TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う 作:蓋然性生存戦略
ご飯美味しかったのに……。
注意:エセ方言出ます。
それは、突然のことだった。
「ちょいとお二人さん、すこぉしだけお話しさせてくれん?」
最初は、ボクたちに向けられてるとは思っていなかった。
だって、いつもの認識阻害アイテムをつけていたのだから。
「あ、もしかして気づいてない?そこの凸凹コンビの別嬪のお二人さんや、ちぃと話があるんやけども!」
そこまで言われて、ボクたちはようやくそいつがボクたちを指して呼んでいることに気づいた。
ボクたちは顔を見合わせ、警戒度を上げた。
いくらなんでも、声が届く範囲まで近づかれているのに、気づかなかったのはおかしい。
ただものではない。
それに、認識阻害を突破している。
どういうわけか、久方ぶりにアイテムを攻略してくる存在が現れた。
内心、やるじゃないかと、その胡散臭い男の声を賞賛し、袖口から流体金属を覗かせる。
「どこの誰?ボクたち今デート中なんだけど」
「そら悪いなあ。でもこっちも必死なんよ、堪忍してや。ウチ、アンタらがエイリアンて呼ぶ連中の一人やねんけど」
髄液くん、ゴー。
そこのエイリアンではなく、ヒイラギに。
キン!
ぴぃ……斬られた。
ごめんね、髄液くん……。
「エソラ!」
「敵意があるならとっくに奇襲仕掛けてるって。流石にあの隠密アドバンテージ捨ててまで話しかけてくるのはナンセンス。正面戦闘でヒイラギに勝てるわけないんだから」
ボクがそこまでいうと、警戒しながらヒイラギは下がってくれた。
ふう。
ボク自身、エイリアンに思うところはありけりだが、ちょっとアレなものを解き放っている以上、負い目はなくもない。
話くらいは聞いてあげたいのだ。
「……妙な真似したら斬る」
「ありがとなあ!ウチ非戦闘員やから助かったわぁ!敵意はないんよ、ホントホント」
「なんか調子狂うなあ……」
「まあウチはウチらの中でも変わり種やから。んで、早速本題に入るで。ウチらに仕掛けた情報災害、どうにかならん?」
「まあそうだよね……」
エイリアンときて話とくればそれだよね。
それしかない。
「せやねんなあ。アレのせいでウチらもう全滅秒読みやねん。アレ、感染しきったら即爆発やろ?」
「うん。なんか最後のひと押しがうまく行ってないけど」
「新生児を情報災害源と思われるネットワークから隔離したんや。やけんまあ、これでダメなら諦めるって方針やなあ……」
あー、ね。
確かにそれなら時間は稼げる。
稼げるだけだけど。
つーかよく気づいたな。
こわ。
「……ぶっちゃけ、半々くらいの気持ち」
「というと?」
「ブチ殺したいのと、申し訳ないのと」
「あー……まあ、な。せやねんな。アレやろ、ウチらの最後の悪足掻きにブチギレたクチやろ」
「うん」
「はぁぁぁ……だからやめようってウチは言うたのに……逆鱗踏むだけやん……本人の技量持って来れへんねんやから刺激するだけやって言うたのに……そもそも穏健派としてはあの技術は認められんてずぅぅぅッと議論が交わされとんのに……過激派の奴らときたらもう……」
「……お疲れ様。お茶飲む?奢るよ?」
こいつも大概苦労人か?
