TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う   作:蓋然性生存戦略

3 / 65
第三話:TS転生ヴィランロリと《テリトリア》アゲイン

《テリトリア》さんを帰してから一週間。

 

『今日未明、ニューセートシティにて……』

『昨今の犯罪件数は急激に上昇しており……』

『《ブレイディア》失踪の影響は大きいものと……』

 

「最近物騒だね~」

「そうだな。しかし、まさか私がいなくなったくらいでここまで犯罪件数が上がるとはな」

「仕方ないね。個人に依存した結果だよ」

 

ニュースなども積極的に見るようにして、最近の情勢を確認するようにしていた。

犯罪件数上がってる~。

怖いね、戸締りしとこ。

まあ、セキュリティは万全だけどね!!

あっはっは!!

 

「でもこれじゃあ、外出もままならないかあ。戦闘用アイテム、作っておくかなあ……」

「キミは何なら作れないんだ」

「この世にあるモノ全て。ボクはこの世に現存するモノは作れないんだよね」

「……逆に言えば」

「存在しないモノなら作り放題さ。一応制約はあるけどね」

「キミは本当に無法だな。存在しないはずのものを、どうやって対策しろと言うんだ」

「だからボクはこうして小悪党でいられるんだよ」

 

一応制作にも制約はあるんだぜ。

難易度と制作時間って言う制約がね……他にもあるけど。

さて、じゃあ次のアイテムを作るためにパパっと家事を済ませちゃおう。

 

「そう言えばなんだが」

 

と思っていたけど。

おねーさんはまだお話ししたいらしい。

全くもー、仕方がないな~~。

 

「なにかな、おねーさん」

「《テリトリア》に掛けた、ギアスだったか?アレは精神を読み取る異能を使えば突破されてしまうのでは?」

「抜かりはないよ。ジャミングはかけてあるし、それでもダメならボクたちと接触したという記憶を丸ごと消すようにしてある。あの日一日の記憶全部抜けるんじゃないかな」

「キミは記憶まで操作できるのか?」

「そこまでじゃないよ。記憶って奴はそんな単純なもんじゃないんだから」

 

記憶関連はねえ……。

後遺症を残さないようにやるんだったら条件付きの記憶消去が限界だからなあ~~。

法則捻じ曲げる方が簡単だったりする。

なんでだよ、おかしいだろ。

造りたかったな~~、ニューラ〇イザー。

 

「つくづく、キミが小悪党で良かったと思っている」

「おねーさんちょっと前からおかしいよ?そんなにボクが小悪党であって欲しいのか。元ヒーローなら更生させるべきなんじゃないの~~?」

「更生しろと言ったってしないだろう、キミは」

「まぁね。するわけないじゃん」

 

ボクだって望んで小悪党をやり始めたわけじゃないけど、今は楽しくてやってるからねぇ……。

別に続ける必要もないと言えばないけど、楽しくなっちゃったからねぇ、仕方ないねぇ!!

 

「とはいえ、最近の情勢は怖いからなあ、小悪党するのも難しいなぁ」

「キミならどうにかできるのでは?」

「不測の事態にはめっぽう弱いんだ、ボク。身体能力は八歳児でしかないし」

「そうなのか。であれば、出かけるときは一緒の方が良いな?」

「だねぇ……」

 

ボクは異能は最強無敵強靭だが、肝心の中身がポンコツだからな。

不測の事態には弱く、身体能力はただの八歳児で、創り出した道具ありきの性能である。

不意打ちでクスリを首筋にブスリなどされたらあっけなく敗北である。

まあ、対策装備は付けてるんですけどね!!ガハハ!!

万が一を考えて体内に埋め込みだ!!

ハーッハッハッハ!!

本当の天敵はおねーさんみたいな正面からぶち破って来る明確な格上くらいだろう。

《テリトリア》もワンチャン天敵か。

あいつの能力聞いた以降は全部道具に干渉不可属性を付けないといけなくなったから作成難易度が上がったんですけど。

だって領域内の物体全てに干渉できるんでしょ?

ボクのアイテムが例外だとは楽観できない。

というかあの後メンテナンスしたら案の定一部書き換えられてたし……。

しかも緊急避難用アジト直通ワープボタンが、だ。

これを作るのにどれだけ苦労したと思っているんだ。

トロコンゲームデータを削除された時と同じくらいの悲しみが、ボクを襲った。

おねーさんの慰めのハグが無ければ、まだ寝ているであろう《テリトリア》を殴りに行っていたところだ。

 

「そう言えば、そろそろトイレットペーパーが切れそうだったぞ」

「ホント?腐らないからかなり買い溜めてあったと思うんだけど」

「それは私が来た後の基準か?」

「あ」

 

そっかぁ、単純に利用ペースが二倍になったのかあ。

二倍で済む?

