TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う   作:蓋然性生存戦略

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本日二話目。
日曜日って筆が進みますね。


第十話:元TS転生ヴィランロリと結束

『幻楼院とクソガキが繋がりありってマ?ナイナイ』

『幻楼院の罪状考えるとクソガキも……?ナイナイ』

『速報:ヒイラギさん怒りの声明【マスコミには失望した】』

『失望されててワロ。もういらないよお前』

『相変わらずのマスコミ情弱乙。だったら幻楼院絡みでクソガキに匿われてるヒイラギさんは何だったんすか』

『そもそも本人自体が禁則事項扱いなのは今もなお否定されてないんすけど』

『ガーディアンズからの声明見てないんか?クソガキは無実どころか被害者であることはもう発表されたんだが』

『いつものマスゴミじゃん、もういらないよアイツら』

『裏も取らず鵜呑みにするマスコミいる?いらなくない?』

『というかクソガキを悪人扱いするなら自動的にヒイラギさんを侮辱してることになるんですけど断罪派はそれを理解してるんですかね』

『つーかこれ本人の詳細が禁則事項であることを考えるとマスコミにタレコミしたやつ、普通に厳罰処分では?』

『馬鹿がいたもんだ』

『クソガキの言う通り、人間は愚か』

『今まで拾ってきた情報をもとに考えれば分かると思うんですけど、もしかして脳無い?』

『犯罪者だったらとっくに政府もガーディアンズも黙ってないんだよなあ』

『なお幻楼院』

『証拠が無かっただけ定期』

 

確認したSNS。

世論はどうなっているのか。

それを確認した結果が、これだ。

 

「なんでよ!!

 なんで、どうしてどうしてどうして!?

 幻楼院の最終兵器として生み出されたお前が、どうして世論の票を得ているの!?

 おかしい、こんなの絶対におかしい!!

 私の脚本を狂わせるお前は一体なんなの!?

 なぜ死なない、なぜ自分を超える存在を相手に乗り越えられるの!?

 分からない、理解できない!!

 運命を思い通りにするはずの私の異能が、どうして作用しないのよ!!

 あぁアぁァああァァあアッッ!!!」

 

怒りでどうにかなってしまいそう。

どうして?

どうしてお前は愛されて、私は見向きもされなかったの?

私はこんなに頑張っているのに。

お前は楽しく暮らしているだけなのに。

妬ましい、疎ましい。

 

――所長、このアプローチは失敗ですか?

――期待できそうもないわ。廃棄しておいてちょうだい。

――かしこまりました。やはり脱走されたのは痛手でしたか。

――もう追跡もできないわ。言っても仕方がないわね。

 

「お前さえ、お前さえいなければァ!!」

 

過去の声がフラッシュバックする。

冷たい檻の中で、勝手に生み出したくせに、勝手に落胆する研究者たち。

あの場所から逃げ出せたお前と。

あの場所から捨てられた私。

 

何が違う?

私とお前で、何が違うという?!

 

お前は全てを与えられて、私は何も与えられなかった!!

死ね、死ね、死ね!!

私の理想のために、お前は《ブレイディア》と共に死んでよ!!

 

「……なんだって使ってやる……あの二人さえいなければ、私の世界は私の思う通りなんだ……!!」

 

私は、脚本を書き込む。

幻楼院リンカは、何故か守られて上手く動かない。

ヒイラギ=オークニーは、幻楼院リンカに守られている限りどうにもならない。

あの二人を巻き込むと、この星は上手く回らない。

なら、外様のモノを使うしかない。

エイリアンたちを使って、あの二人を殺すしかない。

そのエイリアンたちでさえ、もう頼りないと思えるけれど。

私にはもう、それしか出来ない。

 

「これで……死んで」

 

そして、

 

『見ぃつけた』

 

私は見つかった。

 

 

 


 

 

 

「ハイというわけでね。みんなテレビ見た?おもろ」

 

『おもろ、じゃないが』

『悠長に配信するクソガキの鑑』

『案外元気そうでよかった』

『クソガキ!幻楼院との関係は?!』

 