《テリトリア》と同じ気配を感じる。
「お気持ちだけもろとくわ……いやな、本当は滅びを避けるために動いたんがこっち基準で 十……なんぼやったかな、そんくらい前の大乱やねんけど、そっちのでっかい方の別嬪さんがえらい頑張ってくれはったもんやから、失敗に終わったんよね。知ってると思うけど。で、本当はそこから和平交渉だのなんだのって動くはずやったんやけど……なーんでか知らんけど過激派がずっと騒がしいのよ。穏健も失脚するんが出てきたし。そのせいで第二次侵攻やーなんて馬鹿の一つ覚え。ウチ、ずっとヒイラギさんのデータ送っとんのよ?明らかに全盛期更新し続けてるって言ったんよ?やっちゅうのに、んな訳あるかいって突っぱねられてな?ウチもう涙出そうやったよ。勝てる訳ないやん」
ああもうダメだ。
怒涛の愚痴ラッシュだこれ。
最後まで聞いてやろう……。
「でまあ、またヒイラギさんにメッタメタにされたからようやっと過激派を一掃できたんやけど、その頃にはもう手遅れレベルで情報災害が出回ってることが判明してな?捨て身覚悟で解析して突き止めたんがお嬢ちゃんって訳や。よう隠れとったなぁ……情報災害まで作れるとは思わんかったで」
「まあ、冷静だったら作らないよ。あの時は冷静じゃなかった。それだけ」
「身内がそれだけブチギレさせた手前、本当にどのツラ下げてって話やねんけど……なんとかならん?」
「なんとかしてあげたい気持ちはなくはないけど、ぶっちゃけ無条件だと再侵攻しない?」
「まあ過激派はまだわずかに生きとるし、絶対とは言えんなあ……」
「そっち、こっちの文字読める?」
「なんかあるならウチが持ち帰って読むけど」
「ちょい待ってね」
多分こいつはまともなやつだ。
ボクのシックスセンスがそう言ってる。
とは言え無条件というわけにはいかないので。
「エソラ、いいのか?」
「思い返せばはらわたが煮え繰り返る思いだけど、元を辿れば幻楼院リンネのせいだってことに気づいたのでいいです」
「……ならいい」
「あー、なんや。そっちもそっちでごたついとったん?」
「まあね。お互い大変よね。はいこれ」
「ホンマにな。で、なんこれ」
「絶対契約を遵守させる契約書、みたいなもの」
「なにそれ怖いやん。なになに?」
『1:アルスガル人類を甲、エイリアン全体を乙とし、甲乙は以下条件を遵守するものとする。
2:乙はアルスガル人類への直接的・間接的侵攻を禁ず。
3:甲がエイリアン全体への侵攻をした場合、2の限りではない。
4:また、これは3の条件を満たすまで効力は永続するものとし、エソラ=オークニー及びエイリアン代表による連名の血判によって成立する。
5:4がなされた場合、エソラ=オークニーはエイリアン全体に仕掛けた情報災害攻撃を完全に抹消するものとする』
「あーはん?これなら全然飲めるわ。ええの?吹っかけられる立場やろ?」
「ボクやヒイラギが死んだ後のことなんて知らないよ。はいこれボクの血判ね。そっちで議論して血判が押されたら、控えを残してそれはボクのところにワープするから。悪かったね、ボクの癇癪で滅びかけて」
「ええよ。お互い様やろ。それに、ウチはこの星の娯楽気に入ってんねん。仲良くできるならそれに越したことはないんやわ。ほな、ありがとな。これは持ち帰って議論させてもらうわ〜!」
「エイリアンの未来はお前にかかってるぞー、がんばれー」
「そう言われると胃にあたる器官が痛いわぁ!」
そう言って胡散臭い男は消えてった。
まあ、おもろい奴だったな。
「……《テリトリア》に報告だな」
「せやねー。まあ何、これで心残りは消化できたかな」
「……奴らにもああいったものがいたとはな」
「そりゃそうでしょ。人間なんだから」
「……ふ、そうだな。それはそれとして、《テリトリア》に怒られるといい。流石に越権行為だ」
「はい……」
まあ、その場でやることじゃなかったね。
ごめんなさい。
・穏健派エイリアン
とても苦労人で実はとても偉いエイリアン。
ここで話してても埒開かんわ!直接和平交渉してもぎ取ってくるわボケナスゥ!って言って本当にとってきたエイリアンの英雄。
穏健派のトップ。
エイリアン国家は三頭制で、穏健派、過激派、中立派が合議しながら国家運営している。
の、だが。
結局運命の奴隷にされたことには変わりない。
しかしそれでもこいつを筆頭とした穏健派は「やめようよ!それ自分から首絞めてるって!」って言い続けてた。
中立派?
優柔不断でオロオロしてた、雑魚、実質戦犯、カス。