TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う 作:蓋然性生存戦略
誤字報告が本当にありがたい今日この頃。
読者様に誤字報告してもらえるという甘えた考えは捨てろ(豹変)。
それはそれとして、階差宇宙2歩目でルパート揃うことあるんですね。
初手ルパからのパイナップルパンで残りのルパート2枚引きは椅子から転げ落ちました。
その後立ち上がってガッツポーズですよ(某外人ニキ3人のポーズ)。
無事最後に狂気トラペゾ踏んだので最強データ更新です。
方程式40個もある……気持ちいい……。
かちゃ、と食器の音だけが響く。
いやに静かで、冷たい食卓。
言葉はない。
一人で暮らしていたころの様に、寂しく、虚しい。
料理だけが、ただ暖かい。
いつもならば美味しい食事も、今は少しだけ味気なく感じた。
「ごちそうさま。いつも通り美味しかったよ」
「お粗末様。それじゃ、片付けるから……」
「後で良い。話をしようと言ったはずだ」
今ならよく見える。
どうにも逃げ出そうとしている節が見える。
怒り、怯え。
憎悪、恐怖。
二種類の感情がない交ぜになったような、そんな印象を受けた。
「……どうしてもしなきゃダメ?」
「ダメだ。私はこれを致命的な問題だと捉えている。キミもそれは頭では分かっているはずだ」
「……」
「話してはくれないか?」
「っ……」
エソラは何も言わず、部屋へと逃げた。
重症だな、これは。
感情と理性が拮抗し、やや感情が勝っている。
その状態が一番よくない。
下手に理性が働くものだから、感情も事態も拗れやすいのだ。
ゆっくりと食器を片付けてから、私は部屋に入る。
エソラは、ベッドの上で丸まっていた。
「……」
「エソラ。最悪、話してくれなくてもいい。ただ、感情を偽るのはやめてほしい。私のためじゃない、キミにとって良くないからだ」
「……いやだ、こんなボクは見せたくない」
「見栄っ張りめ。私はキミがダメ人間であることは重々承知だというに……」
年々、精神が肉体相応になっていることは分かっていた。
それが肉体との整合性をとろうとする何かしらの働きなのか。
はたまた別の要因なのか。
エソラは事例として唯一無二であるため、判断がつかない。
ただ、一つだけ言えることがあるとすれば、エソラは大きな負の感情の吐き出し方がとてつもなく下手くそだということだ。
エソラは大きな負の感情を抱いた時、必ず暴走する。
それがどういう形であれ、エソラは抱いてしまった巨大な負の感情を制御しきれない。
今までは、そう大したことが起きたわけでもなかった。
だが、今回は違う。
場合によっては……私たちは離れ離れになりかねない。
「私が不甲斐ないことは承知している。キミのポリシーを踏み躙るような真似もした。頼りないと思われても仕方ないとは思っている」
「ちがうよ……!それは違う……!違うんだよ……」
「そうか。だがな、エソラ。私は今、キミの言葉を鵜呑みにはできない。何故かわかるな?」
「……うん」
「キミが偽り続けるというのであれば、私たちは離れ離れにならざるを得ないかもしれない。それは私も嫌だ」
「……」
ダメか。
言葉だけで済めば、どれほど良いものか。
認識し始めれば、エソラが抱いている怒りがどれほどのものかわかる。
気が狂うほどの激情が、エソラを壊して、暴走させている。
理性すらもはや頼りにはならない。
この怒りが人間に向いたら……もう、私も止められない。
可能性ではなく、絶対だ。
私が持つアジトの管理者権限も、優先度はエソラよりも少し低い。
これはエソラが意図していたことではなく、構造上そうならざるを得ないことだが……どうあれエソラは、いつでも私をアジトから追い出せる。
エソラがその気になれば、私を相手にする必要などないのだ。
そうなったらもう、この子は救われない。
私が愛するこの少女は、未来永劫孤独を味わうのだろう。
それだけは、そんな未来は、否定しなければならない。
「全く。キミは面倒な女だな」
「……」
私は、何も言わないエソラを持ち上げて、膝に乗せた。
後ろから、華奢な体をしっかりと抱きしめる。
「キミは理性的かと思えば感情的になるし、大きな感情を処理するのが下手だし、隠し事をしようと思えばやたらと巧妙だし、自分の置かれている状況への自覚がイマイチ足りてないし、私の知らない所で危ない橋を渡ったりもする。先ほどは嘘まで吐かれた。本当にキミは面倒だ」
「っ……」
エソラという少女に思うところは多い。
だがそれ以上に。
「だがな、それでも私はキミを愛しているんだ。キミが自ら地獄に落ちるというのなら、喜んで供をしようと思うくらいには、私はキミを愛している」
「ぇ……」
愛していると改めて伝えると、エソラは驚いていた。
なんだ、伝わっていなかったのか?
