TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う 作:蓋然性生存戦略
いつも通り誤字報告助かりまする。
「……本当にやるのか?」
「許可は取ったしヘーキヘーキ」
「……私は止めたからな」
「なんだよぅ、何が問題だってのさ」
「およそ前提からして全て」
子供をもうけてから早15年。
時が経つのは早いね。
今日は授業参観の日で、ちょっとしたイタズラを思いついたのでやっちゃおうと思うのだ。
ボクじゃなきゃできないしね。
「根回しは済ませたのに」
「……まあ、良い。私は止めたからな」
というわけでレッツゴー!!授業参観!!
衣装ヨシ、変装ヨシ、根回しヨシ!!
さて、気付くかにゃ~~?
エソラの企みごとを、私は止められなかった。
勢いに負けたというのが正しい。
私が気付いた時には、既に遅かったのもある。
よりにもよって学校側……校長も面白がってノッてしまったのが全ての敗因だ。
どうしてこう、ノリが良いのが揃ってしまったのか。
エソラももうこちらで35歳、中身は50を超えた。
もう少し落ち着きを持ってほしいものだが……以前よりは落ち着いたか……。
ともあれ、授業参観へは、企みごとの都合上、別々で向かうことになった。
シオンとアヤメにどう思われても私は知らんぞ……。
予定しているのは3限目と4限目。
3がシオンで、4がアヤメだ。
兄妹に限らず、同年代の家族が同じクラスに配属されることは珍しい。
そのため、時間を分けて行うことになるのだが……。
の、だが……。
「(なぜ一緒に授業を受けるという発想になるんだ、エソラ……!!!!)」
エソラとの付き合いは長い。
もう27年にもなる。
それでも、今回のハジケっぷりは理解できなかった。
何がエソラを駆り立てたのか……。
流石に後ろの席で目立たない場所にいるが、それでも微かに存在感を放っている。
髪型を変え、野暮ったいメイクで目立つ顔を隠し、メガネで目元を誤魔化し、声も持ち前の技量で変えて、バレない程度に厚底の上履きで身長まで変える徹底ぶり。
いつもの中性的で明るい雰囲気の少女然とした姿はどこにもなく、大人しめで儚げな雰囲気の文学少女へと変貌していた。
気合が入りすぎだろう。
しかも職員には全員話が通っているという。
一体全体何が起きているというのか。
「シエル=ゲメールデさん、答えられますか?」
「はい」
指名までされて何とかなるその技量は別の場所で生かしてほしい。
無駄に洗練された無駄な技術という奴だろうか……。
そうして3限目も終わり、教室を移動する。
休憩時間に、シオンとアヤメが寄って来る。
少し、シオンが不満そうだ。
「ママ、来るって聞いてたんだけど」
「え?うそ?ママが約束破るわけないじゃん」
「ホントだって」
ああ、やはりか。
私は天を仰いだ。
こうなるのは分かり切っていたというのに。
世間一般では、我々の家族仲は良すぎると言ってもいいくらいに良い。
その分、子供たちの親への期待は大きいものだ。
エソラ……。
「……無力な私を許してくれ」
「お母さん?本当に何かあったの?」
「ママに何かあったとか?」
「いや、そういうわけではない!ただな……いや、あとが怖いな……」
「どうしたんだよ本当に」
「お母さんがかつてないほど弱弱しい」
「まあ、なんだ……エソラの方から話してくれるだろう、たぶん」
「大事が無いなら良いんだけど……」
「とりあえず、ママは無事なんだね?」
「ああ、それは保証する」
「ん、分かった」
「それなら良い」
……二人とも、良い子に育った。
それに全力で甘えているエソラは……あとで言っておかねばならんな。
「すみません、通していただいても?」
廊下で話していると、生徒の少女から声が。
少し場所を取り過ぎたか。
そう思って振り返ると。
「ああ、すまない。今道を空け……!?」
「あ、ごめん。お母さんこっちこっち」
「舌でも噛んだ?」
エソラ?
バレなかったからと何を大胆に行動しているんだ?
「すみません、ありがとうございます」
「……あんな子いたっけ?アヤメ覚えてる?」
「……さぁ?うちのクラスに入って行ったけど」
シオンやアヤメにも、違和感を持たれているだけで済んでいる。
凄まじい変装・偽装技術としか言いようがないが、こんなことに使わないでほしかった。
「……そろそろ時間じゃないか?」
「確かに。それじゃ、また後でね、お母さん」
「ああ。シオンも、余り不貞腐れないでやってくれ。怒って良いとは思うが」
「ふーん?何かあるんだ。お母さんがそう言うなら信じるよ」
「すまんな……」
本当に後で謝るんだぞ、エソラ……!!
