TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う   作:蓋然性生存戦略

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誤字報告ありがとうございます。
オレノオメメハボドボドダァ……。

それはそれとして。
ネトゲ民ほど分かってしまうKY121Eの正体。
カキフライが量産されてしまった。
ちなみに祈っても謎の隕石は降って来ません。


第十一話:元TS転生ヴィランロリのジャッジ・メイト

――ビー、ビー!!

 

大規模な因果干渉の警報。

すぐに逆探知を仕掛ける。

因果干渉能力者が相手だというのならば、ボクは自衛のために全力を出す。

厄介なんだよ、アレ。

因果干渉能力者同士で競合するという性質があるとはいえ、そんな能力者が何人いるんだという話だ。

 

「見ぃつけた」

 

ジャミングもなんもない。

するっと逆探知が通るね。

って、これ職員じゃなくて生徒……。

いや、おま、これって……。

マジでェ?

 

「……お前なのかよ。ちょっとショックだぞ」

 

……。

連絡はしておこう。

一緒にはいかないけど。

 

「ごめんヒイラギ。やっぱり任せらんない」

 

ボクはありったけの武装を用意して、アジトから出た。

 

向かう先は一期生のA組。

四神くんと一ノ瀬さんがいるクラス。

三堂くんと双葉さんはB組だね。

それはさておき。

 

()()()()()()。《ガーディアンズ》特例規定により任意同行を願う」

「は?エソラ先生、それは一体……」

「悪いけど、四神くんの出る幕じゃあない。こんなこともあろうかとボクは《テリトリア》から権限を貰って来ている。ここの学校の総責任者は彼女だ。問い合わせなら彼女にしてね」

 

逆探知の結果、彼女がKY121Eであることが判明した。

また生徒かよ。

もうヤダ。

 

「証拠は挙がってるよ。観念してくれると助かるんだけど」

「……」

 

無力化するための銃を突き付けて、ボクは言い放つ。

既に他の生徒への被害が出ないように手は打ってある。

ボクが負ける要素はない。

 

「……いなければ」

「ん?」

「お前さえ、居なければあぁぁあああああ!!」

 

え、うそ、そこで殴りかかって来る?

いや待て速いな。

アイテムで思考加速しているボクにこの速度感を見せるの?

ちょっと待て話変わって来たな。

 

「ハイドラグラム!!」

 

即座に髄液くんを展開。

一ノ瀬を窓から無理矢理叩き出し、バトルフィールドをグラウンドに切り替える。

他の生徒たちは判断が早く、さっさと避難を開始している。

いやあ、様子がおかしいねこりゃ。

明らかになんかやってるよコレ。

 

「ア、ァ、アァアアアァアア!!」

「おいおい、ドーピングでもしたの?まるで獣だ」

 

髄液くんの拘束を振り切って来たな。

今までの一ノ瀬じゃあり得ない挙動だ。

好都合な御伽噺(メアリー・グース)》を使って異能覚醒でもさせたか?

相当体に負担かかると思うんだけど、それ。

ボクも前に似たようなことは試したけど、二度とやりたくないもん。

 

「ふぅ……死んで」

「アイギス!!」

 

あ、これ襲撃の時に見たぁ!!

お前だったんかワレェ!!

やっべちょっとシャレにならない。

オーバーホールしたばっかなのに!!

 

――ドゴォォォォォォン……

 

あぶねぇ……やっぱ最後に頼れるのはアイギス。

防御は最強の攻撃だね、フハハハハハ。

 

「何度も同じ手でやれると思うなよ、お前」

 

オーバーホールしたということは根本的に見直したということだ。

神話武装使用に際する負担ぅ~~?

ンなもんなんとかすらぁ!!

 

「死ね、死ね、死んでよ!!なんでこれすら防ぐのよ!!」

「死にたくないから死ぬほど準備するんだよ」

 

《時の額冠》、《叡智の義眼》、《無欠の盾》、《神の雷霆》、《旅路の靴》、《天の羽衣》、《明星の天輪》、《竜の心臓》、《黄金の血》、《戦乙女の翼》。

こんなとこかな。

 

「そっちが反則(チート)なら、こっちも反則(チート)で対応するまで。いくらでも異能を増やせばいい。ボクもいくらでも神話を再現してやる」

 

ヒイラギたちが来るまでの間、ボクが相手しようじゃないか。

というかこいつが干渉した時点でエイリアン艦隊が各地に出現してるから必然的に時間を稼がないといけないんですけどね。

ヒイラギ急いでくれると嬉しいな。

 

「で、もう一度聞くよ。投降してくれない?」

「誰がするものか!!お前さえ消えれば私のモノだ、私たちのモノだ!!」

「なんでボクだけ……?よくわかんないなあ」

「お前のせいで私の脚本は壊れる、壊れ続けてる!!お前さえいなければ、今頃ヒイラギ=オークニーは死んで、私たちの世界になっていたのに……!!」

「は?」

 

お前今なんつった?

