TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う 作:蓋然性生存戦略
キンコンカンコンと鐘と称したサウンドが鳴り響く。
世界が異なってもこの音は変わらない。
前世ではダルさの象徴だったけれど、今となっては安心感すら覚える。
「久しぶりだなあ、学校」
久しぶり、そして初めまして。
今日から中学一年生、エソラです。
……フッ。
ちょっとドタバタしたけど何とかなったぜ……。
時は少し遡る。
「ねー《テリトリア》」
「なんだクソガキ」
「中学からは学校通おうと思うんだけど、そういえばボクの戸籍関係どうなってたっけって」
「あ」
「え」
「……すまん、辻褄は合わせていたが戸籍の用意は忘れていた」
「おい!!!!」
「すぐに用意する」
というわけだ。
全く、《テリトリア》には困っちゃうよね。
ギアスがまだ有効だということを忘れないで貰いたいね(ゲス顔)。
まあ、これでボクも晴れて無戸籍ではなくなり、正しくこの国で人権を得たというわけだ。
当然義務も発生するけど……それはまあさておき。
エソラちゃんはァ~~!!今日も可愛い~~!!
制服が可愛い学校を選んで正解だったな。
やはりボクというかリンカは素体が良いのだ。
中性的な可愛い系の顔。
勿論、ボクが追い求めるKAWAIIを演じれば誰もが振り向く美少女となるだろう。
間違いない(確信)。
とはいえ、ボクはおねーちゃん一筋なのでそんなことはしない。
おねーちゃん以外に尻尾を振るような尻軽ではないのだッ!!
なのでいつも通りのボクを演じる。
それで良い。
というわけでね、入学式を無事にスキップスキップ。
保護者として来てくれたおねーちゃんとニコニコしながらスキップさ。
新入生代表の話も貰ってたけど華麗に回避。
誰がするかそんな面倒くさいこと。
まあ?主席合格だったけど?猛勉強したからオール100点だったけど?
代表なんてやるわけないよね~~。
次席の子にパスパス、ボクはやらないよーん。
さて、クラスはA組。
好きだよ、Aって言う響き。
何故か満たされるものがある。
学校の地図は頭に入れた、向かうと……あ、そう言えばクラス写真撮影なんてものがあったね。
……何故だろうね、さっきまでは安心感を覚えていたのに、既に面倒くさいという気持ちが湧いて出てくる。
まあ、学校なんてそんなもんか。
だがしかし、今のボクはそのダルさを超越する……超エリートTS戦士、スーパーエソラ様だから……!!
髪が金色になったりはしないんですけどね。
お、君たちがA組の同胞たち?
なんだなんだ、ボク達を見て固まってるね。
普通に考えておねーちゃんがここにいるのはビックリするか。
「じゃ、ちょっと行ってくるね」
「ああ。私は他の保護者達に挨拶でもしてくるとしよう」
「大丈夫?ビビられない?」
「……わからん」
おねーちゃん表情筋うっすいからな……。
大丈夫かな……。
信じよう。
ボクもコミュニケーションを取ろう。
「やぁ同級生諸君。よろしくね~」
「え、本物?」
「本物以外に何があるのさ。ドッペルゲンガーか?スワンプマンか?」
「ごめんわかんない……」
このネタを振るにはまだ早かったか……。
中二病が来たらいずれ分かるかもね……。
さて、ボクたちのクラスを率いる担任は~~……実は知っている人である。
監視の人なのだ。
普段影が薄いというかほぼ出てこないのだが、一応ボクとおねーちゃんは監視対象である。
なので監視の人がいる。
それが監視の人ことスガヤさん、もといスガヤ先生である。
《テリトリア》に便利に使われてる諜報部隊の悲しき人。
こんなところまで出張ですか……ご愁傷様です。
多分どっかのクソガキのせいだと思うけど。
