TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う   作:蓋然性生存戦略

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多分気付いてる人は気付いていたと思いますが……第三部、始めます
ぶっちゃけ短編書くつもりでこの作品始めたんですよね。
こんなに長くなると思ってなかったし、魔女事件を別作品として書き始めることになるとは思いませんでした。
というわけで新作書いております。
とはいえ、こっちが優先なので、あっちの更新頻度は目を瞑ってください。


第三部:《魔女の遺産》
第一話:TS転生ロリババアのワールドツアー


さて。

ボクはもう40歳を迎えた今日この頃。

40歳!?つまり精神はもう57年!?

もうすぐ還暦じゃん!!

ひぇぇ~~……ですがご安心を。

ボクの美貌は今でも全盛期。

ヒイラギももちろん、全盛期。

世の誰もが羨む不老長寿なのだよ……。

 

それで、ですよ。

なんでこんなおばさんがまた語り出したかと言えば。

とある話が舞い込んできたのが発端だ。

 

《ガーディアンズ》の本部で《テリトリア》と今のヤマに関して話していると、すっごいヨボヨボの爺さんが現れたのさ。

もう100歳越えてるんじゃない?というレベルのお爺さん。

《テリトリア》も急な話だったようで、ボクと顔を見合わせたのさ。

とりあえず椅子を勧めて、なにやら重要な話があるというので話を聞くことにした。

お目当てはボクだそうで。

なんで?

 

「突然訪問して申し訳ない……我々には、もう時間がありませんでな……」

「えっと、どなた?」

「大乱当時の旧極東連邦の国土防衛省の大臣だった方だ」

「ホッホッホ……今も覚えているとは、貴女も生真面目ですなあ……」

「少なくとも、私はあの時の英雄一人一人を忘れる気はありません。ボケるまでは」

「ホッホ……ボケは怖いですからな。話を戻します。それでですな。エソラさんに依頼したいことがあるのです」

「ボクに?」

「《魔女の遺産(ウィッチクラフト)》という存在はご存じですかな?」

「そういえば、この前《テリトリア》が話してたよね」

「ああ。100年以上昔に起きた大事件で産まれた、オーパーツと聞いていますが」

「そうです。我々は、それの破壊をお願いしたいのです」

「破壊!?」

 

というわけで。

なんかまた物語が始まりそうなんですよ。

平和な暮らしis何処~~~!!!

断るという手もあった。

だがリンネとかいうカス女が関わって来そうだし、ヒイラギにも連絡して、万全の状態で引き受けることにしたのだ。

 

「で、その《魔女の遺産》とやらはどこにあるんだ?」

「それが大臣さんでも分からなくなっちゃったらしくて。当時極東滅亡のごたごたで引き継ぎも満足にできなかったんだってさ」

「それは……」

「で、異能とはまた別の力で厳重に封印されたらしくって、なんとボクが最大出力でレーダーを作っても、誤差5㎞半径の大体の場所しかわかりません」

「それは……凄まじいな」

「なので大体から、捜索半径を縮めて出力を更に上げたレーダーで探していきます」

「君も凄まじいな」

 

ボクのアイテムが一発で通らないとは。

極東連邦め、どれだけの厄ネタを隠しているんだ。

しかもこれ複数ですよ、複数あるんですよコレ。

バカなの?バカじゃないの?

こんなものが複数も?

なんて恐ろしい国だったんだ、極東連邦。

しかも何が恐ろしいって、こんなものが出てくるような大事件を独力で収めたのが何より怖ろしいよ。

極東の治安維持組織こわぁ……。

当時ってヒーロー組織もロクにない時代でしょ……?

こわぁ……。

 

「それで、場所は分かったのか?」

「反応は六つ。それぞれイセプタ、旧極東、アスタロレオ、カルメット。で、残りの二つが旧ラセオにある。多分反応的に、残り二つは同じ場所にあんのかな」

「飛び回ることになりそうだな」

 

そうなんだよね。

世界中飛び回ることになりそう。

ていうか旧極東連邦とかボクたち以外で誰が行けんねん!!

 

で、そうそう。

なんで破壊したいかってハナシをしてなかったね。

なんでも、《魔女の遺産》とやらは相当危ないブツらしい。

遺産は全部で七つ。

そのうち一つは大乱決戦で消費され、残っていないそうだ。

レーダー通りだね。

 

「《非業の天命》、《夢想の黒猫》、《堕落の救世》、《鮮血の恐怖》、《狂信の御使》、《暗澹の神座》。まあ大仰な名前がついちゃって」

「どれも名前負けしていないらしいが……」

 

消費されたのは、《迷妄の境界》。

指定した範囲の任意の存在を、永久に迷わせる、概念迷宮作成オーパーツ。

ワープだろうが魂だろうが関係なく迷わせるそうだ。

そんな怖いもん運用したの……?

