TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う 作:蓋然性生存戦略
「「おんぎゃあああああああ!!」」
「ぎにゃああ〜〜!!忙しいよぅ〜〜!!」
「我が家はまだマシらしいがな」
「でしょうね!!」
(書類上は)20歳になりました今日この頃。
ボクとヒイラギはついに母となりました。
どうやったかって?
それはその、こう、察せ。
んでまあ産まれたのは男の子と女の子。
男の子にシオン、女の子にアヤメと名付けました。
限りなく誕生日は近いけど双子ではない。
察せ。
だってヒイラギが大丈夫っていうから……。
実際ボクよりもピンピンしてるの納得いかねえ〜〜。
無敵かよ。
「おむつ?」
「空腹だろう。匂いがしない」
「りょっかー。ご飯ですよ〜」
はぁ〜忙しい忙しい。
アジトの中は使えないし。
部屋の内装も変えるの間に合ってないし。
シオンもアヤメも立派に産まれたから重くて落としそうで怖いし!!
「「あぅ」」
あ〜、でも可愛い〜〜。
ママでちゅよ〜。
前世が男だった?
知るか、ボクはママだぞ!!
「すまんな」
「代わりに力仕事任せちゃってるでしょ」
「とはいえなあ。疲れてないか?」
「まあ、ちょっとね。夜は代わってくれると嬉しい」
「もちろんだ」
とはいえ疲れるものは疲れる。
その上配信もしているのだ。
そりゃ疲れるさ。
あ、視聴者の反応?
面白かったよ。
『どうやって作った?!』
『こいつらついにやりやがった』
『医学部の者なんですが、その、詳しく……』
『その道の研究者なんですけど、ちょっとお話聞かせてもらっていいですか?』
『ちょっとだけ現実的なラインの現状不可能を可能にするのやめてもらっていいですか』
『俺は考えるのやめた。赤ちゃんが可愛いことだけわかればいいんだ』
『ヒイエソの子……あかん遺伝子が強すぎる』
『テリちゃんは知ってるよな、流石にな、そうだと言ってくれ』
『医学界を揺らすのやめてね』
などなど。
当然企業秘密です。
言うわけがないんだよな。
「ほんと、ボクらがこの生活で良かったよ」
「全くだ。正直甘く見ていた節はある」
「んね。あ、シオンそれダメ!あぶねー……片付けなきゃ」
でまあ、色々ありまして。
ちゃんと病院で産んで戸籍作って検査して。
なんかね、そのね。
色々あったね。
『この子達異能に覚醒する確率めっちゃ高いですよ』とか。
『ご飯の量気をつけてあげてくださいね。今めっちゃ重いですよ』とか。
『ようヒイラギ!おめでただってなあ!飲もうぜ!!』『飲むわけないでしょうが先輩!!』とか。
なんかひっきりなしにイベントが起きた。
そういえばお酒……。
まあいいか!
機会があれば味わおう。
「アヤメはすっかり落ち着いちゃって。ママの胸が安心するんか〜?」
「あぅ!」
「こいつ言葉を理解してるんじゃなかろうな」
「あぅ?」
「まあよかろう!シオン〜、お願いだからママを叩かないで〜、痛くはないけど苦しいぞ〜」
「だぅ!」
何がまずいって衝撃で取り落としそうなのがまずい。
うぉぉぉお!意地でも落とすもんか!!
もう直ぐお昼寝タイム、ひと息つけるはず……!
「満足したか〜?それじゃシオン、アヤメ。一緒にねんねしようね〜」
「あぁう!」
「あうあ!」
「ダメでーす」
全く。
髄液くんの手も借りたい。
まだおねむの時間じゃないと言わんばかりに逃げ出しやがる。
愛いやつめ、逃げられると思うてか。
「うりうり〜、ダメだかんなー」
「「きゃっきゃ」」
まあこのまま疲れさせて眠らせよう。
オラ、睡眠導入(物理)!!
それから十数分後。
やっと寝た。
全く、わんぱくだぜ。
ふぅ。
疲れた。
ボクも一休み……zZ。
「エソラ、来月の……いや、後でもいいか」
エソラと共に眠る我が子達。
二人とも、穏やかな寝顔だ。
遂にもうけた私たちの子は、無事に生まれてきてくれた。
あとは無事に育ってくれればそれでいい。
とはいえ、だ。
「妻と子供達が眠っている手前、あまり手荒なことはできないんだが……」
『そう身構えないで。敵意も害意もないの。えっちゃんがちゃんと幸せなのか、この子達を通して見てるだけだから』
「キミが蘇れば、話は早いと思うがな」
『それができる勇気があれば、私はまだ生きてたと思うよ』
クスクスと笑いながら、エソラ、シオン、アヤメに取り憑いている亡霊は言った。
その亡霊は、エソラそっくり……つまるところ、幻楼院リンカだった。
『私は生きるのが怖い。願望器として産まれて、人として目覚めてしまった時から、私はずっと怖いんだ。その恐怖は、えっちゃんが頑張ってくれても拭うことはできなかった。そもそもえっちゃんも、この力は怖かったみたいだし』
当時幼かっただろうに。
そこまで考えが及んでいたこの少女は、本来天才と呼ぶべき思慮を持つ子だったのだろう。
それゆえに、理解して、自ら死を選んだ。
「今はもうキミを脅かす存在はいない。それでもキミは戻ってこないのか?」
『うん。えっちゃんには、私に囚われてほしくないから。えっちゃんは、本当はどこにでも行ける渡り鳥。それを歪めてしまったのは私。私はこの
そして、今もこの少女は誰かを想い、自らを殺すのだろう。
私に、それを止める術はない。
どれだけ言葉を尽くそうと、この少女は戻ってこない。
「エソラは今もキミを想っている。それでもか?」
『うん。子供も出来たのに、昔のことで足を止めちゃダメ。私はえっちゃんを見守るだけで、幸せだから』
「……ならばいい。だが、エソラの前で姿を見せるというヘマはするなよ」
『うん、わかってる……子供の前にだけ現れる座敷童子。それでいいの』
そんなキミを救える世界であったなら、どれほど良かったことか。
私は無力だ。
「……私はな、キミに対して複雑な感情を抱いている」
『うん』
「だが、それでも一つ確かなことが言えるとすれば、キミがいなければエソラは産まれなかった。だから、ありがとう。キミにとってその生が望まぬものだったとしても」
『ううん。私もね、えっちゃんといる間は幸せだったんだ。だから、最後は自分で死を選んだけど、要らない人生ではなかったよ』
「そうか……うちの子達と、よろしく頼む」
『うん。えっちゃんを、幸せにしてあげてね』
「ああ」
リンカの亡霊は、そう言うと消えて行った。
今は必要ないという判断だろう。
この子達を通して、と彼女はいっていた。
ならば今も見ているのだろう。
私はブランケットを持ってきて、エソラと子供達にかけた。
ゆっくり休んでほしい。
キミたちが健やかであれば、私が他に望むことはないのだから。
・リンカゴースト
遂に工房から化けて出てきたオリジナル。
子供達が産まれたので最終セーフティネットとして顕現。
やっぱり蘇る気はない。
エソラファースト、エソラに幸せでいてほしいと言う想いの権化。
ヒイラギが本当の意味でエソラを泣かせたら戦争が起きる。
ゴーストでもやることはやれるんです。
この事実を知ったら《テリトリア》は泣く。