TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う   作:蓋然性生存戦略

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気が向いたので。
あと、誤字報告本当に助かります。
いやほんとものすごい勢いでしてくださる方がいて助かりましたね。
ありがとうございます。

感想もよく見てます。
感想貰えると嬉しくて暗黒盆踊り躍ってます。


幕間:変化

エソラと出会ってから一年ほど経った、ある日のこと。

エソラと、喧嘩のようなものをした。

 

「おねーちゃんのばか!!もう知らない!!」

「エソラっ!」

 

バタンッ!と音を立て、エソラはアジトから出て行った。

止める間もなく、普段からは想像もできない速度で消えて行った。

私は、何かを間違えたらしい。

追いかけなければと思ったが……多分、今のエソラは正常ではない。

追いかけても、ちゃんと話ができるかは分からない。

 

ことの発端は、ある日の配信だ。

 

『そういえば配信部屋ってクソガキの家なんだよね?』

 

「そうだな」

 

『クソガキとは二人で住んでるわけだよね?』

 

「そうだな」

 

『純粋な疑問なんだけど、書類上の扱いどうなってるの?』

 

「……確認してないな。《テリトリア》に確認するか」

 

『おい』

『ヒイラギさん?』

『まさかの違法?』

『クソガキに聞かないのは妥当というべきかなんというべきか』

 

「《テリトリア》が何も言ってこないから大丈夫だとは思うんだが」

 

『まあテリトリアさんが何も言わんのなら』

『テリトリアさんが注意してくれることが大前提の会話である』

『合法なら合法でクソガキって何者なのってハナシなんだけど』

 

ということがあった。

そして、念のため《テリトリア》に確認したところ……。

 

「形式上、お前たちはホームレスということになる」

「そうなのか?」

「あのアジトを書類上でだけでも住居と認めるわけにはいかんからな……一応言っておくが、ネットワーク環境や受信環境に関しても、今は法に触れてないだけで露見すれば一発で法整備されてアウトだ」

「……流石にまずいか」

「露見した時のリスクを考えれば、良くはないだろうな」

「……一応、ちゃんとした住居に引っ越すか……」

 

というやり取りがあった。

それから、エソラと相談しようと思って話を切り出したところ。

 

「そういえばエソラ。引っ越そうと思うんだが」

 

――ガシャン!!

 

エソラは、手に持っていた皿を落として硬直した。

 

「ひっこす……?ここから……?」

 

信じられないという表情で、声も震えていた。

 

「か、改善できるところはするから、そんなこと言わないでよ、ね?」

 

まるで、これから捨てられてしまう子供のような様子だった。

私は自分が何か失敗したことを悟った。

私達の関係は良好だが、それでも付き合いはそこまで長くないことを忘れてはならない。

たった一年ほどなのだ。

お互い知らないことだって多い。

故に恐らく、私は何か地雷を踏んだ。

 

「言い方が悪かった。ここに不満があるわけじゃない。しかし、世間に露見したら問題が発生する可能性が高いことは分かるな?」

「でも、でも……」

「ただ、生活空間だけでも移した方が良いと思ったんだ」

「うぅ……ぉ、お……」

「?」

 

「おねーちゃんのばか!!もう知らない!!」

 

そして、冒頭に戻る。

 

衝動的に出て行ったとは言え、いつものアイテムは持って行っているようだ。

恐らく、危険はないだろう。

ならば、お互い何が良くなかったか。

それを確かめる時間とした方が良いだろう。

ひとまず、コーヒーを淹れよう。

何がいけなかったか。

冷静に、分からないなりに考えるべきだ。

 

 

 


 

 

 

《ブレイディア》め、何か間違えたな。

なぜ私が小娘の子守をしなければならないんだ。

 

「ぇぐ……うぅ、ぅああぁああ……どうしてあんなこと言うんだよぅ……おねーちゃんのばかぁ……!!」

 

《ガーディアンズ》本部で仕事をしていたところ、あのバカ二人の監視の人員から、連絡が来た。

なんでも、大粒の涙を流しながら《ガーディアンズ》本部まで歩いていると。

いや、バカなのか?監視の人員がいるということは、そこはトートだ。

そこから本部のあるニューオートまでということだぞ?

