TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う   作:蓋然性生存戦略

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気が向いたので


後日談:エソラゴト

ある日の朝。

ボクは《テリトリア》に詰め寄っていた。

それは、たまたまあることに気付いたからだった。

 

「ねえ《テリトリア》。長年気付かなかったボクが悪いけどさ」

「なんだ」

「なんで堂々と外部協力者として《ガーディアンズ》のホームページにボクとヒイラギの名前が載ってるのさ」

「もう公然の秘密だからな」

「なんでちゃんとボクが《エソラゴト》として登録されてるのかな」

「一応、ヒーロー名が必要だったからな」

「あのさぁ!!」

 

そう。

《ガーディアンズ》のホームページに関係者として堂々と載っていたのだ。

《ブレイディア》と《エソラゴト》の名前が!!

なんでや!

ボクたち一般人の扱いだろ!表向きは!!

 

「いやまあ、言いたいことは分かる」

「じゃあなんでか聞かせてもらおうじゃないか」

「大人の事情だ」

「カス」

「言うな……民間からの問い合わせが殺到して苦肉の策なんだ……」

 

もう見慣れた哀愁漂う姿。

きっと親御さんも草葉の影で泣いているに違いない。

小じわも増えて、すっかり老けてしまった。

歴戦の老女といった感じで、これはこれで味がするけれど。

最近では、優しくしてあげようと思うのだった。

 

「……お疲れ。今度何か奢ろうか」

「時間があればな……」

「まだ仕事漬けなの?うちの子たちが20超えたから《テリトリア》ももう60近いでしょ?」

「言うな!!お前たちは良いよな、20年以上変わらない姿のままだ、クソッタレ!!」

「まあそりゃねえ……若返りのお酒あげようか?」

「要らん。後進が育たん、引退できん」

「相変わらず真面目なんだからぁ……」

 

まあ、ぶっちゃけ。

ボクももう40歳だ。

ということは《リーパー》こと四神くんも40歳なわけで。

世代交代の時ではあるか。

 

「お前らが緩すぎるんだ。いつまでその美貌を保つつもりだ?」

「さぁ?ボクもあんまり把握してない」

「全く……世間の評判も考えろ」

「まあ、流石に60超えたら何かしら考えるよ。ところで、うちの子たちはどう?」

「若きエースといったところか。入ってまだ2、3年だが、あの二人の活躍は目を瞠るものがあるぞ」

「流石うちの子たち。優秀だねえ」

「始末書も多いがな」

「なはは!」

 

ま、うちの子たちも上手くやってるようで何よりだ。

自立してっちゃったからねえ、今どうしてるかとか、近況を知る機会は減ったのだ。

ついでに色々聞いちゃおう。

 

「で、最近どーよ」

「どうにも、また犯罪件数が上がってるな。あの女の脱獄が原因ではあるのだろうが」

「いやぁ、一年前はビックリでしたね」

「まあ、30年以上大人しくしていただけマシか」

「それはそう。まあ、そろそろ飽きるとは思ってたけど」

 

まー、あの女が脱獄して大人しくしているわけがない。

実は去年、幻楼院リンネが脱獄しやがったのだ。

『いずれ曾孫に会いに行くわ』とかいう書置きを残して。

リンカを娘としてボクが孫、うちの子が曾孫ってか?

うちの子の曾祖母気取りかよ、土に帰れカス。

 

「お前の方でも追えないのか?」

「試したけどダメだった。一瞬なら探知できると思うけど、すぐ対策されて移動されるだろうね。ガン見されてる。参考までに、探知一回目がアセリア最北端。翌日二回目が旧ラセオ南部国境。移動速度が半端ないよ」

「それは追えんな……」

 

あの女ァ……何をどうやったらそんなことができるんだよ。

まあ、あの女の事だ。

深く考えたら負けである。

 

「目撃地点での調査によれば、《魔女の遺物》を探しているらしい」

「なんそれ」

「私も詳しいことは知らないがな……今では情報がほぼ残っていないのもある」

「何その聞くからに激ヤバなネタは」

「もう100年以上も昔の大事件だ。今は亡き極東連邦だが、以前は国連首位の大国だったんだ。それが、一度は傾きかけた大事件なんだが、不思議なことに情報が残ってなくてな。《魔女の遺物》というオーパーツが残されたことだけが情報として伝わっている。極東連邦の上層部が滅亡時に念入りに隠したらしいが……今となってはもう分らん」

「こっちで探して収容しようか?」

「どんな影響を及ぼすか分からん。遺物の内容もはっきりとは伝わっていないんだ。勘弁してくれ」

「ビビっちゃってもう……」

 

