【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた   作:一森 一輝

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俺がお前を

 俺は走りながら、「なるほど、ああいう鳥がこの森の魔物なワケね」と呟いた。

 

 走りながら背後を見れば、グリフォンや、その配下らしき鳥どもが空を舞っている。恐らくは急降下で攻撃してくるつもりだろう。

 

 それをイチイチ迎撃するのでは芸がない。そもそもグリフォンは、パイルバンカーを避けて見せた。そういう手合いに、近接攻撃は効かないだろう。

 

 つまりは、メイの出番だ。俺は言う。

 

「メイっ、クロスボウのボルト頼む!」

 

 言いながら、俺はパイルバンカーの切り替えスイッチを切って、変形させた。

 

 ―――携帯性、コスト削減をこみこみで合理的に考えた結果、俺はマシンクロスボウを、パイルバンカーの切り替えモード形式で実装していた。

 

 羽が開くようにクロスボウの弓部分が展開される。腕を振って、ボルトの弾倉を拡張、固定する。最後に装填済みの魔石で冷却魔道回路が起動する。完璧だ。

 

「え、あ、う、うん……?」

 

 どこか困惑した様子のままながら、メイは訓練した分淀みなく、ボルトをマシンクロスボウに装填した。マシンクロスボウの重さが一気に上がる。腕が一瞬がくんと落ちる。

 

「うぉっと、まだ実戦想定は慣れてないな。筋トレと軽量化は今後の課題として……と」

 

「キェエエエエエ!」「キョーキョーキョー!」「キャァアアアア!」

 

 グリフォンに先駆けて、複数の怪鳥たちが、俺たちに襲い来た。空から急降下し、まるで狩りのように俺たちに接近する。

 

 だから俺は反転し、マシンクロスボウを構えながら、教えてやるのだ。

 

「お前ら、自分が狩人だと思ってるのか? 鳥の分際でナマイキだな」

 

 狙いを定める。呼吸を落とす。そして、ボタンを押し込んだ。

 

「お前らは、狩られる側だぜ」

 

 秒間37.5発。現代のサブマシンガンを超える連射で、マシンクロスボウが矢を放つ。

 

「キェッ!?」「ギョーッ」「キャァアッ!?」

 

 その凄まじい連射に、またたく間に怪鳥たちはハチの巣になって墜落した。続いて向かってくる十数羽も、そのまま連射で撃ち落とす。次々に地面に鳥が落ちて行く。

 

「ッ!?」

 

 その様子に、グリフォンは瞠目した。さらに高く飛びあがり、俺たちから距離を取って見つめている。

 

「チッ、あいつ頭いいな。空戦エネルギーを直感で理解してやがる」

 

 空高く飛ぶ飛行機に銃撃しても意味がないように、高らかに飛ぶグリフォンに、マシンクロスボウは届かない。飛行とは、それだけで強い防具なのだ。

 

「俺もいつか空を自在に飛びてーなぁ。それこそロマンだろ」

 

 構想はあるが、まだ実現段階ではない。俺は口を曲げながら、再び走り出す。

 

「……ッ!? ご、ご主人、い、今の何。あの鳥、全部クロスボウで落とした、の?」

 

「ああ、そうだぞ。マシンクロスボウの連射は前から見せてただろ?」

 

「だってご主人、的にしか撃ってなかったもんっ。こ、こんな強い武器だったなんて」

 

 メイは瞠目して、手を伸ばしてマシンクロスボウに触れる。それから、下唇を噛む。

 

 ……また他の武器に嫉妬してんのかね。メイももっと、自信持っていいのにな。

 

 そんなことを考えながら、俺は走る。グリフォンはどこまで追ってくるか分からないが、一旦ウィズたちの下に戻りたい。

 

 すると、メイは言った。

 

「ご、ご主人、あの、あのね。わ、ワタシ、聖剣、じゃなくて」

 

「え? ああ、うん」

 

 最初から知ってたが、という目でメイを見る。だがメイは、震える声で続けた。

 

「せ、聖剣じゃない、から。ご、ご主人のそばに、もう居られない、の」

 

「はっ? 何で?」

 

 俺が目を剥くと、メイはぐしゃぐしゃの泣き顔になって、涙をしきりに拭いながら言う。

 

「ごめ、ごめんなさ、い。だ、騙し、てて。わ、ワタシも、ワタシが聖剣じゃないなんて、知らな、くて。ごめん、なさい。ごめんなさ、い……!」

 

「……メイ」

 

 メイは何ら悪くないのに、ただ騙されていただけなのに、まるで自分がすべて悪いのだという物言いで、俺に訴えかけてくる。

 

「メイ、聖剣じゃ、なかった……! 役立たずの、偽物だった、の……! 聖剣だから頑張ってこられた、のに、それも全部、嘘だった……!」

 

 虚ろな目で、メイは自分の髪をぎゅっと掴む。震える手で、呟く。

 

「ワタシ、もう、分かんない。何で、何十年も孤独に耐えてきたん、だろ。何であんな辛い思いをして、剣になったん、だろ。もう、ワタシ、分かんない。分かん、ない……」

 

