TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う   作:蓋然性生存戦略

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第二話:TS転生ロリババアの強硬手段

推定、幻楼院リンネの襲撃。

チャフもフレアも焚いてるのに追ってくるミサイルとかいう謎技術を見せやがって。

こっちだって伊達に神馬の名を冠してるわけじゃねーぞ。

 

「このスレイプニルは、あと3回変形を残している……!!」

「何故使わない?」

「イセプタから許可下りるまでは被害を考慮しないといけないのでェ……連絡ついた?」

 

早く連絡ついてくれると嬉しいんだけど!!

ボクのマニューバアクロバット飛行でも誘導ミサイルを避け続けるのは面倒だ。

 

「どうやらイセプタも混乱に陥っているようだ。通信もままならん」

「チッ……地上でも何か起きてるのかな」

「どうやら着陸予定だった空軍基地が襲撃されているようだ。窓から見えた」

「クソ、あの女らしい用意周到さだぜ……!!」

 

どうやら地上も地上で面倒なようで……!

 

「この際許可とか言ってられないか……スレイプニル、高機動広域殲滅形態へ移行!ぶっちぎるぜ!!」

「……またそんな物騒な機能を盛り込んで……」

「浪漫だよワトソン君」

「ワトソンではないが」

 

この際致し方なし。

友軍指定、イセプタ空軍。

排除対象、所属不明機甲戦力。

マルチロックオン、ふぁいあー!!

 

「はっはー!!いかに幻楼院リンネといえど、ボクのアイテムに勝てるわけないんだよォ!!」

「またそうやってフラグを……」

 

空は潰した、あとは地上!!

通常形態に移行、地上へ強行着陸!!

頑丈さと突破力で一気に蹴散らす。

と同時に周波数を合わせて一斉通信。

 

「こちら《エソラゴト》及び《ブレイディア》!!緊急渡航許可の成否は置いといて、イセプタ空軍へ!援護は必要か!!」

『客人か!不甲斐無いことだが頼む!一機でも暖機済みであればこのような無人機甲部隊如き、蹴散らしてやるモノを!!』

「《ブレイディア》を向かわせます!また、撤退が済んでいない部隊は当機を用いて撤退を推奨!座標を求む!!」

『ありがたい!非番だった者達が動けずにいる区画がある、頼めるか!?』

「お任せを!ヒイラギ、ゴー!」

「任せろ」

 

ハッチが開くと同時、ヒイラギが飛び出す。

このアルスガル上において、ヒイラギが負けるはずがない。

重圧が酷い戦線から優先して突撃し、斬り伏せていく。

最近ヒイラギ、12.7mm弾ぐらいじゃ傷付かなくなったからマジで無敵なんだよな……。

衝撃は受けるから避けるみたいだけど。

 

さて、非番の兵士たちは、と。

あそこだな。

屋上の物陰でやり過ごしているか。

スレイプニルで直接乗り込んで避難開始だ。

 

「オラァ!!乗って!!」

「助かった!」

「定員は!?」

「ンなもん全員乗れるわ!!この装甲車は80㎝列車砲を受けたって無傷だ、乗車時間は気にするな!!」

「でたらめな奴め!頼りにしてるぜヒーロー!」

「急げ急げ!!」

 

非番兵士を全員詰め込んで離脱。

前線を指揮している司令部へと運んでいき、合流させる。

 

『感謝する、ヒーロー《エソラゴト》』

「礼には及びません。それで、いつから襲撃を?我々が来る前から戦闘が行われていたようですが」

『レーダーでそちらを感知してすぐ襲撃を受けた。戦闘開始から8分といったところだ。すでに近隣の駐屯地や基地に応援を要請してはいるが、最速であと30分はかかるだろう』

「どうなされます?」

『お二人が手を貸してくれたおかげで随分と余裕ができた。あとは任せてもらおう。余り他国に干渉するのも褒められたことではありますまい』

「それもそうですね。ご武運を」

『ふっ。イセプタ空軍の勇姿を見せてやろう』

 

不意打ちから立て直せば、反撃も可能か。

頼もしいな、イセプタ空軍。

 

「ヒイラギ、戦線が安定したら退いて。あとは彼らに任せよう」

『だが……』

「ヒイラギ」

『……そうか。皆、あとは任せたぞ![応ッ!!]』

 

やっぱり、平和の象徴というか。

未だに勝利のシンボルというか。

仕草が抜けないよなあ。

 

30分後。

近隣の空軍、及び海軍基地から援軍が到着。

攻撃機による機関銃掃射で一掃された区域に、空輸で運ばれてきた援軍が続々と着地する。

 

「耐えきったね」

「ああ」

 