結婚までしたというのに。
今の私は、キミを一番にしか考えていないぞ?
キミとキミの住む世界を守るためならなんだってする。
それが時にキミの意思に反することだったとしても、私はキミを愛しているんだ。
「大方、私の知らない所で感情的になって、人道から外れでもしたか?そんなこと、八年前に出会った時からとうに覚悟している。
懐かしいな。
キミが《テリトリア》の頭にレーザー銃型の無力化アイテムを突き付けた日が。
あの時は本当に《テリトリア》が死んでしまったのではないかと、心臓に悪い日だった。
「キミにトレーニングルームを作ってもらうまでは、キミの機嫌を損ねることの無いよう、細心の注意を払ったりもしたか……今となってはもはや懐かしいが」
「なん、で……そんなボクだって、分かってるのに……?」
「忘れたのか?私はキミの罪を一緒に背負うと、八年前に宣言したぞ?キミが人道を外れるなんて、そんな些細なことがどうでもよくなるくらい、私はキミに夢中なんだが……キミはどうだ?」
「ぅ、あ……」
揺れている。
やはり、言葉は大事だ。
伝えなければ、伝わらない。
「だから、みられたくないんじゃんか……!!こんな汚いボクなんて……!!」
全く、見栄を張る事なんか覚えて。
私もキミも、お互いダメな部分なんぞ見せあってるというのに。
「はぁ……まあいい。キミが理解してくれないのなら、理解させるまでだ」
「……え?」
手段としては最低の部類だが……まあ、一周回って落ち着くだろう。
それに、最近のキミは頑張りすぎだ。
まだ夏季休暇も終わっていないし、ここらで一度強制的に休ませるべきだったな。
ぼーっと、天井を見つめている。
昨日まで渦巻いていた怒りが、今はすっかり消えている。
まだムカつくくらいの気持ちはあるが、どうしても無様に、惨たらしく殺してやりたいという気持ちは消え去った。
今のボクなら、そのままの顔を見せることができるだろう。
その代わり、全身動かせないほどまでにクタクタにされたけど。
全部どうでも良くなるくらい潰され続けた。
「少しは落ち着いたか?」
「うん」
「溜め込んだ時は、別の何かで発散するのも手だ。覚えておけ」
「いきなり襲われたうえ発散させられたけど」
「ご無沙汰だったしな、ちょうど良いとは思った」
ヒイラギは別の意味で溜まってたのね。
まあそうだね、お互い忙しくしてたからね。
「それで、まだ話せないか?」
「……もうなんかいいや。一緒に地獄に落ちてよ」
「望むところだ」
ヒイラギに黙ってやっていたこと。
エイリアンへの報復行動。
ただ安直に破壊するだけじゃ足りない。
根本的な解決にならない。
だから、怒りのままに、今まで呼び出そうと思うどころか、思考の片隅にすら残さないようにしていたものを、呼び出した。
緋い緋い、あの鳥を踏襲したものを。
当然、そのまま呼び出してはならない。
慎重に、慎重に、調整に調整を重ねて。
侵略して来るエイリアンだけを標的に、広まり切ったら一気に自滅させるように検証を重ねて。
理性が叫んでいても怒り狂ったボクは止まれなくて。
それを、エイリアンどもに解き放ってしまった。
止めようと思えば、いつだって止められる。
冷静になった今なら、絶対に止められる。
それでも、理性の片隅に残った感情が、未だ殺せと叫び続けている。
自分たちの生徒に手を出した糞野郎に、報復しろと訴えてくる。
自分はともかく、最愛の人の遺体を弄んだ存在を根絶やしにしろと、ボクに囁いてやまない。
そのことを告げれば、ヒイラギはボクをそっと抱き寄せた。
「その感情は間違っているが、同時に人間として正しい。キミならこの意味が分かるはずだ」
「うん……」