おねーさんよく食べて良く飲んでよく眠るからな。

トイレの利用率はボクよりも多いだろう。

 

「で、あ、れ、ば。補給に行かないとねえ」

「アレは持って行くか?アイテムボックス、だったか」

「持ってく~。トイレ紙は嵩張るからね」

「分かった」

 

自分の支度をして、おねーさんのオシャレの監督をして、準備オーケー。

よし、出かけるぞ~~。

 

「やっと出て来たか」

 

出た先には《テリトリア》がいた。

よし帰ろう。

その前に殴ろう。

腕を振り上げてぐるぐる。

今からお前をぶん殴る。

 

「待て待て待て」

「待つわけないじゃん。お前のせいでボクのアイテム全部作り直しなんだけど?ねえ、全部作るのにどれくらいかかったと思ってんの?アジトも全面改修しなきゃいけないからここのところ寝不足なんだけど?お前を大衆芸術作品(一生ネットの晒し者)にしてやろうか?え?」

「待てエソラ。怒りは分かるが敵意はないようだ、枷は付けたのだから話くらいは聞いてやったらどうだ?」

「やだ、一発殴る。話はそれからだ」

 

一発殴らないと気が済まない。

 

「……だそうだ」

「《ブレイディア》、その小娘に随分と甘いな?」

「あまりこの子を怒らせないでくれ」

「まあ、子供の一発くらいなら甘んじて受けるが……」

 

「フンッ!!」

 

全力の腹パン。

ヒーローだし大丈夫でしょ。

 

「ガハッ……!?」

「思ったより威力があるな……」

 

そういえばおねーさんにも言ってなかったな。

ボクはぱっと見分からないようにパワードスーツを着込んでいる。

無防備なヒーローを悶絶させるくらいなら出来るんだよ。

 

「で、用件は何?」

「かは、カヒュー……ちょ、ちょっと待ってくれ……」

「帰ろっか。トートはもうだめみたいだし」

「エソラ、流石にあんまりだと思うぞ……」

 

ボクはね、アイテムに不当に傷を付けられるのが大嫌いなんだ。

別に普通に使って傷付く分にはいいんだよ。

だって使ったんだから。

でも用途でもない方法で傷付くのは我慢ならない。

そういう意味ではこいつはボクの最大の天敵なんだ。

 

「話が、したいだけなんだ……」

「ん、じゃあこれに血判押して♪」

 

仕方がないのでギアス書類を出す。

彼女には生きていてもらわないといけないことを考えると、ギアスでギチギチに縛った方が良いよね。

一生ボクの言いなりになれ(はぁと。

 

「なんだこれは……」

「読めばわかるよ」

「……これは!!」

 

『現エソラ、及び《ブレイディア》への異能による干渉の全面的禁止。

既に仕掛けている異能も解除すること。

既に手に入れた上記両名に関する座標情報も消去。

上記二名への完全服従。

以上の代価として、先のギアスは破棄するものとし、《テリトリア》本人が血判を押すことでギアスは成立し、ギアス対象者が死した後も有効とする』

 

「飲めるかこんなもの!!」

 

知ってる。

でも飲むしかないんだよ。

 

「別にお前が生きてることはボクにとって必須条件じゃない。多少生き辛くなるだけでお前が死んでもボクはさほど困らない。この前はおねーさんが悲しむかもと思って手心を加えたけど、ぶっちゃけお前にはいなくなってもらった方が今のボクは嬉しい。どうせ今のお前にはボク達の事を伝える手段はないし、お前の能力じゃボクたちのアジトに干渉することもできない。別にお前がここで地蔵をしていようが引き籠れるだけの能力がボクにはある。世の中メチャクチャになろうがボクは知ったことじゃない。分かる?譲ってるのはボクなんだ。ならそれ相応の誠意を見せるべきじゃない?」

「だが貴様はヴィランだろう!それに完全服従しろだと!?」

「分からないかなあ~~、これが慈悲だってことがさぁ~~。今もボクのアイテムに干渉しようとしてるみたいだけどさあ~~、それなんだよねえ。お前人の作品に何手加えようとしてんの?殺すよ?」

「ッ!!」

 

ごりっとこめかみにレーザー銃。

いくらボクでもここまですれば何かされる前にぶっ放せる。

 

