【書籍化】男女比1:30の貞操逆転世界で身を挺して女の子たちを守ったら愛が重くなりすぎた   作:一森 一輝

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試練への道

 パンテラはこう語った。

 

「そこの嬢ちゃん、聖女候補でも筆頭って言われるくらいなんだろう? なら、その力を伸ばすことだね。具体的には、試練とやらに挑むことだ」

 

 パンテラの言葉に、セラフィは跳ねるように反応した。

 

「……ロザばぁも、同じようなこと言ってた。何で、そんなこと知ってるの……?」

 

「あたしは顔が広いんだ。聖教会にだってツテがある」

 

「パンテラお前、何で盗賊団の頭領なんかやってたんだ?」

 

 俺の問いかけに、パンテラは悪戯っぽく舌を出してとぼけた。

 

 深夜。外は雨がザアザアと降りしきり、暖炉ではパチパチと炭が弾けている。

 

 だからか、怪しい雰囲気が、この場に満ちていた。セラフィの扇情的な薄着か、あるいはパンテラの妖艶な表情からか。

 

「でもさ、セラフィがその試練を突破したとして、冤罪そのものは解決するのか? そこが繋がらないんだが」

 

 俺が質問すると、自信満々にパンテラは肯定する。

 

「するさ。聖魔法ってのは完成された魔法だよ? より強くなった聖魔法を発動すれば、万事解決する。少なくとも冤罪程度ならね」

 

「……どういう仕組みで」

 

「そりゃあ、やってみてのお楽しみさ。ネタバレしちゃあ面白くないだろう?」

 

 パンテラは不敵に笑っている。だが、貸し一と言った以上、俺たちの悪いようにはしないはずだ。騙すにしても、俺たちの破滅が目的なら、手を貸さないだけでいいのだし。

 

「でも、試練って言ったって……校舎からじゃないと、試練の祠にはたどり着けない、ので」

 

 沈鬱に俯いたセラフィが、パンテラに反論する。

 

 するとパンテラは、「チッチッチッ」と指を振った。

 

「転送魔法陣の一つが、王立学園の内部にあるってだけの話じゃないか。なら、別の魔法陣に向かえばいい。違うかい?」

 

「え……っ?」

 

 セラフィが顔を上げる。パンテラが肩を竦めて、説明する。

 

「第一、聖女候補は他の場所にも散らばってる。もしかしてそいつら全員、別の試練に挑んでるとでも思ったのかい? 別の場所からアクセスしてるに決まってるじゃないか」

 

「……確かに」

 

 セラフィは頷く。なるほど、それであの転送魔法陣だったか。と俺も納得だ。

 

「次の試練……不惑の試練だったね。詳細は試練と相対してのお楽しみだが、まずアクセスできる場所に向かう事から始める必要がある。と、いうことで~?」

 

 パンテラは、胸元から地図を取り出した。開くと、この街の聖教会の場所と、その地下への道案内が記されている。

 

「これが、ここから最も近い不惑の試練への道だ。どうだい? 起死回生の一手だろう?」

 

 渡す相手は、セラフィではなく、俺。パンテラは、俺に笑いかけてくる。

 

「貸し一だ。よく覚えておくんだね」

 

「……怖い念押しだな。心配しなくても、そう簡単には忘れられなさそうだ」

 

 受け取る。パンテラは満足そうに笑って「義姉さんによろしく」と手を上げて去った。

 

「……義姉さん? 五ねぇか?」

 

 妙に五ねぇを買っているパンテラである。まぁいいか、と俺は立ち上がり、セラフィに手を差し伸べる。

 

「ってワケだ。とりあえず行ってみようぜ」

 

「……ごめんなさい、テクトさん。ぼくのために、あんな人に貸しを作らせてしまって……」

 

「気にすんなって、このくらいさ。もしパンテラへの貸しで困ったら、その時はセラフィが力を貸してくれ」

 

「―――うんッ。絶対に、ぼくが何とかする、ので……!」

 

 セラフィが俺の手を取る。それから、二人宿を出て、地図の場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 外套を羽織り、バイクを走らせて数分。俺たちはその街の聖教会に辿り着いていた。

 

 ノックをし、出迎えてくれたシスターに冤罪周りを除いた事情を簡単に伝えると、「聖女候補様でしたか! どうぞどうぞ、ほとんど使われない魔法陣ですが」と迎え入れてくれた。

 

 俺たちは二人で教会の地下へと階段を下り、たった一つあった試練の魔法陣を前にする。

 

「……思い出した。昔の聖女の試練は、魔法陣をめぐって巡礼する形式だったって。多分この魔法陣は、その名残だと思う、ので」

 

「ああ。じゃあ、早速やろう」

 

 セラフィと共に、俺は魔法陣の上に立つ。セラフィが「起動」と呟くと、魔法陣が輝く。

 

 俺は、深呼吸する。転送先は、不惑の試練。迷わず進め、というような試練であることは知っているが、どんな試練になるというのか。

 

 達成者は少ないと聞く。今までの試練も中々な難易度だったのに、それらをさらに超えるような試練。まさかこんな状況で、突貫で挑まなければならないとは。

 

 そんな、益体もないことを考えていると、気付けば魔法陣の輝きが小さくなり、消えた。

 

「……は?」

 

 俺は周囲を見回す。だが、変化はない。俺たちの周りにあるのは教会地下の石壁だ。別の場所に転送されたということはない、はず。

 

「せ、セラフィ、俺たち試練に転送されてない、よな? どういうことだ?」

 

 まさか、ここの魔法陣は古いもので不発だった? そう疑う。

 

 だが、セラフィは首を横に振った。

 

「テクト、さん。試練は、確実に始まってしまった、ので。それは、間違いない、はず」

 

「え? どういうことだ? 試練って、何―――」

 

 俺は言いながらセラフィを見る。

 

 そこで、気付いた。セラフィの頭上。そこに、天使の輪を思わせる魔法陣が、浮かんでいることに。

 

「不惑の試練は、目的地を目指し、進み続けること、で。迷いがあるといつまでも辿り着けないけど、迷いがなくなればなくなるほど、道が分かるようになって。それで、目的地は」

 

 セラフィは、顔を真っ青にして、こう言った。

 

「―――挑戦者の最も訪れたくない場所。今のぼくの場合は、学生街の聖教会、なので」

 

 俺は、息を飲む。そして、理解する。

 

 最も訪れたくない場所。そこに進み続ける。迷いなくなるまでたどり着けない。迷いがなくなった瞬間に、最も訪れたくない場所に辿り着いてしまう。

 

「……そりゃあ、達成者が少ないはずだ」

 

 俺たちが学生街に戻れば、追手は流石に俺たちを見つけるだろう。それも、俺たちはセラフィの迷いがなくなるまで、聖教会の周囲をウロチョロと駆けまわる必要があるのだ。

 

 追われるだろう。しかも、長時間逃げ惑う必要がある。追手は時間が経てば経つほどに増えるはずだ。難易度は、倍では済むまい。

 

「もう、やだぁぁぁああ……! 何でぼくばっかりぃぃぃいいい……!」

 

 セラフィは、頭を抱えてうずくまる。

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