「次からは相談してくれ。頼りないかもしれんが、力になる」
ヒイラギの腕の中は暖かい。
この腕の中なら、どんな時でも大丈夫。
そんな気がする。
「ヒイラギ」
「なんだ」
「嘘、吐いてごめん」
「さて、どうするかな」
「ううん、許さなくていいよ……許しちゃ、だめ……」
でも、ボクのことなんか、許さなくたっていいのだ。
許しちゃいけないよ。
「ねえ、聞いてくれる?ボクの怖かったこと」
「いくらでも聞く」
「ヒイラギに置いて行かれるのが、今は一番怖い。
ボク達の死体を好き勝手されて、そんな未来があるのかもしれないと思って。
同時にヒイラギを好き勝手使われてさ。
怖くて、ムカついて、怯えて、憎んでさ。
もう自分でもわけわかんなくてさ……自分で決めたことも自分で破ってる。
こんなボクがヒイラギの隣にいていいのか分かんなくなってくるし。
ヒイラギの隣にいられなくなってくる気もしたんだ。
こんなボクじゃあ、ヴィラン呼ばわりされても仕方ないし。
ヒイラギまでそう呼ばれたら嫌だなって思って。
バレたら終わりなんて思っちゃってさ。
だったら止めればよかったのに、止まれなくて。
結局悪循環に陥って、ヒイラギの手を煩わせてさ……。
ぇぐ……ボク、いない方が良いんじゃないかって考えちゃってさ……。
ボクが、ひぐ……ヒイラギにしてあげられてるごどなんて……ない気がじて……!!」
「そんなことがあるものか」
「だっでぇ……!!」
「いくらでも泣け。全く、本当にキミは感情を出すのが下手だな。うまいこと吐き出すことを覚えた方が良いぞ」
「うぁぁあああああああああ!!」
ボクはヒイラギの胸で泣きじゃくった。
ああ、そういえば。
ボク、あんまり泣いてなかったな。
「……手段としてどうかと思うぞ、ヒイラギ」
「理解している。結果的にそうなったとはいえ、二度もやって堪るか」
「全くだ」
ヒイラギに連絡した翌日。
向こうから連絡があり、直接会って話したいと言って来た。
どうにも収穫があったらしいので聞いてみれば……お前なあ。
「しかし、エイリアン側に既に先制攻撃を仕掛けているとはな。しかも気付かれることなく、いつでも起動できるような最悪の爆弾を仕込む形で」
「結果的に
「引いた?そのレベルか?同情を誘うレベルの事をしているが?」
「知るか。いきなりやって来ては侵略行為をしてきた野蛮な種族にかける情けなんぞない。ましてや相手も似たようなモノだろう」
「それはそうだが……」
ヒイラギがエソラから聞き出した情報によれば、エソラは既にエイリアンへの攻撃を開始していた。
それも、直接的に破壊するのではなく、侵略してきたエイリアンを確実に根絶するために、根本まで届くようにした『認識情報災害』なる攻撃を仕掛けたのだとか。
ヒイラギもよく分かっていないようで、説明する口ぶりはかなり覚束ない。
だが、私なりに整理し、解釈したら、それはとてつもなく恐ろしいものであると分かった。
確実にそれらをエイリアンどもに届けられるよう、誘拐した死体を用いて実験もしたそう。
私は頭を抱えた。
こんな情報、どこにも出せない。
例え拷問されても、吐くわけにはいかなくなった。
「ヒイラギ。エソラから聞いたことは一旦忘れろ。そして思い出すな」
「……何故だ?」
「いいから忘れろ。理由も聞くな。お前はエソラの平穏だけを考えろ」
「……分かった」
生物兵器など可愛いものだ。
国を半日で制圧する怪物?
そんな生易しいものではない。
火力兵器が通じるなら最悪抵抗できる。
だがこれは違う。
抵抗手段を持っている人間ほど真っ先にやられる、最悪の毒だ。
認知によって広がる災害。
こんなもの、何を学んで生きていれば思いつくんだ、クソッタレ……!!