こんな時こそ平常心。

配信してますエソラです。

 

「《ガーディアンズ》から声明出てるでしょ~~。ボク被害者。ニュースで言ってたようなことは一切ありませーん。マスゴミがよ、ちゃんと裏取りしろバーカ。ネットの集合知の方が優れてるとか報道機関名乗るのやめたら?」

 

『安心と安定のクソガキクォリティ』

『もう高校生とかの年齢なのに姿がほぼ変わらないせいでクソガキ仕草が似合う女、エソラ=オークニー』

『信じられるか?これが既婚者の姿だぜ?』

 

うるせえ配信からBANするぞお前ら。

配信モードだともうこれが染み付いてんだよ。

 

「で、SNSというかツイーチー、おまいらのツイーチしか見えないんだけど」

 

まあそれはともかく。

エゴサしたらまあ、ボクを擁護する声が多い多い。

しかもちゃんと根拠付き。

素晴らしい民度だ。

 

『いやだって、ファンの間ではほぼ確定路線だったし……』

『クソガキ、被害者でしかなくね?』

『その状態でよくもまあ、あの幻楼院からヒイラギさんを匿い切ったなとしか』

『クソガキの存在がそもそも考察スレ立つレベルで謎かつ知名度あったから、まあお察しなんよね』

 

「正直声明出る前から結束力が高いおまいらにビックリしてる。多少炎上するの覚悟してたんだけど」

 

『クソガキはヒイラギさんとテリトリアの影響力を過小評価し過ぎ』

『クソガキもしかしてテリトリアの調査能力の高さ知らない?』

『界隈ではめっちゃ有名なんだけど』

 

「いやまあアイツには何度も野暮用頼むくらいには能力を評価してはいるけど」

 

《テリトリア》の評判はまあ知っている。

知っているが、人間は基本愚かだから、それでも燃えると思っていたんだよな。

蓋を開けてみればあらびっくり、世論はむしろマスコミを叩いている。

おもろ。

 

「おまいらさぁ、その結束力を普段から見せろよ」

 

『見せてるだろ。クソガキ扱いするために』

『そうだぞ。というかそろそろジャックに戻れよ、ブレイディアばっか使ってんじゃねーぞ』

『オバクロも配信しろ』

『R4B配信まだ?』

 

「好き勝手言いやがって本当に。一応ボク危機なんですけど」

 

『現状危ない奴が配信しない定期』

『マスゴミから避難して姿くらましてるくせに配信する度胸』

『ヒイラギさんも《ガーディアンズ》ガードに守られてマスゴミに対応しないの笑う』

 

やっぱ持つべきは影響力と権力なんよね。

今まで草の根活動でイメージと視聴者を集めてきた甲斐があった。

 

「おまいら好きだよ」

 

『突然の告白』

『浮気ですか!?ヒイラギさんというものがありながら!?』

『エソラは悪女、はっきり分かんだね』

 

「やっぱおまいら嫌い。何度でも返り討ちにしたる」

 

ま、所詮おまいらはボクのレイド企画の餌なのだ。

存分にわからせに来いよ、ガハハ。

 

「まあ一応今日は雑枠なのでゲームはしないんだけど。というか裏の作業が忙しい、マジで」

 

『配信しながらパソコンみたいなのガタガタ打ってるの、まあお察しよね』

『パソコンベースであって明らかにパソコンではないモノ』

『クソガキの本当の異能が未だに不明なの怖い』

 

「まだ許可下りてないから詳細話せないんだよねー。まあもう噂程度には広まってると思うけど」

 

『なんかすごいバリアを張る盾、生徒たちを一斉に帰還させたテレポートボタン、今まで異能だと思われていた流体金属……』

『一周回って凄い技術者で無能力者の可能性すら出てくるのなんなの』

『一説によれば雷すら操ったとか』

 

「やっぱ見せれば回るよねえ……あーやだやだ。偽装してたのに」

 

『偽装してた(明言』

『偽装が必要な異能とは』

『偽装が必要な理由にもよる』

 