もうなくなっててよかったぁ……え、これと同レベルのオーパーツが後六つ?

馬鹿かよ、そりゃ壊したいわ。

概要聞いただけでも危険物取扱ランクSランクだっての。

 

「最優先は《暗澹の神座》、もしくは《夢想の黒猫》。こいつらはトップクラスにヤバイ」

「どうヤバいんだ?」

「結論から言えば、世界が滅ぶ」

「もう少し具体的に」

「まず《夢想の黒猫》。これは端的に言えば『ある程度なんでも願いが叶う』アイテムだ。ボクでさえ、生み出すことのできない、万能の願望器さ」

「それは……混乱が起きるぞ」

 

そう。

こんなものが世に露見すれば混乱が起きる。

ただ、ボクが危険視しているのはそんなちんけなもんじゃない。

 

「でも、問題の本質はそこじゃない。《魔女の遺産》というだけあって厄ネタも厄ネタ。発動したら最後、不可逆な因果干渉が発生して、代価として何かを失う。大乱決戦時、極東連邦はこれを使ってエイリアン大艦隊を集結させたけど、その代償が極東滅亡だ。もし極東がこうなることも分かっててやってたのなら、極東連邦という国はただの大国じゃない。世界の裏側の事情もある程度把握していると言ってもいい」

「そこまでか?」

 

断言できる。

間違いなく。

極東連邦という国は、この世界のどんな国よりも厄ネタに溢れていると言っても過言ではない。

100年前の魔女事件とやらも、世界の根幹に触れる出来事だったかもしれない。

なにせ。

 

「ああ、断言できるね。そもそも、こんなものの概要が残っているのもおかしいんだよ。ヒイラギ、ボクは人間は愚かというスタンスは変えてない。ヒイラギと結婚して20年以上がたつ今もそれは変わらない。それを踏まえた上で言うよ。こんなものが残っているのに、世界がまだ滅んでいないのは絶対におかしい」

「……」

「《暗澹の神座》もそうだ。これは、言ってしまえば最後の手段。ヤケクソの道連れ自爆スイッチだ。代価と等価値の存在を消し飛ばす。これはただの消滅じゃない。存在そのもの、概念すらも場合によっては消える。世界という絶対の記憶から消えてしまうんだ。これで消し飛ばされた存在は、イレギュラーアイテムであっても二度と蘇ることはない」

「キミが呼び出したアイテムですらもか……?!」

 

こんな危険物を七つも残した魔女って奴は一体何なんだ。

そしてこんなものを狙い始めたリンネとかいう女、マジで厄介過ぎる。

 

「そうだよ。対価次第では、世界そのものが無かったことにされるかも」

「それは最優先だな……どれがどこにあるかは分かっているのか?」

「モチのロン。恐らく二つはどっかのクソ女に回収されているけれど、その二つは今あげた最優先破壊アイテムじゃない。とはいえ、危険なことには変わりない。何せ、回収に走っているであろう人物がアレだからね」

「……そうだな」

「問題は、この残り二つの所在、いつまで見れるかってとこなんだよね。アジトの外じゃガン見されている以上、行動を起こしたらすぐバレる……即座の回収は諦めるしかないかあ」

 

ちなみに、回収されていると思われる《魔女の遺産》は、《非業の天命》と《鮮血の恐怖》。

どっちもまあまだマシな部類ではある。

マシなだけではあるけど。

 

「いつ出発する?」

「今すぐにでも。正直焦りすら覚えてる」

「……そうか。すぐに支度をしよう。飛行機のチケットは要るか?」

「ンなもん使ってる余裕はない。許可は取ったし、愛機で行く」

「……アレか」

 

ボクの愛機、《スレイプニル》。

陸海空対応・八輪駆動武装装甲車である。

いつも使うわけではないが、ヒイラギの全力ダッシュには劣るも、それに準じる速度で、ヒイラギに疲労を与えることなく、ヒイラギを現場に届けるために呼び出したものだ。

つまり。

とても速い。

 

「分かった。二人には連絡しておくか?」

「メッセ残しておくくらいで良いよ。あの子たちももう子供じゃないんだから」

「それもそうか」

「というわけでガレージに先に行く。備蓄の確認もしないと」

「分かった」

 

とりあえず急げ急げ。

あんなものこの世界に残せるか。

ボクだって、例外を除いて、死ぬときは全てのアイテムを消し飛ばすつもりだというのに。

リンネに悪用される前に消し飛ばさないと……!!