まさか八年前にも関与してるとか言わねえよなあ?あ?

 

「殺人未遂、殺戮幇助、外患誘致、国家転覆、機密情報漏洩。キミにはいろいろな容疑があるけれど、ンなもん知らねえ」

 

ヒイラギが来るよりも早く決着を付ける。

 

()()に聞きたいことができた。腕の一本や二本は覚悟しろよテメエ」

 

 

 


 

 

 

戦闘開始から約1時間。

エソラの用意してくれた足が無ければ、ここまで早くは終わらなかっただろう。

それでも1時間が経過している。

エソラは既に行動を開始したと通達は耳に入っている。

黒幕との戦闘に入り、今もなお戦闘中であるということは聞き及んでいる。

私も早く向かわねばなるまい。

あの子は本来、戦闘向きではない。

 

「《テリトリア》、次の反応は?」

『残っているがあとは人類軍で何とかなる。それよりもお前は早く戻れ』

「何があった」

『戦闘が激し過ぎてこのままではトート全域が崩壊しかねん。被害は抑えているが容疑者の力が中途半端に強いせいで攻めあぐねているようだ』

「理解した。すぐ戻る」

 

嫌な予感がした。

エソラはすぐ無茶をする。

今回もそうである気がしてならなかった。

エソラに用意されたアイテムを使い、アジトまで戻った。

すぐに学園の職員寮の方から出て、それを目の当たりにした。

 

嵐だ。

嵐が衝突している。

その中から、エソラの姿を探す。

ああ、見つけた。

小さな体に、一体いくつの神話武装を身に着けているのか。

明らかに今までの許容限界を超えて行使している。

アレではエソラの身体が保たない。

 

「アアァァァアアアアア―――――――――――――――――!!」

「ッ!?」

 

閃光。

咄嗟に剣で斬り払い、被害を空に逸らす。

何だ今のは。

途轍もない熱量だったぞ。

まさかエソラの流体金属を蒸発させたのも……。

なるほど、であれば神話武装の行使も頷ける。

 

「今行くぞ、エソラ」

 

私は標的も発見し、天を駆け抜ける。

ああ、キミだったのか、一ノ瀬キリエ。

残念だ。

少しだけ、心が冷えてしまったよ。

 

「ッ!?ヒイラギ=オークニー!?」

「余所見をしたなぁァァアあああああ!?」

「ぁぐぅぅぅあああ!?」

 

私と一ノ瀬がお互いに視認した瞬間、一ノ瀬は一瞬固まった。

その隙を逃さず、弾丸のような勢いでエソラが蹴りを突き刺した。

そのまま、揃って地面に激突する。

 

一ノ瀬は今のでダウンしたようで、一向に立ち上がってこない。

それを、エソラは胸ぐらを掴んで持ち上げた。

 

「吐けッ!!お前、八年前のヒイラギにも手を出したのか?!!事と次第によってはお前ただでは済まさねえぞ!!!」

「……それが、なんだって言うの。お前は全てを手にしているくせに……いいじゃない、いっこくらい」

「っざっけんなあぁぁああ!!」

 

エソラの右拳が、振りかぶられる。

限界以上の力が入っている。

握った拳が、血で滲んでいるのが見えた。

 

私は止めた。

一ノ瀬の安否のためではなく、エソラのために。

 

「エソラ。やめるんだ」

「ッ……でも!!」

「良いから。キミの手は殴るためにあるわけじゃないだろう?」

「……分かったよ」

 

エソラは一ノ瀬を投げ捨てて、私の後ろに下がった。

……酷い状態だ。

無理矢理、異能を行使したと見える。

エソラを抹殺するために、ここまでするか。

 

「ほんと、理不尽。あれだけエイリアンを用意したのに」

「全てが全てではない。手が回らない地区を担当したまでの事だ。全体の三割程度に過ぎん」

「……バケモノ。お前がいたら、私の願いは叶わない。お前を消そうにも、そこの幻楼院リンカが邪魔をする……それを殺そうとしてもお前が守る……ふざけるな……」

 

何を願い、何を思ってこんなことをしたのかは知らない。

それは私の関知すべきことではない。

だが、一つだけ言えることがあるとすれば。

 

「他者を排斥して手に入れた願いなど、長続きはせんぞ」

 

悪鬼必衰。

そんな言葉が極東連邦にあったそうな。

ああ、それとだ。

 