援軍が来れば、一掃など早かった。

ボクたちが動けばあっという間だったろうが、それはイセプタの誇りを傷つけることになる。

ボクたちはアセリア所属なのだ。

他国の力に頼りきりというのは、イセプタとしてもよろしくはないだろう。

アセリアとしても、他国に武力干渉するようなものだ。

外聞はよろしくない。

 

『《ブレイディア》、並びに《エソラゴト》。貴女らの援護に感謝する。貴女らがいなければこの基地は陥落していたに違いない。奇跡的なことに、重傷者はいるが死者はいない。我々は救われた』

「礼には及びません。良き隣人として当然のことをしたまでです。こちらこそ、突然の来訪に対応していただき感謝します」

『それこそ礼には及ばん。アセリア政府から直々に通達が来ているからな。むしろ謝罪したいほどだ』

「では、おあいこということで。我々は目的地までこのまま出立しますが、問題ありませんか?」

『ああ、ないはずだ。一応確認は取る。しばし待機してくれ』

「了解しました」

 

やれやれ。

幸先の悪いことだ。

勘弁してほしいね、全く。

 

「しっかし、どこでこんな資材を手に入れたんだか」

「奴の事だ、どうにでもなるだろう」

「悪のカリスマと言っても過言じゃないからねえ……その頭脳を売りにすれば引く手数多だ」

 

頭の痛い問題だね、全く。

 

『確認が取れた。問題ない、進んでくれたまえ』

「ありがとうございます。んじゃ行こうぜ!」

 

さ、だいぶ遅れたけど出発だ。

ゴーゴー!!

 

といったところで。

イセプタとはどんな国か。

砂漠が有名な国である。

つまりまあ、エジプトみたいな国だ、観光名所的には。

ただし。

ピラミッドがない代わりに、あのハロウィンの悪夢が……。

いやまあ、シルエットだけなんだけど……シルエットだけでもあんな芸術的なことになったりする!?

うっ、頭が……ボクだって元はマスター業してたんだ……絵で見るのと実際に見るのとでは話が違う……。

しかも、アレだ。

目的地がそこ周辺なのだ。

く、狂う!!

 

「エソラ、顔色が悪いが」

「チェラメジがちょっと苦手で……」

「目的地だぞ?大丈夫か?」

「大丈夫。ちょっと昔のことを思い出しただけだから」

 

ま、まあ?

ちょっとSAN値が減るだけだから大丈夫さ。

とはいえ、都市部も近い。

音速でかっ飛ばすのはできないな。

道に沿って自動運転で進もう。

その間にアレだ、もう一個のレーダー出さないとね。

 

ガサガサ、ゴソゴソ。

 

しかしまあ。

40年経っても気になることはある。

そう、ボクがやってたソシャゲや、連載してた漫画は完結したのだろうか。

マスターだったり先生だったりドクターだったり開拓者だったりしたので気になるところだ。

ボクが滅ぼさなければ、その先を見れただろうに。

おのれ幻楼院リンネ、ボクに地球を滅ぼさせるとは。

許さん、許さんぞ~~!!

 

「そういえば、今回破壊する予定の《魔女の遺産》はなんだ?」

「《夢想の黒猫》。その次の予定は極東の《暗澹の神座》」

「最優先破壊対象か」

「そ。んで、ここで悪いニュースです」

「なんだ」

「指定文化遺産チェラメジ内部に存在することが確定したよ。見て、このレーダー」

「思いっきり中だな」

 

はい。

チェ〇テピラ〇ッド姫〇城のシルエットを持つ指定文化遺産、チェラメジ内部に《夢想の黒猫》があることが判明しました。

ふざけやがって。

何をどうしてどう考えたら他国の指定文化財の中にこんな厄ネタアイテム隠そうってなるんだよ!!

極東って連中は異常者の集まりなのか!?

 

「一応私も極東の血が流れてるんだが」

「あー、すっごい納得したわー」

「エソラ?どういう意味だ???」

「15歳時点の覚悟ガンギマリなところとかすごい納得したわー」

「エソラ、キミは多分極東の事を誤解していると思う」

 

そうかな?

多分大体合ってると思う。

 

「まあいい。それで、どうやって入る?」

「これ一応極秘ミッションだからさあ。あーだこーだ説明していくわけにはいかなくてえ……」

「……」

「ヴィラン業、復帰です」

「はぁ~~……」

 

でまあ。

元ヴィランの本領発揮ですよ。

まあ任せてくださいな、現代科学がボクのアイテムに勝てるわきゃないんすよ。

へへへ……。

 

「他に手段は無いのか?」

「あんま時間ないしねえ、事が事だけにちょっとね、正攻法は無理って言うかあ……」

「ちなみにだが、リンネ対策は?」

「出発前に実は可能な限りメタって来てたんだけど、バレてるから多分意味ない」

「あの女は本当に……」

「というわけでイリーガルにクリミナルに行きます」

「リークという手を打たれる可能性は?」

「それはないとは言い切れないけど、多分してこない。今のあいつに社会を動かし切るだけのパワーがない。匿名のタレコミくらいしかできないはずで、マスゴミが裏を取ろうにもボク相手に取れるはずがない。20年前の騒ぎで報道にも責任が重くのしかかるようになった。そう簡単にはその手を使えるとは思えない」

「なるほどな」

 

というわけで、妨害があるとしたら直接的な暴力だと踏んでいるんだけど。

……そっちの方が怖いな?