歩きで辿り着ける距離じゃない。

恐らく正常な思考を保てていないため、急いで迎えに行った。

案の定、大幅に幼児退行している。

以前から思っていたが、精神的に弱ったりする何かがあると、肉体年齢に精神が引っ張られる傾向にある。

いつだったか《ブレイディア》から話を聞いたため、異能で生み出された歪な存在であるということは知っていた。

厳密には幻楼院リンカではなく、その代替品として生まれた存在だと。

故に、たまにどう接して良いかわからなくなる時があると、《ブレイディア》から愚痴を聞かされたこともあるが……。

 

「だが、貴様なら必要性は分かっているだろう?」

「わかってるけどぉ……っ!!ボクだってわかってるけどぉ!!」

「面倒くさい奴だな……そこで好きなだけ泣いていろ。仕事の邪魔はするなよ」

 

理解していても、感情を抑えきれない、といったところか。

落ち着けば、理性が感情を上回るだろう。

難儀なものだ。

 

「がんばって、自給自足できるようにしてきたんだ……」

「それが仇になっているわけだが。水道ガス電気そのほか全てが、未知のエネルギー及び技術によって賄われているあの拠点は、軽い厄ネタの塊だからな」

「九年間、ボクが産まれてからの九年、ずっと過ごしてきた場所なんだ……」

「それに関しては……私は何とも言えん。だからこそ、見逃しているわけだが」

「うぅ……ぇぐ……わかってるよ、ボクの我儘だってことくらい……」

「……《ブレイディア》から言われたのが堪えたか?」

「うん……」

 

あまり良くない傾向だな……。

エソラの《ブレイディア》への依存度が高い。

それは逆方向でも言えることだが、エソラほどではない。

 

「貴様が《ブレイディア》を好いているのは知っているがな。度が過ぎれば離れていくぞ」

「うっ……」

 

自覚はあるようだな。

それならまだマシか。

 

「やだよぉ……もうひとりはやだよぉ……」

 

……どうにも拗らせているな。

二人きりの暮らしをさせたのがマズかったか。

なにか対策を講じるべきか……。

 

「あ”ぁ”あ”ぁ”あ”あ”ぁ”ぁ”ぁ……!!」

 

いや、何故私がこの二人の保護者の真似事をしなければならないんだ?

少なくとも《ブレイディア》は大人だろう……!お前が保護者だろうが!!

 

「あの、先輩……ほっといて良いんです?」

「ほっとけ。そのうち立ち直る」

「えぇ……」

「うぅ……すぅ……」

 

寝たな。

これだけ見れば幼女なんだがな……。

 

 

 


 

 

 

目を覚ますと、そこはいつもの自室ではなかった。

 

「……そっか。《ガーディアンズ》本部で寝ちゃったんだっけ……」

 

ニューオートにある本部の、《テリトリア》の執務室。

そこのソファーで、ボクは寝かされていた。

 

「はぁ……ダメだ、ボク。流石に取り乱し過ぎだろ……」

 

いくらなんでも取り乱し過ぎだと思った。

自分のことが、最近分からない。

以前なら、冷静に話し合えたはずなのに。

 

分かっている。

説明されれば理解できる。

ボク達のアジトが世に露見した時、問題になることくらい。

 

「わかる、のにな……」

 

無くすわけじゃない。

ただ、生活空間を移すだけだ。

それだけなのに。

 

「なんでだろうなぁ……」

 

涙が止まらない。

アジトに足を運ばないことが増えると考えると、何故だかとても悲しい。

 

「そこまで泣くとは思っていなかった。すまない」

「……おねぇ、ちゃん」

 

どれくらい経ったろうか。

急に体を持ち上げられて、そのまま抱きしめられた。

 

「軽率だったな。キミにとってはかけがえのない居場所のはずだ。それを軽々に引っ越すなど言うべきではなかった」

 

あたたかい。

やさしいにおい。

 

「おねーちゃん……」

「帰ろう。私たちの家は、変わらずあの場所なのだから」

「……ごめんなさい……自分で思ってたより、ダメだった」

「やり方は考えよう。キミも納得できる、現実的なやり方を」

「……うん」

 

ボクはそのまま、また眠った。

なんとなく、感じている、自分の変化を自覚しながら。

前世の記憶が、記録になりつつあることを、感じながら。

 

 

 

その後。

折衷案として入り口を新居の部屋だけに置くことで話は付いた。

引っ越し作業は速やかに終わり、ボク達は一見法に咎められない環境を手に入れたのだった。




・エソラの変化
前世の記憶が記録になりつつある。
本編で乗り越えた色々の影響で、前世へのしがらみが消えたため。
なので幼女化が著しい。
一見すると年齢不相応に理知的だが、精神攻撃に弱くなっている。

・ヒイラギの変化
保護者が板についてきた、肝っ玉お姉ちゃんの貫禄が付いている。
が、エソラの変化に少し戸惑っている。
何となく察してはいるので、妹扱いが加速した。
だがエソラの恋心は燃え盛っている。
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