「ここにいるのは幻楼院リンカではない。正真正銘、エソラ=オークニーという名前の私の伴侶だ」

「……ハッ。その姿をしておいてあの女じゃないって?冗談もたいがいにしてよ」

「事実だ。幻楼院リンカは、八年前に死亡している」

「……は?」

 

ぎゅっと、エソラが私の手を握る。

ああ、そうだな。

すまない、辛いことを思い出させた。

 

「キミがどれほどの苦痛を受けたのかは、私達は知らない。だがそれらを私たちのせいにされても困る。それはただの八つ当たりでしかない」

「死んだ?あの女が?全てを手に入れていながら逃げ出したくせに?は?」

「情緒も思慮も足りていないな、キミは。口を閉じていた方が賢明だぞ」

 

エソラの目つきが鋭くなっていく。

小さなエソラの手を握り返して、それとなく制止する。

 

「……好きにして。もう、私は何も出来ないし」

 

異能封じの枷は持ってきている。

枷を取り付けて、《テリトリア》に状況が終わったことを報告する。

報告しながら周囲を見渡せば、見渡す限りの破壊の痕。

生徒や職員がいる校舎や寮は比較的無事だが……他の施設は壊滅的だ。

仕方がなかったとはいえ、随分な被害が出たものだ。

 

「随分と暴れたな」

 

少しして、《テリトリア》がヒーローを引き連れてやって来た。

被害を抑えるためにも、すぐ近くで頑張っていたのだろう。

少しだけ煤けて見える。

 

「私が着いた時にはほぼ終わっていたさ」

「ふん……それで、一ノ瀬キリエが黒幕か」

「意外か?」

「いいや、前々から経歴には違和感があった。殊更に暴こうとはなぜかしなかったがな」

 

少なからず影響を受けていた、というところか。

 

「異能封じの枷もついている。万が一は無いと思うが厳重に連行しろ」

「待ってくれ、待ってください!!」

 

ん?

どうやら校舎から生徒たちが出てきたようだな。

……四神を筆頭とした一期生か。

 

「一期生の者か。手短に頼む」

「せめて、罪状を教えてくれませんか。俺達納得できません」

「現状だけでも殺人未遂、殺戮幇助、外患誘致、国家転覆、機密情報漏洩の容疑及び証拠が掛かっている。状況証拠ではあるがそれらも合致している」

「そんな……一ノ瀬に限って、でも、今のは……っ」

「諸君らにとってこのものがどれほどの存在であったかは諸君らが証明しているが、職務は職務だ。ヒーローに限らず、治安維持組織とはそういうものだ。覚えておくと良い」

 

手厳しいな。

それができるヒーローがどれほどいるモノか。

完璧に今も成しているのはキミくらいだろう。

 

「撤収だ。一期生諸君、当然ながら今回の件は箝口令が敷かれることになる。尤も、形だけのものではあるがな。だが命令は命令だ、守るように」

 

全く、生真面目な奴だ。

だからこそ仕事が終わらないのだろうが。

 

「ヒイラギ先生、今のは……」

「奴が抜かるはずあるまい。容疑とは言ったがほぼ確定だろう。そもそもの前提として、やましいことが無ければ抵抗する意味もない。現実を見ろ」

「っ……」

「まあ、と言っても酷か。私も飲み込むのは時間がかかった。ゆっくり折り合いを付けろ。さぁ、寮に戻れ。しばらく休校だろうし、電波も繋がりにくいだろうが……まあそこはエソラになんとかさせよう」

「えっ」

「キミも大暴れしたのだから、それくらいは、な?」

「はい……」

 

生徒たちを帰らせ、私もエソラを抱えてアジトに戻る。

正直、エソラが心配で心配で仕方がない。

 

「あの、ヒイラギ?ボク歩けるよ?」

「信じられん」

「ほんとだって!」

「本来の許容限界を超えているように見えたが?」

「うっ……」

「無茶をしたと自覚しているキミの言葉は、きちんと状況を正しく把握できるまでは信用しない。今回の件で私が学んだことだ」

「はい……ごめんなさい……」

 

なお、全く無事ではなかった。

本当にキミという奴は……。

 

 

 


 

 

 

「あー全く。次から次へと……」

「先輩、イゼプタから報告が」

「そこにおいておけ。緊急性は高くない地域のはずだ」

「了解」

 

一ノ瀬キリエの取り調べは大方終わった。

全く頭の痛くなる内容だった。

アレはだめだ。

生涯枷付きで生きてもらわねばならん。

幼稚で稚拙で、エソラとは根本から前提が異なる存在だ。

正直、エソラと一ノ瀬キリエ、二人の能力が逆じゃなくて良かったと思っている。

 