しかし、《魔女の遺物》ね。

なーんか嫌な予感がするけども。

なんとか、なれー!の気持ちでやります。

 

「まあ、なに。お疲れ」

「お前くらいだ、今でもそんな軽く言ってくるのは」

「一人くらいは必要でしょ?」

「……まあな」

「急にデレるなよ。ホントに参ってたりする?」

「バカ言え。生涯現役だ」

「引退しろバカ」

 

全く……歳を考えろよな。

お前ももう色々とさ……。

ボクやヒイラギが言えた義理ではないけども。

 

「《フィクシオン》と身を固めたのに子供も作らんでまあ仕事に一緒に邁進しちゃって」

「そういう家庭もあるということだ」

「否定はしないよ。まあでも、二人の子供がどんな風に育つかは興味あったかなあ」

「なに、ひねくれたガキが一人産まれるだろうさ」

「絶妙に否定できないのやめてね」

 

やれやれ、こいつは根っからのワーカホリックだ。

今更言っても聞かないよね。

 

「で、話変わるけど。最近暇でさ」

「仕事を寄越せと?どの口で先程文句を言いに来たんだお前」

「この口~~。ま、連絡くらいほしかったってハナシ」

「ヒイラギにはしたぞ」

「なんですと」

 

じゃあなんですか。

ボクだけ知らなかったってことですか。

そんなことある?

 

「まあいい。ちょうど良いヤマが一個ある。現場検証の結果、根深い麻薬犯罪のようでな、捜査が難航しそうなんだ。ヒイラギを護衛につければちょうど良いだろう」

「わ~お、お誂え向きィ……」

「正直、来てくれて助かった」

「しっかたないにゃぁ~。ギャラはいつも通りで良いよ」

「なんだ、特別ボーナスも出そうかと思ってたんだが」

「い~よ別に。《ガーディアンズ》が後進の育成に集中できるようにしたいからね」

 

ボクだってまあ、それなりにヒーロー仕草が染みついた。

思うところはあるわけで。

なんでも、今では幅広く人気らしい。

プリキ〇ア枠か?

まあ、災害現場で場を和ませるためにマジックショー(迫真)をしてたりするけど。

年齢ネタはもう諦めた。

もう40だからね……ロリババアなんてまあ事実になりつつある。

 

「そう思うなら後進の育成を手伝え」

「ボクもヒイラギも参考にならないでしょうよ。それこそ育成マニュアルが歪み切るよ」

「クソ、ぐうの音も出ない」

「あっはは、分かってんじゃん」

 

そして、ボクたちは後進の育成に直接手を出さないことにした。

理由は簡単、ボクたちがいなくなった後の育成が歪むからだ。

それは臨時講師を経て得た教訓。

社会の歯車は、遍く人々で回さなければならない。

ボクたちみたいなイレギュラーが関与しちゃいけないのだ。

え?《テリトリア》?

彼女も分かってるさ、その辺はね。

それに、還暦も近いしね。

引退も目前、彼女なりに引き継ぎも進めている。

生涯現役と言いながら、まあ引き際を分かっている。

今がチャンスなのだ、《テリトリア》がいなくなっても立て直すことができるのは。

ボクとヒイラギがいる間に済ませてしまいたいのだろう。

 

「しかし、当時の上層部トップも勇退だの引退だので少なくなっちゃったよね」

「そうだな……だからこそ、今のお前たちに危機感があるわけだが」

「引継ぎも難しいもんねえ。そのうち狙われるようになっちゃうのかな?」

「私が生きている間はさせんよ。その後は自力で何とかしろ」

「無茶言うぜ、内政手腕トップがよ」

 

いずれにせよ。

ボクたちの平和な生活も、色々と考え直さないといけないらしい。

絵空事にならないようにしないとね。

 

「《テリトリア》、ギアスを更新しようと思うんだけど」

「構わん。草案はあるか?」

「一応ね」




・《エソラゴト》
ひっそりと公式化していたヒーロー。
30年以上能力詳細が不明なままの謎のヒーローである。
とある考察勢最古参は気付いたが故に沈黙を保った。
難事件現場にのみ現れ、救助活動が必要な場合は子供を元気づけるためにパフォーマンスをすることもある。
厳密には《ガーディアンズ》所属ではなく、外部の特殊役職みたいなもの。
たまにフェスなどにも現れ、でっかい花火などをぶち上げては場を盛り上げてくれるエンターテイナー。
最近シンガーとしてもデビューしたらしい。
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