 俺は、その言葉を聞いて、察する。

 

 メイは、人間だった頃の記憶がある。ずっと意識があったのだ。そしてその過程の苦痛を、孤独を、すべて『自分は聖剣なのだから』という嘘一つで耐えてきた。

 

 だから、自分が聖剣であるかどうかに固執する。それがアイデンティティで、拠り所だったから。

 

 ―――そんな、そんな惨いことが、あるか。

 

 俺は歯を食いしばる。グリフォンの位置を素早く把握して、襲撃されないように木の影に身を隠す。

 

 そして、メイを下ろし、屈んで、その肩を掴んだ。

 

「ご主、人……?」

 

 不思議そうな目で、メイは俺を見る。

 

 俺は告げる。

 

「メイ、お前は聖剣だ」

 

「え……? ちが、だってワタシ、偽物、で」

 

「違うッ! メイが偽物として作られたとかそんなの、まったく関係ない。俺にとって、お前は聖剣だッ。お前ほど強い武器は、どこにもないんだよッ!」

 

「そんなこと、ない……! ご主人のその、右腕、の……! パイルバンカーにもなるし、マシンクロスボウだって、さっきあんなに強かった。ご主人の一番は、ワタシじゃ、ない!」

 

 泣きじゃくりながら言うメイに、俺は首を横に振る。

 

「パイルバンカーは確かに強いが、メイだって負けてない! それにマシンクロスボウが強いのは、メイの力があるからなんだぞっ!」

 

「え……?」

 

 困惑するメイに、俺は力説する。

 

「マシンクロスボウ自体は、強いが大した武器じゃない。メイの回収能力があって、初めてマシンクロスボウは成立するんだ。メイが強いから、マシンクロスボウは強いんだ!」

 

 メイの高速回収が、正直一番チートだと、俺は思っている。撃ちっぱなしの通常運用なら、重いボルトを一体何百何千と持ち運べばいいか分からない。そんな武器はお断りだ。

 

「だから、メイなんだよ! メイが強い武器だから、マシンクロスボウが強いんだ! お前の力なんだよ、メイ!」

 

「で、でも、でも……!」

 

 メイは首を振り、俺の言葉を拒絶する。心を閉ざしているのだ。理屈だけでは意味がない。

 

 なら、と俺は言う。

 

「なら、俺がお前を、聖剣にする!」

 

「っ!?」

 

 俺の言葉に、メイは瞠目する。

 

「俺が英雄になれば、俺が使うメイは聖剣になる! 違うか!? 例え偽物として作られたのだとしても、俺がお前を本物にする! 誰もが認める、本物の聖剣に!」

 

「ご、ご主、人……!」

 

 メイは全身を震わせながら、俺を見つめている。俺は一つ息を吐いて、優しくその両手を取った。

 

「だから、メイ。俺のお願いを、聞いてくれるか?」

 

「な、何……?」

 

 俺は笑顔で、メイに問う。

 

「俺の聖剣に、なってくれないか?」

 

「――――ッ」

 

 ぶわ、とメイの目から、涙があふれだした。メイは震える手を伸ばして、俺に抱き着いてくる。

 

「い、いい、の……? メイ、偽物、だよ……? ご主人の聖剣に、なっていいの……?」

 

「ああ。メイほど強い剣なら、最高だ。メイよりいい剣なんてない」

 

 俺はそっとメイを抱きしめる。メイは次第に落ち着いてきて、俺を抱きしめ返しながら、「うん」と頷いた。

 

「分かった。メイ、ご主人の聖剣に、なる。だから……ご主人がワタシのこと、聖剣にして」

 

 俺の腕の中で、メイが姿を変える。使い慣れた刀の形に。俺はメイを―――明鏡止水を掴んで、立ち上がる。

 

「ああ、もちろんだ。俺がお前を、聖剣にする」

 

「グルルルォオオオオオ!」

 

 空で獅子の咆哮が上がる。グリフォンが俺に、隠れていないで姿を現せと言っているのか。

 

 ちょうどそこで、敵とは別に、近づいてくる気配に気付く。

 

「てっ、テクト、君……! や、やっと、見つけ、ぜぇ、まし、ぜぇっ、ぜぇっ!」

 

「ウィズ! 追いかけてきてくれたのか」

 

「そっ、そりゃあそう、ゲホッ、ですよ! それで、メイさんは無事発見できました、かっ?」

 

 俺は刀をかざし、肩を竦める。『やっとウィズ、ワタシの名前呼んだ』と脳に直接言葉が響く。ウィズは赤面して「うっ、それはその、何かの間違いというか、あの」と俯く。

 

 俺は苦笑しつつ、みんなに言った。

 

「全員の無事を祝いたいところだが、そうも言ってられないらしい。グリフォンが俺たちを狙ってる。あいつを片付けなきゃならん」

 

 だから、と俺は笑った。

 

「あのクソ鳥で、聖剣の試し切りといこう。みんな、準備はできてるか?」

 

『任せて、ご主人』「私は万全ですよ、テクト君!」

 

 二人が俺に頷いた。俺も頷き返して、「じゃあ作戦を伝える」と言葉を紡ぐ。

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