ゲンコツからの頬引っ張りで、ナマイキなクソガキを分からせる。

 

 そんな風にして、俺たちの放課後は過ぎて行くのだった。

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