 

 

 


 

 

 

エソラは、どうにも焦っている。

聞けば納得ではあるが……幻楼院リンネが関わっているのもあるだろうな。

奴が脱獄してからはこう、なんだ。

表面上はいつも通りだが、どこかピリピリしていた。

まあ、さもありなん。

奴には辛酸を舐めさせられたからな……。

 

それに、だ。

子供たちに危害が加わる可能性もある。

エソラは自分の大切なものが関わると、暴走しがちな傾向にあるからな。

臨時講師をしていたころから20年経った今でも、それは変わらないのだ。

歳を経るにつれて、多少は落ち着いたが。

 

「準備はできたか?」

「もち。やはりイセプタか、いつ出発する?」

「?今では?」

「いや、無茶を言ったね。じゃあ、行こう」

「……ああ」

 

全く、面倒な女に惚れてしまったし、惚れられてしまったものだ。

だがまあ、私がいれば問題ない。

あとは《魔女の遺産》とやらを使われなければどうにでもなろう。

エソラ自慢のスレイプニルに乗り込み、イセプタに向かう。

 

「許可はどこまで取ってあるんだ?」

「全速飛行許可まで取ってある」

「それはまた随分だな」

「それだけの緊急事態ってこったねえ……」

「《テリトリア》も慌てているようだな」

「ボクやヒイラギだけでも手一杯なのに、《魔女の遺産》まで襲い掛かったら、それこそ《テリトリア》が死んじゃうよ」

「……彼女には長年無茶をお願いしているからな」

 

イセプタに到着するまで、1時間。

少し仮眠するか。

 

「ヒイラギ、仮眠する?」

「ああ、少し眠らせてもらう」

「オッケー。運転は任せて。最速安全で到着するよ」

 

エソラ自慢の装甲車だ。

エソラが運転している以上、万が一もないだろう。

生半可な襲撃程度、追い返せるのだから。

 

だが、そうだな。

油断していたのかもしれない。

相手は、あの幻楼院リンネだということを、すっかり忘れていた。

 

――Booooooooooooooooom!!

 

「ッ!?エソラ、何が起きた!!」

「所属不明戦闘機複数による襲撃!!くっそ、どう見てもどこの国のモノでもない新型!あの女の仕業じゃねーか!!よりにもよってイセプタの領空に入ってから仕掛けて来るとかふざけやがって!!」

「出るか?!」

「先にイセプタ空軍に連絡!!アセリアからボク達が緊急渡航することは話が通っているはず!シグナルも出してるから話をすれば分かってくれると思いたい!!」

「番号は!」

「出してある!!」

 

前途多難とは、これの事を言うのだろう。

 

「チッ……チャフもフレアも焚いてんのにミサイルが追ってくるのはどういう理論なんだ。ちょっと運転荒くするよ!!」

「撃墜されるなよ!」

「ハッ!そんなヘマするかよ!!」

 

私たちの旅は、幸先が良くないようだ。

 

 

 


 

 

 

「やっぱり、動き出したわね」

 

旧ラセオ廃都市部。

その深層部で、かの悪女は妖しく笑う。

 

「30年以上も大人しくしておいてあげたけど……やっぱり、こうやって暗躍するのが楽しいのよ」

 

幻楼院リンネ。

かつて世界の頂点に立っていた科学者にして、今は大監獄から脱獄した大罪人。

エソラとヒイラギにとって、宿敵となる存在。

エソラが最凶、ヒイラギが最強であるならば。

この女は、最悪である。

 

「アハ、アハハハハ!!さぁ、さぁ!踊ってちょうだい、楽しんでちょうだい!!私はもう、アナタたちとの闘争でしか楽しめないわ!!」

 

嗤う、哂う、呵う。

リンネは笑い続ける。

獲物を見つけた獣のように。

 

「ああ、そうだ。いつかは曾孫に挨拶しないと」

 

彼女には、あらゆるものが見える。

だが、そんな彼女にも見えないモノがある。

それは少ないようで多く、多いようで少ない。

そのうちのひとつは、細かな運命。

大まかな動きを見ることはできるが、特定個人レベルまで見ることはできない。

それは、自分も例外ではない。

 

故に。

楽しくて仕方がない。

己の出来が良すぎるが故に、分からないことの方が少ない。

分からないことがあると嬉しくて仕方がない。

 

そして、結末が予想できないあの二人の存在が、なによりも愛おしい。

それがたとえ、負ける可能性の方が高くても、彼女は挑む。

ああ、そうだ。

知ってしまった、知ってしまったのだ。

常に追われ、挑まれる側だった彼女が。

挑むということを。

挑戦者という立場を。

追いかけるということを。

 

「楽しくしましょ、ヒーロー?」




というわけで始めます、第三部。
本作世界線、クソデカ厄ネタアイテム、極東連邦の遺産、《魔女の遺産》編を始めます。

・《魔女の遺産(ウィッチクラフト)
魔女と呼ばれた異能力者が生み出した厄ネタアイテム。
七つあるうち、一つは消滅したが、残り六つは現存。
そのうち二つはリンネの手に渡っている、クソがよ。
こんなものを抱えてた極東連邦とかいう厄ネタ国家。
エソラは二つが最優先と言ったが正直全部ヤバい。
下手に使われたら簡単に国どころか世界がヤバい。
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