【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた   作:一森 一輝

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討伐演習開始

 それから俺とウィズは、お互いに作りたいものを、意見を交わしながら作り合った。

 

 例えば、俺のマシンクロスボウでは、ウィズが計測を手伝ってくれたり。

 

「ちびっこ2がボルトを作って発射して回収までに掛かる時間は、最速0.8秒ですね」

 

「つまりボルト一発は秒間1.25発になるワケだ。で、それが30発あるから」

 

「……秒間37.5発のマシンクロスボウですか。しかもリロード無し。凄まじいですね」

 

「あとは高レートで発生する反動と熱の処理だな。反動はパイルバンカーと同じノリで逆噴射すれば行けそうだけど。熱は……冷却の魔道回路が早いか?」

 

 ちなみに現代のサブマシンガンは秒間15発とかになる。サブマシンガンはすでに大幅に超えている計算だ。

 

 逆に、ウィズの相談に俺が乗ることも多い。

 

「テクト君、たまに言ってるかくれんぼ、鬼ごっこ、ガチンコっていうのはどういう戦闘思想なんですか?」

 

「ああ、アレは奇襲一発で倒せたらそれで勝ちだろ? 奇襲がバレても逃げれば仕切り直せるだろ? 逃げられなくて初めてガチンコって話」

 

「なるほど! 確かにそういう思想なら、奇襲の有用性は非常に高いですね。となると、視認性を極端に低くして、素早く一撃を入れるような動きが肝心ってところでしょうか」

 

「そうだな、あと~」

 

 五ねぇと作戦会議をした時もこんなことを言ったな、なんて懐かしい気持ちになったりもした。

 

 もちろん、開発にあたってはメイの協力が不可欠だ。だから、メイとは努めて仲良くした。

 

「ご主人、ご主人、今日はね、あのね、ぎゅってして寝たい」

 

「お、おお、いいぞ。にしても何ていうか、メイって甘えん坊だよな」

 

「甘えん坊じゃない」

 

「じゃあ普通に別々で寝てもいいんじゃないか?」

 

「ぎゅっとして寝るのは絶対する」

 

「甘えん坊がよ」

 

 そんな感じで抱いて寝たり(まったく含みのない意味で)。

 

 そんな具合で、俺たちは喧々諤々意見を交わし合い、定期的に「ご主人、ウィズ、メイを除け者にしないで」と割り込んでくるメイを構いながら、開発に邁進した。

 

 そんなある朝、シアの世話をしていた俺は、シアから言われた。

 

「そういえば今日は討伐演習ですが、テクトはどの班になりましたか? わたくしの指揮する下級クラスの班には居ないようでしたが……」

 

「あ」

 

 そういえば今日じゃん。すっかり忘れてた。

 

 

 

 

 

 ここで改めて、討伐演習について説明しておこう。

 

 討伐演習とは、軍事系に進む貴族子女にとって、大きく考査に加点がなされる重大イベントである。

 

 内容はシンプルで、高位貴族が大将を務める複数の大きな討伐隊を成し、それぞれのポジションで大規模に魔物討伐を頑張る、というだけのもの。

 

 要するに、簡易的な軍事訓練という感じだ。

 

 そのため、身内で一番討伐演習にガチなのはアイギスだろう。一年の討伐隊では最も大規模なものの大将を務めると聞いている。やっぱ大将軍の血統なのだな、と身分差を実感。

 

 次にガチなのは、五ねぇを初めとしたウチの家族だろう。騎士志望で良いところの貴族に務めるには、班をうまくまとめたり、個人で好成績を出す必要があるのだとか。

 

 そこから、身分的に大将にされて無難に回したいシアや、そもそも分野違いなウィズ。ほぼ名目参加な俺やナルシスなどの男子、という風になってくる。

 

 何でだよ。俺その辺の女子よりも好成績出すぞ。全然ガーランド家の訓練でも姉妹たちと張り合ってたぞ。俺にもガチらせろ。

 

 だが残念ながらそうはならない。で、じゃあガチ度の低い面々はどうなのか、というと、こちらは一転して遠足の様相を呈してくる。

 

 退魔訓練は学生の訓練だけあって、ヤバい魔物が出てくるような場所には行かない。しかもガチな面々がこぞって狩るので、サボり勢はほぼ魔物が出ないエリアに割り当てられる。

 

 自然、サボり勢は自然の中を決められた順路で索敵(散策)して終わり、となる。

 

 で、男の俺は割り当てで安全なところに行かされるし、どんなに駄々をこねても覆らないのが分かっているので、ウィズたちサボり勢と一緒にピクニック、となるワケだ。

 

