【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた 作:一森 一輝
少し歩いて人気のない場所についた辺りで、指輪になっていたメイが人型に変身した。
「ウィズ、二人きりのデートはここで終わり。ここから先はご主人とワタシの二人きり」
「私をここで殺すつもりですね。受けて立ちますッ」
「殺し合いまでが早い」
対峙するなり構える二人に、俺は半眼で宥める。無論二人は冗談のつもりだったようで、こっそりニヤリと笑みを交わしている。
何だかんだこの二人仲いいよなぁ、と思いながら、俺は地図を確認する。
俺たちの巡回ルートは、巨大な森の浅い範囲らしかった。総合的な危険度は、オークの森より二段上。ただし俺たちの回る場所は魔物の目撃例がほぼない、と。
「ワンチャン、マシンクロスボウの試射ができるかなと思ったけど、無理そうだな……」
アイギスめ、要らん気を回しやがって。魔物狩りを男子にも解放しろ!
だがそんなことを思っても、現状は変わらない。俺はため息を吐いてルートを進む。木漏れ日の輝かしい歩きやすい森を、軽い足取りで進んでいく。
俺たちのルートは地元民が管理している範囲のようで、こんな時でもなければ憩いの場になるような場所らしかった。何なら岩で作った椅子なんかがたまにあるくらい。
なので完全に遠足だな、と思いながら俺は歩く。
すると、二人が同時に左右から、俺の腕を抱きしめてきた。
「うおっ、どうしたどうした」
「ちびっこ2と和解しました。これからナルシス君と合流するまで、テクト君の右腕は私のものです」
「そして左腕はワタシのもの。ご主人ぎゅ~」
「俺の腕は俺のものだが」
とはいえ、両手に花なので、俺からの不満はない。ウィズもメイもドのつく美少女だし。
……はぁ~……。
「俺がせめて男爵家とかならなぁ……」
生殺しすぎる。ウィズも何だかんだ子爵家と高めの身分だし。メイは刀だし。
俺は自分の情緒を片付けられないまま、二人に挟まれて歩く。二人は俺の腕を抱いて上機嫌だ。俺は言う。
「っていうかさ、ウィズってなんか、やたらロリと仲良くなるよな」
「えぇっ!? そ、そうですか? 全然自覚ないですけど」
「アイギスにメイが一番仲いいじゃん。どっちもウィズ、ちびっこって呼んでるけど」
「ウィズはそろそろワタシのこと『メイ』って呼ぶ」
「う、あう、えと、その、……二人が仲いいというよりは、ちゃんとしてる人には気後れしちゃうというか。シア王女様も最初は全然話せなかったですし」
「なるほどな?」
確かにウィズは基本人見知りではある。相手が小柄だと、その分安心するのだろう。
しかし、ウィズ本人は不服なご様子。
「え、でも何か嫌ですね。私の性癖がそっちみたいになってるのは嫌です」
「そうなの?」
「そうですよ! ちびっこ二人は揃ってナマイキですし! ねぇちびっこ2!」
「てい」
「痛い!」
メイがウィズの横腹を突く。ウィズが悪いな、と俺は放置する。
逆に、と俺はメイを見た。
「メイは人間の形、慣れてきたか?」
「? どういうこと?」
「え? あーっと、まぁ今の生活に慣れてきたかって、そういうこと」
刀から人間になったのなら、色々違和感だろうと思っての質問だったが、メイはそういう感じではないらしい。
俺が言い換えると意図がしっかり伝わって、「うん」とより力強く俺の腕を抱く。
「ご主人たちと一緒にいるの、楽しい。構ってくれるから、嬉しい」
「……ん、そうだな。メイが来て、俺たちも暇しないよ」
「騒がしすぎるくらいですよね。ちびっこ2はちびっこ1を見習ってもう少し大人になるべきです」
「だからメイって呼ぶ」
ジト、とメイがウィズを見る。ウィズはからかい半分、まだ名前で呼ぶのが気恥ずかしいの半分、という感じだ。ウィズも大概照れ屋だな、と思う。
「っていうか、ちびっこ1って誰」
「ああ、まだメイとは直接会わせてないんだよな。ほら、さっき高いところに立って、大声で話してた金髪ツインテの女の子、覚えてるか?」
「あの子がちびっこ1?」
「ああ。アイギスって言ってな。会ったら仲良くするんだぞ」
俺が言うと、メイはむふ、と嬉しそうに口元を綻ばせる。
「友達増えるの、嬉しい。一人は寂しいから。ご主人のお友達と、もっと知りあって仲良くなりたい」
「そうか? そしたらシアとか、五ねぇにも会わせないとな」
「むふー」
メイはさらに上機嫌で、道を歩きながら頭を左右に揺らしている。その長くて真っ白な髪が、はらはらと膝裏の辺りで揺れる。
「にしても、ちびっこ2は寂しがり屋ですよね。一人の方が気楽じゃないですか?」
心底不思議そうにウィズが言うと、メイは目を伏せる。
「……寂しいのはヤ。メイは聖剣だから頑張ったけど、もうしたくない」
「メイ……?」
俺がメイを見ると、メイは鋭い目で俺を見返してくる。
「そうだ。ワタシ、ご主人に言う事あった」
「え? 何?」
「ご主人、何か王っぽくない。メイを抜いたんだから、ちゃんと王になろうと動いて欲しい」
「は?」
いきなり何を言い出すのか、と俺は首を傾げる。
するとメイは、俺の腕から離れて前に立ち塞がり、胸元に手を当てる。
「メイは王選の聖剣。水が如く次代の王たる者を選別し、それを保証する剣。メイを引き抜いたご主人は、王を目指す義務がある」
「何か言い出した」
俺はとても怪訝な目でメイを見る。それから、ウィズと視線を交わす。
思い出すのは、メイを抜いた、鏡の中の迷宮の事。確かにそういう感じのモチーフのダンジョンで、実際にそういうのがあったとは聞いている。
しかし、メイのそれは偽物だったはずだ。その正体は、ナルシスの家が生み出した暗殺目的の罠。
であれば、メイは聖剣ではありえない。一方で、大きな特殊性を持っているのも事実。
――――持ち手が適応した相手を、まるで水のように簡単に両断する能力。
俺はメイから視線を逸らして、その奥に立つ者に問うた。
「で? どうなんだよ、ナルシス。調べたんだろ?」
みんなの視線が、メイの背後へと向かう。
ナルシスはそこで一人、険しい顔で佇んでいた。