「ほんと、お疲れ様です」

「お前もな。働き詰めだったろうに」

「先輩ほどじゃないですよ。しかし、幻楼院は本当にやってくれますね。因果干渉能力をそうポンポンと出さないでほしいんですが」

「もう出てくることもあるまい。しばらくはゆっくりできるぞ」

「だと良いんですが」

 

今回、私も《フィクシオン》もほぼ缶詰だった。

色々と手が無いため、調査をしながら関係各所への書類づくりなど、まあ大変だった。

それもこれもそろそろ終わりであると考えると、感慨深いものがある。

 

「久しぶりに飲みに行けそうだな」

「ですねえ……行きたいお店結構溜まってるんですけど、どれにします?」

「梯子でも良かろう、ははは」

「それもそうですね、あはは」

「「仕事来そう」」

 

軽口はここまでとして。

 

「人類軍の被害は」

「死者、負傷者、合わせて十万は下らないかと」

「第一次大乱の時より随分と減ったな」

「技術やヒーローの数も異なりますしね」

「だが十万か……依然として頭の痛い数字だ」

 

第一次大乱を経て、この星アルスガルは生存可能領域が狭まっている。

第一次大乱のおり、土地の汚染だの大陸が吹き飛んだりだの、色々とあった。

今や人類の生存可能領域は第一次大乱以前と比べると六割ほどにまで落ち込み、世界人口も大きく落ち込んでいる。

その傷は今も尚癒えない。

十万という数字は、余りにも大きい。

 

「次の襲来までに間に合うか……?」

「あるんです?」

「さてな。なければいいと思ってはいるが。最悪の爆弾もあるしな」

「詳細を聞いても?」

「やめておけ。私も途中で聞くのをやめた」

「了解。触らぬ神になんとやらってやつですね」

 

だが哀れなものだ。

その高い技術力故に、滅ぶというのだから。

 

「……その暴力が、こちらに向かわないよう、努力はしなければならないな……」

 

私は、そう独り言ちた。




・今回の神話武装一覧
《時の額冠》:くろのすくらうん。体内時間を加速する。
《叡智の義眼》:おーでぃんずあい。相手の情報を丸裸にする。
《無欠の盾》:あいぎす。ずっとMVP、絶対守る盾。
《神の雷霆》:けらうのす。戦犯とエースの間を反復横跳びしている殲滅兵器。
《旅路の靴》:えるめすぶーつ。空を歩ける。走れる。エアリアル。
《天の羽衣》:あまのはごろも。女の子は羽のように軽い。でも時に世界より重い。
《明星の天輪》:りんぐおぶるしりうす。肉体をとても強くする。
《竜の心臓》:どらごんはーと。肉体をとても強くする。
《黄金の血》:ふぁんたずむぶらっど。肉体をとても強くする。
《戦乙女の翼》:ばるきりーうぃんぐ。肉体をとても強くする。空も飛べる。

つまり超ムキムキの状態で本来の許容限界を無理矢理超えて運用していた。
ドーピング状態の次くらいに強い。
でも明日は筋肉痛で動けない、ヒイラギにお世話されようね。



・一ノ瀬キリエ
KY121Eちゃん。
なんだかんだ自分の運命をいじくって複数の異能を発現させて大暴れしたが、使い方がなっていないので自分に大きな負荷を掛けるだけ掛け、命を削ってまでエソラを排除しようとした哀れな女。
余命はそんなにない。
エソラもどうにかしようとか思わない。
最後の最後までエソラをリンカと思い込んでいたので脚本を捻じ曲げられ続けて敗北。

地味に世界各地でエイリアン艦隊を暴れさせるというヒイラギ足止め作戦のためだけに大規模な攻撃を仕掛けたが、エソラアイテム運輸によりヒイラギが転戦。
各国の軍の手が届かない所を重点的に掃除して速攻で帰って来た。
そういう意味でも大敗北。

勝手に生み出された挙句勝手に失望されて要らないからポイされたところを逃げ出し、四神くんに拾われて人生を得た。
その後、ちょっとだけ平穏に過ごしていたが情緒も思慮も足りない実験チルドレンなので幼き日の四神くんの『ブレイディアを超えるヒーローになりたい』という願いを叶えようと暴走した結果が今回。
ヒイラギが強過ぎてどう頑張ってもそのままじゃ越えられないので抹殺に動いた。
本当にお前は何なんだヒイラギ。
結局、意図しない所でエソラが介入してヒイラギは助かり、脚本は崩壊。
幻楼院研究者たちにあれだけ望まれていたリンカの姿を見て、コンプレックスが爆発。
エソラの姿を確認した時から、エソラを抹殺しようと奮闘していた。
でもアイツ安全なところに基本引き籠るから倒せなくってェ……。
ようやく臨時講師として表に出てきたので大攻勢に出たら反撃喰らって負けた。
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