「まあぶっちゃけ諸外国への根回しは済んでるんですが。ちなみにこれ言って良いって言われたやつね」

 

『国家レベルかよお前』

『国家機密が平然と配信してんじゃねえバカ』

『クソガキってやっぱりバカなの?』

 

「逆に聞くけどひっそりと粛々と暮らせって言われてできるかおまいら」

 

『無理』

『いやです』

『できんこともないけどやりたくない』

 

「そういうこと。あとヒイラギとの関係は外堀から埋めないと荒れる」

 

『計算した上での行動かよ』

『汚い、流石クソガキ汚い』

『妥当ではあるけど』

 

伊達や酔狂で配信をやってるわけではないのだ。

全てはボクの人生のため……ヒイラギと結ばれてその後も仲良く暮らすための作戦だったのだ。

フハハハハハ。

 

さて。

そろそろ配信している目的を話そう。

ヒイラギから、ボクを標的にしている可能性が高いと、報告を受けている。

つまるところ、だ。

 

「ま、今回ボクをボコボコにできると思ったタレコミ主には申し訳ないけど、リサーチが甘過ぎるんだよね。面と向かい合って直接殴り合った方がまだ勝ち目あるよ」

 

『わろ』

『確かにクソガキなら肉体言語の方が勝てそう』

『なお、噂のアイテム』

『はい……』

 

まあ要するに釣りなんだけど。

なーんか一向に釣れないんだよな。

なんだろね。

 

「まあ、正直、その」

 

『なに』

『いや、この笑い方は』

『ああ、いつもの』

 

「勝負にすらなってないんだよにぇ~~~」

 

『煽りよる』

『殴りたいこの笑顔』

 

ヒイラギ経由で色々情報は貰っているのだ。

 

因果干渉の痕跡があり、ボクに敵対的で、なおかつボクと幻楼院の繋がりを知る人間。

それが今回の相手だと。

となれば、だよ。

ギアスを突破できるとは到底思えない。

アレを突破できるのは、それはもう某キャスターさんの奥の手くらいだろう。

やっぱあれ無法だよ。

で、そんなもんねーよってのが調べた結果として出ている。

つまりは、だ。

ギアスを強制した人間は全員シロとなる。

 

じゃあ誰だよ!!

そうなるよね。

そこで、ヒイラギはにっくきあの女に面会したらしい。

事後承諾だったけど!!

……ボクが言えることじゃないね、はい。

 

それで、いたのだ。

条件に一致する人間が。

ただ、今も生きているかは不明という条件ではあるが。

 

いるのかよ。

またお前かよ。

いい加減、幻楼院の負の遺産と関わりたくないんだけど。

 

被検体識別名称、KY121E。

リンカが生み出された実験、【幻想具現プロジェクト】と同時並行で進められていた、【運命変転プロジェクト】の被害者。

その者は()()()()される際、隙を見て脱走したそうだ。

 

あのクソ女……他にもプロジェクトがあったりしないだろうな。

ほんでまあ、あの女は失敗作と断じたらしいが、その異能は厄介なことこの上なかった。

 

その異能に名付けられた名は、《好都合な御伽噺(メアリー・グース)》。

召喚するノートに脚本を描くと、脚本通りに運命が動き出すというもの。

 

ただ、その効力は同じ因果干渉能力者と競合し、絶対ではないということ。

感情や思考までは運命で変えられないこと。

個人の運命を記すなら、その個人の名前を記入しなければならないこと。

急激に運命を捻じ曲げることはほぼ不可能なレベルで難しいこと。

 

まあ一応制限はあるらしい。

なんだこれ、あの有名な真っ黒なノートと何がちゃうねん。

これを廃棄ってことは失敗作扱いだろ?

お前頭おかしいよ。

 

まあそれはさておいて。

この配信しているボクをどうにかしようとするのなら、何かしら反応があると思ったんだけど。

用意した機材、全部反応しないな。

どういうこっちゃ……?