「エソラ」

「おねーさん、ごめんね。流石に看過できないんだよ、こいつの存在はさ」

 

殺すか飼い殺しにするかしかない。

それくらい、ボクにとってこいつは危険だ。

それに、こいつの眼はよく知ってる眼だ。

目的のためなら、時に手段を択ばない人間の眼だ。

ただの純粋な戦闘ゴリラのおねーさんよりたちが悪い。

 

「《テリトリア》、飲め。少なくとも、この子は服従させた後に自死を命令するような外道じゃない」

「ソノテガアッタカ」

「エソラ?」

「ジョーダンだよもう。まあおねーさんの言う通りでさ、別にボクはお前に悪事を働かせようとか思ってないんだよ。邪魔されないって言う完璧な保険が欲しいわけ」

「しかし……」

「ああもうウザい」

 

ボクの引き金は軽いぞ。

ちゅどーん!!

 

「エソラ!?」

「大丈夫、催眠レーザーなのであった~。良い小道具でしょ」

「心臓に悪いアイテムだな」

「ハッタリが大事なのだよ、ワトソンくん」

「ワトソンではないが」

「言葉の綾だよ。さて、こいつをまた指にブスリ」

 

と言うわけで強制ギアス。

そして命令。

 

「起きろ」

「あぐっ!?」

 

うんうん、ギアスはちゃんと作用してるね。

 

「き、貴様ァ……!!」

「これ以降敵対行動禁止ね。期限は撤回するまで♪」

「クソ!!」

「ついでにアジトに招待してあげるけど、もちろん誰かに伝えようとするのも全部禁止ね。異能で読み取られるのもダメ。記憶を消してもらうから」

「《ブレイディア》!これが本当に外道ではないと!?」

「根は良い子なんだ」

「どこがだ?!」

 

あー、いい歳した大人がボクの言いなりだ~、楽し~~。

ざぁこざぁこ、二度もボコボコにされるヒーローの恥❤

ふぅ、すっきりした。

とりあえずトイレットペーパーを補給してアジトに戻る。

 

「で、話って何」

「その前にこのアジトについて聞いても良いか?」

「ダメに決まってんだろ、お前に質問する権利があると思うな」

「ぐっ……」

 

ふん、お前なんかにボクの自慢のアジトを解説してやるモノかよ。

おねーさんとは話し合った方が良いと思ったから機会をくれてやっただけだからな、勘違いするなよクソッタレ。

 

「じゃ、ゲームでもして時間潰してるから勝手に話してもらって、どうぞ。用が済んだらさっさと出てけ」

 

ボクは自分の部屋に引き籠った。

 

 

 


 

 

 

エソラは大層ご立腹と言った様子で、部屋に引き籠った。

余程自分のアイテムに干渉されたのが気に入らないらしい。

 

「随分と嫌われたな、《テリトリア》。だがまあ、収穫はあったか」

「《ブレイディア》、アレは何だ」

「思うに、世界の滅びだな」

「あの子供がか?」

 

今回は危なかったな。

《テリトリア》の命は、喪われたものと思った。

良くも悪くも、エソラの生み出す道具は、彼女の良心によってセーブされている。

心のタガが外れてしまえば、何が生み出されるか分かったものではない。

 

「あの子は、一応の制限はあるがこの世に存在しないモノを生み出すことができる」

「なんだと?」

「方法は分からない。一度たりとて、あの子は私に能力を使っているところを見せなかった」

「まさかこの拠点も……」

「あの子自身の能力で創り出されたものだ。この空間内部では、あの子がルールだ。入るなと言われた部屋には、何をどうしようとも入ることが出来なかった。ついでに言えば、異能を許可された部屋でしか異能を使うことができない」

「異能が機能してないのはそのせいか……」

 

最悪、あの子はこの空間に引き込めば無敵だろう。

私ですら太刀打ちのしようがない。

恐らくだが……死ねと言われればそのまま生命活動を停止するだろう。

 

「だから言ったんだ。あの子を怒らせるなと。一歩間違えばキミは死んでいたぞ、《テリトリア》」

「……止めなかったくせに」

「制止くらいはしたさ。だから殺されなかった。一度目はキミを甘く見ていた。二度目は私の顔を立てた。三度目はない」

「それがあの小娘に従う理由か?」

「違うが?」

「そうか……」

 

別に私はエソラのご機嫌を窺いたいわけではないしな。

私自身はあの子の逆鱗を踏むような真似をしているつもりはないし。

 