今度お昼ご飯奢るね……。
「失礼なことを思ってない?現さんは小さいから前列中央でお願いね」
「はーい」
とりあえず指定された場所に位置取る。
指示に従って続々集まる同級生たち。
うーん、こうしてみるとボクはまだまだ小さい。
ようやく140㎝に乗ったところなのだ。
何故かおねーちゃんも背が伸びて180㎝になったし。
なんでだよ、身長差40㎝が変わってないのはおかしいだろ。
背伸びしたって届かないぞ、何とは言わないが。
グヌヌ。
「1+1は~~?」
「2~~~!!」
懐かしい掛け声と共に写真撮影を終え、学校説明である。
まあ面倒くさいので描写はカットカット。
おねーちゃんと帰ることの方が重要である。
おねーちゃんの車の助手席で優雅にドライブです。
「あー、懐かしかった」
「キミにとっては……10年ほどか?」
「15年くらい?もう記憶というより記録みたいなもんだけど」
「馴染めそうか?」
「んー、多分無理じゃないかなあ~~。流石にボクが歪すぎる」
「そうか……」
静かに車に揺られながら、結論を出す。
たぶん、普通の学校生活はできないのだ。
何故か開放されている屋上で、ひとり空を眺めながらお弁当を食べる系の女子になるだろう。
余計な記憶が邪魔をする。
大人と会話する分には何とかなるけれど、この年頃の子供とどう話せばいいのか、もうわからない。
ボクの趣味であるゲームをネタにしようにも、まあできないだろう。
ゲームが趣味ということは話せる相手が大体男子というわけで……女子からの印象はあまり良くない。
どこかで衝突が起きてもおかしくはない。
適度な距離感を保って、誰ともあまり関わらないのが無難だろう。
「ま、分かってはいたんだよ。ボクがおねーちゃんが好きって公言していたって、勘違いするバカは出て来るし。表社会で生きていくために必要だから割り切るけどさ」
人間は基本的に愚かである。
これは純然たる事実であり、変えようのない現実だ。
感情なんて無駄なもんがある限り、人間は愚かである。
それはボクやおねーちゃんも例外ではない。
事実として、愚かな選択をしたこともあった。
故に、ボクは基本的に性悪説を支持する側だ。
性善説など無いに等しい。
そう思っているからこそ、そういった面ではボクは割り切れる。
「キミは……今でもヴィランだった方が良かったか?」
ただ、そう語ったボクの顔に何を見たのか。
おねーちゃんはそんなことを聞いてきた。
まさか、と咄嗟に返しそうになったが、ちゃんと思案してみる。
思ったよりもまあ、比較しがたい。
ただ、どちらにも言えることは一つ。
「さーね。どっちを選んだとしても楽しかったとは思うよ。比較はできないかな」
どっちも楽しかっただろうということだ。
いずれ終わる逃避行だったとしても。
最後には笑えると、そう思える。
「そうか。実は近頃悩んでいてな。キミの道を狭めてしまってはいないだろうかと」
「え、今更じゃない?」
「なに?」
ただ、おねーちゃんは最近悩んでいるらしい。
ボクの道ィ?とっくの昔におねーちゃん一筋ですけどぉ?
「ボクの脳を焼いておいて今更手放そうなんて許さないよ?」
「……まだ私を恋愛対象として見ているのか?」
「当たり前じゃん。責任取ってよね」
「全く。年増を捕まえて何が良いのやら」
「……いつかグッチャグチャのドロッドロにしてやる……(小声)」
「何か言ったか?」
「なんでもないよ。おねーちゃんが好きだってだけ」
「それにしては今寒気を感じたが」
「キノセイダヨ」
この、この……!!
ムキィー!!
ふぅ……良いのだ、まだ慌てるような時間じゃない。
そもそも堕としたとしてもボクが結婚可能な年齢ではない。
焦るのはそれからでも良い……。
……負けフラグ立ってないか?