「エソラは、進行具合はどうだと言っていた?」
「まだまだ全然だと言っていたな。全体から考えれば一割ほどらしい」
「数か月で一割……?」
「相手の規模感がかなり大きいらしい。エソラの仕事にしてはかなり手間取っているな」
「逆だ。早過ぎる。宇宙を渡って侵略行為ができる相手に既に一割だと?」
「……毒されていたな。確かにそうだ」
「……エソラが生きている間に終わるな。我々は防衛しているだけで勝てそうだ」
まあ、その防衛が難しいという話ではあるんだが。
精神的な余裕ができたのは、前向きに考えられる点か……。
「ゾンビ化した被害者に関しても、エソラが暗躍していたおかげで余裕ができていたしな。今回の独断専行については……有耶無耶にしてもらおう。諸外国への対応も、概ね終わっている。大団円も近い」
「ラセオはどうする」
「既に人類連合軍による、無事な民間人への避難誘導は進んでいる。外交官の物理的接触も制限済みだ。ラセオを完全に封鎖しつつ、各国での警戒を強める方針になる。また、業を煮やして再び直接的な侵略も行われるかもしれん。その時は頼むぞ」
「分かった。とはいえ、今の私ならば第一次大乱のようになる前に艦隊を叩き落とせるが」
「お前は本当に私と同じ人類か?」
「最近では自分でも怪しい所だ」
まあ良い。
最悪、現役どころか全盛期を更新し続けているヒイラギがいる。
可能な限りは人類連合軍で対応することを前提とした話ではあるが。
「それで、エソラの様子はどうだ」
「今は落ち着いている。臨時講師としての仕事も、夏季休暇が終わるころには復帰できるだろう」
「全く、手のかかるガキだ。うまく教えておけよ」
「分かっているさ。伴侶としての務めだろうしな」
「ああもう、甘ったるい上に熱苦しい。さっさと帰れ、バカップルが」
「お前も区切りが付いたら休んでくれ」
「そのつもりだ。というより半分くらいお前たちのせいなんだがな???」
「……改善については、前向きに善処しよう」
「くそったれ!!」
土産の菓子折りを投げつけ、さっさと帰らせる。
ああ全く。
上への報告も捏造せにゃならん。
仕事ばっかり増やす困った元同僚だ、本当に。
しかしまあ、ヴィラン増加傾向にあった情勢も、ラセオからの資金流入があったことが原因と判明してからは楽になった。
資金源を断つことで、ヴィランは今では減少傾向にある。
余計なことと言えばそれまでだが、助からなかったかと言えば嘘になる。
その分の感謝はしてやろう。
……新婚旅行を邪魔してしまった負い目もあるしな。
今回の件で、私も政府も、エソラ個人に大きな借りが出来た。
いやまあ、今回の件の真相を握りつぶすので、私に関しては貸し借りなしに出来ないか?
要相談だな。
さて、仕事に戻ろう。
しかし、最近肩が凝って仕方がないな。
軽く準備運動でもするか……。
・エソラの取った暴挙
ヒイラギに嘘吐いた(重要)。
なんかもう色々怒りと恐怖が爆発して、色々と空回りしたのが今回のエソラ。
ヒイラギがいなければ今の自分はいないというのが事実だからね、仕方ないね。
某財団444JPのような情報災害を呼び出してエイリアンを餌にしたりなど、一歩間違えばエソラが住んでいる星すら死の星になりかねない危険物を扱ったり、今回のエソラは本当に危うい。
ちゃんと工房内部の更に危険物専用の実験室で実験を重ねてからぶっ放したのが最後の理性。
焚書プロトコルなんぞ関係ないと言わんばかりの爆弾能力を秘めたあたりが怒りのレベルを表している。
イレギュラーアイテムの常として、エソラの意思ひとつで消えるという絶対のルールは守られるため、まだマシ。
ゾンビエソラからエイリアンが手にしたかもしれないアイテム?
探知仕掛けて一つ一つ丁寧に例外認定を剥がした。
死体ももう利用できないように対応した。
二度と利用されてたまるか。
それはそれとして神経すり減らしてたし、神経をすり減らす怒りをなんか色々吹っ飛ばされた。
やっと泣けたね(実は後日談の引っ越しの時しか、今までこいつは泣いていないのである)。
・最近のヒイラギ
ゾンビ修羅ヒイラギを経験したことで進化し始めた。
未だ止まるところを知らない。
それでもまだその気になったエソラを止めることはできない。
空間を斬って超越できるようにならないと。
え?最近認識できていればどこにいても斬れるようになってきた……?
こわ……。
・エイリアンの現状
何も知らないまま情報災害埋め込まれて絶滅までのカウントダウンが始まった。
余談だが、こいつらもまた、卵が先かニワトリが先かという話である。
追記:一応、今回の話にはSCP-444JPを元ネタとして使用している描写がある旨を記載しておきます(CC BY-SA3.0に基づき)
タイトル:SCP-444-JP - █████[アクセス不許可]
著者:Locker
ソース: http://scp-jp.wikidot.com/scp-444-jp
ライセンス: CC BY-SA 3.0