指定文化財の破壊……あの女ならやりかねない……!!

 

「はぁ……仕方ない。うまくやるぞ」

「失敗できないねえ、うははははは」

「笑い事ではないぞ、全く」

 

 

 


 

 

 

『というわけでチェラメジに不法侵入してきた』

「……」

『すまない』

「分かっている……《魔女の遺産》自体が、秘すべき事項だ。イセプタ上層部に話が通っていたとしても、そう易々とはいくまい……こちらから口添えを頼むくらいが関の山だろう」

『世話を掛けるな』

「お爺様……縄張(ナワバリ)ツカサ国防大臣が訪れた時点で覚悟していたことだ。是非もない」

『そういえば、お前も極東の出だったな』

 

エソラとヒイラギがイセプタへと出立した日の夜。

時差があるためか、時間がおかしいことになっていたが、ヒイラギから連絡があった。

チェラメジに不法侵入した、という連絡だったが。

 

「よもやチェラメジ内部に遺産があるとはな」

『私も驚きだ。エソラも半分キレてたな』

「それで、首尾はどうだった」

『何事も無かったさ。どうやらイセプタ西部空軍基地での妨害が精いっぱいだったらしいな』

「だと良いが……エソラの様子はどうだ」

『……どうにも深刻そうな顔をしていた。一通り調査を行った後、破壊はしたが』

 

エソラめ、今度は何に気付いた。

また暴走でもされたら堪ったものではないが。

 

『なんだエソラ。なに?代わって欲しい?構わんが……』

 

そう思っていると、エソラから連絡が。

 

『《テリトリア》、聞こえる?ちょっとマズいことが分かったから手短に伝えるね』

「なんだ」

『《魔女の遺産》は科学の産物でも異能の産物でもない。スキルツリーが違うとかそういう次元じゃない、そもそもゲームが違うとか、そんなレベルで異なる技術体系で作り上げられた産物だ。ボクが言うのもアレだけど、この世に存在して良いものじゃない』

「本当にお前が言うのもおかしな話だが……何をそこまで焦っている」

『……これらには、意思が宿っている』

「は?」

 

耳を疑った。

道具に意思がある?

フィクションでもあるまいに……だがエソラがこの場面で冗談を言う人間ではないことを知っている。

つまり、事実だ。

 

『しかも自発的に使わせようとしてくる。強力な催眠の類だ、カウンターアイテムが無かったら危なかったよ。うっかり願い事をするところだった』

『おいエソラ、それは聞いてないぞ』

『今言ったからね。で、ここからが本題だ。如何に幻楼院リンネと言えど、完全に影響を受けずにいられるだろうか』

「……それは」

『影響をモロに受けるとは思ってない。けどゼロになるとも思ってない。事態は思ったよりもマズいかもしれない。遺産の破壊はボクたちが可能な限り進める。けど多分それじゃ遅い。あの女の捜索の強化をお願いしたい』

「分かった。人員を可能な限り回そう。各国とも連携を取る」

『お願い』

 

エソラをして、危険過ぎると断ずるそれらを巡る争いは、思ったよりも逼迫しているようだ。

どうにかして盤面を整えなければならんな。

私は《フィクシオン》に連絡を取った。

お互い全盛期などとっくに越えたが。

それでも、やれることはあるのだから。

 

「《フィクシオン》、私だ。ああ、ヒーロー名で呼んだということは、そういうことだ」




幕内(マクウチ) シキ
《テリトリア》の本名。
《フィクシオン》と身を固めたため、名字が変わっている。
以前の名字は縄張(ナワバリ)

極東出身、祖父に国防大臣がいるというエリート家系の産まれ。
ヒーローとして歩み始めたので極東のアレコレは聞かされていない。
多分祖父を腹パンすれば色々ボロっと情報が落ちるけどテリちゃんはそんなことしない。

《魔女の遺産》に意思が宿っているとかいうオカルトを聞かされて宇宙猫だが、それでも対応を止めなかった。
亡き母国はなんてモノ隠してたんだと気が動転しているが、長年鍛え上げられた手は寸分のミスもなく関係各所への通達文書を作り上げていた。

・チェラメジ
チェ〇テピ〇ミッド姫〇城と同じシルエットを持つ奇怪な建造物。
大乱を超えて残っている指定文化財であり、当然不法侵入は厳罰対象。
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