「で、放課後になったわけだけど」
「ママ見えなかったね~……」
「な~。お母さんの言い草的に、来てはいるんだろうけど」
「どこから見てたか、だよね」
放課後。
二人は保護者が連なる授業を終えて、帰路についた。
いつもと異なるのは、二人の少し後方に、見慣れない少女が同じ道をたどっていることだけだ。
「ねえ、なんでついてくるの?」
「家がこっちなものでして」
「ふぅん……?へぇ?」
「見ない顔だけど、どこのクラスのどこの子か言ってもらえる?」
二人は、不審な少女に対し、警戒心を抱く。
いつもの帰り道は、本来なら人がいないはずなのだ。
持たされたお守りの効果で。
故に。
お守りを突破する何者か、という状況である。
「……」
「だんまり、ね。アヤメ」
「もうやってる。反応が無い」
「嘘でしょ?」
「逃げるよシオン!!」
「おっけぇ!!」
持たされたお守りアイテムの内、一つが反応しない。
家へ直通ワープするはずのアイテムは、しかし反応しなかった。
「……対策済み、です。大人しく捕まってください」
「アヤメ、これ異能使ってもいい奴だよな!?」
「これでダメだったら化けて出てやるって!!」
「「《
ならば選ぶは逃走。
脱兎の如き逃走である。
シオンはアヤメを抱えて走り出す。
「影縫い、止めて」
「アヤメ!」
「ケラウノス・ミニ!!」
少女から影が伸びて襲い掛かる。
実体のある影。
明らかに捕まるとマズそうで、アヤメは即座に劣化に劣化を重ねたケラウノスで迎撃を図る。
その対応は間違ってなかったようで、光に弱いらしい。
伸びた影は黒を失って朽ちていく。
「良し、逃げ!」
「合点承知!!」
その様子を見て、逃げる速度を上げるシオン。
異能のおかげで大幅に上昇している身体能力で、家まで駆け抜けられれば。
と、思っていたところで。
「うんうん、良いね。オッケーとしましょう」
「「え?」」
「あ、ポチッとな」
聞き覚えのある声がした。
瞬間、視界が切り替わって捕まえられる。
「見てたぞ~~、やっぱり成績は良いんじゃないか~~」
それは、もう一人の母、エソラの声。
一見してエソラではないその少女から、エソラの声がする。
「え、ママ?」
「ちょっと待って?」
「にしし!サプラァイズ!!驚いたかなあ?」
メガネを外したその顔は、確かにエソラの物だった。
悪戯が成功した子供のような顔で、満面の笑みを浮かべ……二人の子供の拳骨を受けた。
「んぎゃ!?」
「驚いたよッ!!主に悪い方向で!!」
「お母さんが言ってたのはこういうことね」
「え、あ、ちょ」
まるで捕まった宇宙人のように、両手を握られて連れられるエソラ。
どちらもエソラの身長を越しているため、微妙に腕が上がる。
「えっと、二人とも?」
「お母さんは怒っても良いって言ってたから」
「ちょっと悪ふざけが過ぎたね、ママ」
「あっと、えっと、その」
「来てくれてたことは嬉しいけど発想が斜め上過ぎる。なんで襲撃するのさ」
「なんでそうなるかな。本当にたまにママが分からないよ。普通にネタバラシして」
「……できそうだと思ったらテンション上がっちゃってェ……テヘ?」
「「ふん!!」」
「あんぎゃぁぁ~~~~~~~~~~~!!!」
子供二人、たまにはママに制裁を加えるのだった。
エソラ(35)、久しぶりにはっちゃける。
なお、先生方は元同級生が多かったのでノリノリだった。
エソラ「ってことをやろうと思ったんだけどさあ、流石にね」
同級生校長「面白れぇじゃん、やろうぜ」
同級生教頭「かまへんかまへん、うちが許す」
同級生担任「根回ししとくんで」
エソラ「良いの?やったーーー!!」
みたいなことがあったとか無かったとか。
あとそろそろネタがつきそうだからゴロゴロしながら天啓が来るまでアークナイツしようかなって。
ギリギリ1天井足りなくて涙目。