「何故姿を晦ました?先日の話は初耳の事ばかりだ」

「ヒーローであることに疲れた。それだけだ」

「確かに、お前からは以前のような炎は見受けられない。だが、何がお前をそこまで疲弊させた?」

「心当たりがあり過ぎるな」

「全て話せ」

 

仕方がないので愚痴交じりにすべて話した。

腹が立ってきたな。

酒でも飲んでないとやってられん。

冷蔵庫からビールを一缶。

 

「確か最初の奴は~~……」

 

 

 


 

 

 

愚痴交じりに吐露された、《ブレイディア》のこれまでのことは、全て初めて聞くものばかりだった。

彼女に割り振られた数々の無茶な指令や、喪われた彼女のオリジン、心情。

とてもではないが、戻って来て欲しいなどとは、言えなかった。

ついでに酒に弱いのも初めて知った。

一通り話し終えると、赤ら顔のまま寝入ってしまった。

近くにあったブランケットをかけて、一ダースほど開けられては空にされた空き缶を処理する。

 

「うーわ、おねーさんだいぶ飲んだね」

 

少しすると、機を見計らっていたのかエソラというらしいヴィランが出て来た。

今も警戒しているのか、私はこの子供を正確に認識できない。

 

「で、おねーさんはちゃんと話せた?」

「……ああ、洗いざらい今までの事を話してくれたよ。だが貴様、《ブレイディア》の事は気にかけるのだな」

「拾った責任って奴?流石にアジトの前でボロッボロになって倒れてたらほっとけなくてさ。ポイ捨てしてもよかったんだけど、翌日訃報が流れたらメシマズじゃん」

「そうか……」

 

この子供が攫ったのではなく、瀕死のところをこの子供が拾ったのか。

根は良い子、か。

あながち間違いでも無いのか。

 

「さ、用件は終わったでしょ、さっさと出てけクソ女」

「豹変するな……あと、ひとついいか?」

「は?」

「貴様にとって、生み出したアイテムの数々はなんだ?」

「……遺品」

 

なるほど、怒りも分かろうというものだ。

 

「そうか……すまなかった」

「許すわけないだろ。『さっさと帰れ』」

「くっ、こっちは命令か」

 

しかし、遺品か。

この子供が持つ異能は、一体……。

だが、そうだな。

 

「《フィクシオン》か?ああ、私だ。彼女の事だが、連れ戻すことはできない。できなかった、ではない。()()()()()()()()()()()。あと、可能ならば上層部を洗ってくれ。どうにもきな臭い。どうやら敵は内側に食い込んでいるようだ」

『ちょっと待って先輩!?しばらく連絡しなかったと思えばそんな!?』

「すまない。私は今核心に触れる情報を伝えることができない。あらゆる手段をもってしても、だ」

『先輩もしかして手掛かりに接触して負けました?』

「うるさい黙れ」

『図星じゃないですk【ブチ】』

 

できることをしよう。

たとえ誰にも話せないとしても。

 

「変えてゆくしかない、か」

 

《ブレイディア》は言っていた。

『自分がいなくなるくらいでどうにかなる世界なら、それは間違っている。今ではそう思っている。万が一エソラが暴走した時、人類はあえなく敗退する。私だって、必ず勝てる保証はない』と。

人類は、特別な何かがいなくても、対抗できなければならない。

きっと、そういうことなのだろう。

余りにも今までの暮らしが当たり前すぎて、誰もが失念していること。

 

「あの子供の素性も調べておくか……恐らく、体格的に八歳児程度……死亡判定者も含めて調べるか」

 

だからきっと、今の社会が崩れるのも、そう遠くはない。




・ブチギレTS転生ヴィランロリ
地雷を踏まれた状態のエソラ。
彼女が生み出した作品の数々は彼女にとっては遺品のようなモノなので、勝手に書き換えられるとブチギレる。
好感度パラメータもフラットから一気に憎悪一歩手前まで吹っ切れる。
最後に謝ってもらえたので許しはしないが好感度はちょっとマシ。
一体彼女の異能は何なんだ。

・地雷踏んだ《テリトリア》
地雷原でタップダンスしたがボロボロヒーローおねーさんの顔を立ててもらったのでギリ生きてるラッキーレディ。
最後に謝ったので「超嫌いな奴」から「しつこい奴」くらいまでアップグレードされた。
そりゃ入り口で地蔵してる姿を見たらそうなる。
一応尻尾出したらすぐ捕まえるくらいには優秀だけど、相手が悪過ぎた(最強x2)。
それはそれとして死にかけた対価として上層部がおかしいぞと言う爆弾情報を得たので頑張り始める。
最近の犯罪件数が上がっているのももしかして……?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。