「で、俺の班は」

 

 現地に到着し馬車から降りた俺は、張り紙を背伸びで覗き込んで、上の方で勝手に決まった班割り当てを確認する。

 

 俺の討伐隊はアイギスの方で司られているらしく、人員割り当てはアイギスの方で済ませておいた、と聞いていた。

 

 だからか、何となく恣意性を感じる内容になっている。

 

「……五人班で、ウィズにナルシス、そしてナルシスの取り巻き、と……」

 

 しかもナルシスの取り巻きも、俺がガーランドブートキャンプに処した面々から選ばれている。何というか、アイギスも過保護というか。俺としてはありがたいけど。

 

「テクト君っ」

 

 とか思っていたら、ウィズが俺に話しかけてくる。

 

「一緒の班ですねっ! テクト君は私が守りますから、安心してくださいねっ」

 

「いや、逆だよ逆。俺がウィズを守るから」

 

「ひゅっ、あ、あの、いきなりそういうこと言われると、その、て、照れるというか」

 

 俺が言い返すと、赤面してウィズは静かになった。女の子を守れる男になりたい俺が、『私が守るから!』とか言われて黙ってるワケがない。

 

 そんなやり取りをしていると、ナルシスたちも俺たちに近づいてくる。

 

「やぁ、奇遇だねガーランド君。まさか同じ班になるとは」

 

「奇遇か?」

 

「奇遇だとも。普通同じ班に男子は割り当てられないからね。大抵は男子同士ケンカして、女子が代理で動いて問題が起こるし」

 

「なるほどな」

 

 俺たちはすでに激突して格付けが終了しているから、同じにしても問題ない、という政治的な判断もあったらしい。

 

「とはいえ、いい機会だ。どこかで時間を作れるかい?」

 

「ってことは」

 

「ああ、お望みの結果が出たとも」

 

 メイについて調査が済んだ、という事らしい。俺は頷く。

 

 最近はメイも分別がつき始めて、そこまで困ったことはないのだが。とはいえ、気になる内容だし、聞けるのならば聞いておきたい。

 

 そこで、号令が響いた。

 

「『アラゴニア討伐隊! 傾聴―――!』」

 

 声の響いた高台を見る。するとそこにはアイギスが立ち、拡声器の魔道具を持っている。

 

「『これより、討伐演習を始めるわ! 持ち場について巡回、魔物討伐に務めるように!』」

 

 アイギスは注意点を簡単におさらいしていく。

 

「『ここは「怪鳥の森」よ! 出てくるモンスターは鳥系が多いから、各自弓を主体に戦うこと! 森の主はグリフォンが確認されてるから、見かけたら逃げて通達なさい!』」

 

 その様子は堂々としていて、余計な緊張のない立派なものだった。俺たちは感心だ。

 

「……やっぱりちびっこってすごい人ですよね」

 

「こうして見るとなぁ」

 

 隣のウィズと小声で言い合っていると、不意に号令をかけるアイギスと目が合った。

 

 こっそりアイギスは、俺にウィンクしてくる。そのまま元の調子に戻って、淡々と号令を続けた。何だあいつ可愛いな。ウィズは舌打ちしているが。

 

「『最後に、もし想定以上に強力な魔物と遭遇したら、配布の狼煙を上げなさい! 以上! では全部隊散会!』」

 

 ぞろ、とみんなが動き出す。アイギスは毅然とした様子で、司令部の方に戻っていった。

 

 さて、と俺はウィズやナルシスたちと向き合う。

 

「じゃ、行くか。この班のリーダーは、あ、ウィズだな」

 

「え゛、私ですか。ちびっこも面倒な采配を……」

 

 ウィズは嫌な顔をする。だが、「とはいえ、権限があるのはありがたいですかね」と呟く。

 

「では、順路を進みましょう。序盤は二手に分かれる必要があるみたいなので、私とテクト君、ナルシス君たちで別れる感じで」

 

「承知したよ、デルフィアさん。さ、君たち。適当にピクニックデートと行こうか」

 

 ナルシスは肩を竦めて取り巻きに言い、歩いていく。その別れ際で、軽く俺に目配せを。

 

 合流後に話す、ということなのだろう。急くことではない、と俺は頷いて見送る。

 

「では、私とテクト君の二人きりですねっ♡ 早速行きましょう!」

 

 ウィズが俺の腕に抱き着いてくる。俺は苦笑しつつ、「そうだな」と歩き出した。

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