は?焦れよボケが。
「いずれにせよ、キミにとって実りのある三年になることを祈っているが」
「それはボクも同感。とはいえ部活は帰宅部確定だけど。時間がないよ時間が」
「……まあ、一応私たちの今の収入源だからな、配信と動画編集は。事務や点検などは未だキミに任せきりだ……」
部活は帰宅部確定。
そんな事に関わっている暇はないのだ。
「適材適所って奴。おねーちゃんにもいずれ覚えてもらうけど」
「そのつもりだ。尤も、学校に通い始めたら時間がないな?」
「どうにかして捻出するよ」
ボクの今の目標は、おねーちゃんを堕とす。
それだけなのだ……。
なお、同級生の方から群がって来た。
クラスの大半がリスナーだった。
マジ?流石はおねーちゃんだ……そう言えば登録者が200万超えたのも記憶に新しいな。
記念配信でも企画するか……。
そう言えば身バレのことなんだけど。
無駄なので対策してません。
中坊の口がそんな堅いわけないだろ。
というか対策前にボクの所属は入学する前にバレてる。
どこから漏れやがったマジで。
《テリトリア》には伝えたけど、あのストーカー女が情報を漏らすわけないし。
制服可愛いからここにしたけど、お掃除の余地がありそうでやーね。
まあ、そのためにスガヤ先生が配属されたんだろうけど。
そのうち誰かいなくなるでしょ。
「そういえばエソラ。転校は考えていないのか?」
「スガヤさんが派遣されてるから大丈夫でしょ。《テリトリア》の肝煎りの人材だよ?すぐに排除されるよ」
「そうか。警戒は怠るなよ」
「分かってるよ」
防犯グッズは常に身に着けている。
市販のと、ボク特製のモノ、どちらもだ。
おねーちゃんを襲おうなんて言う馬鹿はいないだろうが、ボクを攫おうというバカはいるからね。
まあ、推定頭脳発達系異能持ちで美少女と来ればまあ、バカが現れるには十分すぎる。
異能に関しては違うんですけどね。
某可哀想なロードの至上礼装を独自解釈して再現したものを用意してあります、かかって来いよ。
「ところでだが、さっそく出番のようだぞ」
「だよねー、そんな気はした」
「先ほどから追跡して来ている車がいる。まだ未遂といったところだが、流石に家を特定されるのは避けたい」
「学区的に割と絞られてるのは一旦置いといて……〆る?撒く?」
「ナンバーを控えて通報で良いだろう。一応、《テリトリア》にも連絡を入れておいてくれ」
「りょーかい」
まさか入学初日に出番とはね。
とほほ。
「窓開けて良い?」
「《テリトリア》とスピーカーでつないでくれ。連携して捕える。仕掛けるのはその時だ」
「りょーかい」
ま、こんな日常も嫌いじゃないよ。
『こちら《テリトリア》。今日は入学式じゃなかったのか、クソガキ』
「私だ。どうにもつけられている。応援を求む。一応私たちは今一般人だからな」
『そこで私に直通電話を掛ける辺りがお前らしいよ。今どこだ』
「ニュートート101大通りだ。これから時間をかけて642ブロックまで誘導する。途中で諦めるようならナンバープレートを記録しておいたからそれを提出しておく」
『了解、すぐに動ける人員を手配しよう』
「助かる。このまま繋いでおくが構わないな?」
『問題ない。傍聴の心配もないだろう、その端末は』
「まあな」
どうしたってこんな世界に足を突っ込んじゃう。
それがボクたちだから。
「久しぶりの捕り物だ、気合入れていくぞ」
「おっけー、張り切って髄液動かしちゃうゾ★」
「その名前、何とかならないか?」
「元ネタへのリスペクトなのでダメです」
「そうか……」
学校生活なんて、仮初くらいで良いのだろう。
たぶん。
・中学生エソラ
何故か解放されている屋上の特等席に陣取って一人でお弁当を食べるミステリアス美少女になろうとしたが、そもそも配信でクソガキムーブを見せているので土台無理なことに途中から気付いたエソラ(戸籍上は)13歳。
学校バレは覚悟の上、色々と馬鹿が湧くのも覚悟の上。
それでも表社会で生きるために義務教育を終えると決意した超エリートTSロリ(元ヴィラン)。
金髪にはならないが防犯グッズが増えたので戦闘力が上がっている。
某第四次戦争のランサーのマスターの礼装に着想を経た例外認定武装を呼び出した。
なんてものを呼び出すんだお前。
並大抵の犯罪者なら返り討ちに出来る戦力を得てしまった……。
更に異能考察が加速して明後日の方向に議論が伸びるのは当然の結末である。
まさかここまで手のひらの上……?
クラスではなんだかんだと人気者。
文武両道、眉目秀麗な美少女なうえ、化粧からゲーム、運動までばっちりなので話題に事欠かない。
クラスの暗黙の了解として、コイバナはエソラには振らないという鉄則がある。
それはそれとして、修学旅行などの宿泊行事は絶対に行かないとギャン泣きしながら毎回放り出されることが確定している。