 

 

 


 

 

 

「あら、また来たのかしら」

「貴様、ひょっとして最初から全容を把握していたりしないか?」

「大体把握してるわよ。ちょくちょく変な痕跡が見えたのだもの、気になって確認しちゃったわ」

 

やはりか。

この女、全てを知っておきながら黙っていた。

もっと締め上げるべきだったか……?

いや、ラセオの件は助かっている。

それに犯罪者に全て知らせてもらうのも違うだろう。

これで良かったのだ。

 

「どこで気付いたのかしら?」

「そもそもおかしいんだ。貴様はエイリアンの並行世界干渉技術が不完全だと言った」

「そうね」

「宇宙を航行して侵略行為を行えるほどの高度な技術力を持つ彼らが、そんな不完全な技術に頼るだろうか?」

「ふふ、そうね」

「さらに言えば、だ。このアセリアは火葬が基本だ。つまり、私やエソラの死体を回収できる機会があるとして、それは死んでから火葬されるまでのわずかな期間。不完全で不安定な技術で、真っ当に用意できるとは思えない」

「正解。つまり、彼らは運命を握られたのよ。《好都合な御伽噺(メアリー・グース)》によってね」

「……それが今回の全容か」

 

つまるところ。

エイリアンは因果干渉能力の奴隷でしかなく。

本当の敵はこの星にいたということだ。

 

「何故言わなかった!!っていう反応を期待したんだけど」

「それは残念だったな。期待に応えられそうにはない」

「つまらないわね。ま、私も黒幕の姿と位置を把握しているわけじゃないわ。興味ないことはすぐ忘れる性質なのよ、私」

「実験データだけは覚えている、といったところか」

「あら、正解。私のことが良く分かっているわね」

 

なるほど。

痕跡からどのような手段が使われ、そこから逆算して過去の実験データと照合したといったところか。

ならば、データバンクとしては使えそうだな。

 

「リンカが脱走する前に成功した被検体だったかしらね。実験自体は成功したけど、出来としては失敗作だったわ。リンカが出来過ぎだったというのもあるけれど」

「……貴様が実験を繰り返さなければリンカもエソラもいなかったことを考えると、私の胸中は複雑なのだが」

「ふふ、それは愉快ね。ま、アプローチとしては失敗だったと悟ったし、これ以上の成果は見込めないと判断したのよね。だから廃棄処分しようとしたのだけど」

「逃げられた、か?」

「ええ。それからよ、異能封じの枷の基礎理論をきちんと固めたのは。そう何度も実験体に逃げられちゃ堪らないわ」

「……全てが繋がっているのがなんとも言えん……」

 

結局この女に繋がる。

何もかもがこの女に終始している。

やってられん。

 

「私の沈黙を見破ったことは褒めてあげるわ。ご褒美として色々お話ししてあげましょう。哀れなエイリアンたちの、これまでの運命もね」




・KY121E
都合の良いアイテムを取り出すデウスエクスマキナとして期待されたのがリンカであるのならば、運命的に都合の良い展開を産み出すデウスエクスマキナとして期待されたのがコイツ。
今回の黒幕枠。
エイリアンさん達は根本的にコイツのせいで滅亡します。

幻楼院リンネ的には失敗作。
そのため、幻楼院の名を与えられることもなく、廃棄処分されそうになったところを逃げ出した被検体。
なんでか知らないがヒイラギとエソラが邪魔らしい。
なんかよく分からないが名前が見えてくることがあるかもしれない。

能力は《好都合な御伽噺(メアリー・グース)》。
端的に言えば、召喚したノートに脚本を描くことで運命を回す能力。
非常に強力だが、同じく因果干渉する能力者と力が競合して上手く動かなかったり、そもそもつよい運命をいきなり捻じ曲げて変えようとするのは難しかったり、個人の動きを脚本で指定するなら個人の名前が必要だったり。
課せられたルールや制限がある。

そもそもの話、エソラはリンカによって運命を切り開けるように呼び出された存在だから運命強度がとても高い上、KY121Eは致命的なミスを犯している。
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