TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う   作:蓋然性生存戦略

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ギルガメッシュ・ネイキッド!?
いやまあ貴方しかいないでしょうが冠位じゃないって言ったじゃないですかー!!


第八話:TS転生ロリババアの大逆転

荒療治が必要だ。

私はそう考えた。

今回、エソラは酷く落ち込んでいる。

32年前、自らの故郷を灼いてしまった時と同じくらい、堪えてしまったようで。

言葉だけでは、持ち直すのに時間がかかるだろうことは、想像に難くなかった。

その上、時間がない。

どうにかしてすぐ立ち直らせるにはどうすればいいか。

考えに考え抜いた結果、実にシンプルであんまりな方法が浮かんだ。

 

「エソラ、私と戦え」

「………へ?」

「言っておくが拒否権はない」

「ちょっと待ってねヒイラギ、ボク死ぬよ?」

「キミがそうやって泣きながら死ぬくらいなら私はぶん殴るが?」

「分カリマシタ、受ケテ立チマス」

 

ぶつかるしか思いつかなかったのだ。

次善策どころか下策であることは分かっている。

下手をすればエソラを壊しかねない。

 

それでも。

 

「《神話武装(ミシックウェポン)》も出せ。本気でやるぞ」

「……殺そうとしてる?」

「まさか。ボコボコにはするが」

「怒ってるよね、すっごく怒ってるよね」

「まあ、怒ってはいる。キミの情けない姿に」

「っ……」

「私を選んだ伴侶は、泣き寝入りで終わるような、弱いだけの人間じゃなかったはずだ」

「……でも」

「言い訳は聞かない。叩き直す」

「!?」

 

泣き続けるエソラを見るのは、嫌だった。

 

「ふんっ!!」

 

工房に着いて、まずは一発。

アイギスで防がれることを前提とした威力で殴る。

 

「んぎっ!」

「もう一発ッ!!」

「こ、のぉ!!」

 

ああ、やっぱり殴ってみて良かった。

涙で隠れていた感情が見えてくる。

怒り、怒りだ。

やはり怒りが、エソラをおかしくする。

今度は何に怒っている?

見せろ、全て。

何のために私がいると思ってる。

 

「泣いたって良い、振り返ったって良い。だがな、立ち止まる事だけは許さん」

「……」

「全部ぶつけて来い。全部吐き出せ。キミが思うより、私は強い」

「ざっけんな……いつ、ああなるか、ボク自身分からないのにさァ!!」

「では32年前の焼き直しと行こう。キミは負けて、私が勝つ。今の私は、ちょっと強いぞ?」

「ぁあ、ぁぁあああああああああああ!!」

 

待て、思ったよりも物量が激しいな。

対処できなくはないが。

エソラも成長していたというわけか。

はは。

 

 

 


 

 

 

「もしかせずとも、エソラとの面識は、お前が呼び出した時が初めてではないな?」

 

先の戦闘で、私が意識を手放していた時のこと。

その報告を聞いて私は、改めて一つ疑問を覚えた。

今迄は死人だと思って深く考えてこなかった。

だが、今は幽霊という形で眼前にいる。

ならば疑問は解消すべきだ。

 

幻楼院リンカという人間の、精神性。

20年ほど昔の一ノ瀬キリエと比較してみれば分かる。

幻楼院という環境下において、リンカは正しくない。

キリエが正しい。

 

そう。

自分から率先して逃げ出すような教育は、するはずがないのだ。

もし仮に、リンカが正しく何も知らない新生児であったとして、エソラを産み出して一緒に逃げるという手段が選択肢にあるかと言われれば、無い。

何故ならば、それは外を知らなければ到達しえない手段だからだ。

つまるところ、幻楼院リンカという存在は、最初から何かしらの認識を確立していた。

 

即ち、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『……そうだよ』

 

ああ、正直に白状するのだな。

潔いと言うべきか、正直というべきか。

 

「リン姉、それ、僕たちが聞いて良い話?」

『……聞かれて困るというわけじゃないけど』

「……まあ、ニュービーとはいえ、もう大人だ。エソラに関する極秘事項は伝えてもいいだろう」

「ママ自体が禁則事項ってのは、よく聞く話だけど」

「いずれはお前たちもそうなるがな。まあいい」

 

リンカがエソラとの面識が古くからあるというのならば。

先の暴走について、分かることがあるかもしれないな。

 

「エソラの雰囲気ががらりと変わったとシオンとアヤメから聞いている。心当たりはあるか?」

『……ある』

「ほう?」

『でも、どっちもえっちゃんなんだ』

「え、嘘。アレもママなの?」

『うん。我慢してたものを、一気に吐き出しちゃった状態が、あのえっちゃん』

「……再発する可能性があると?」

『まあ、うん』

「……」

 

マズいな。

程度はどうあれ、コントロールできないのならば……。

クソ。

 

『分かるよ。《テリトリア》の立場なら』

「……アレは一体どういう状態なんだ。詳しく教えて欲しい」

『そう難しい話じゃない。怒ってる』

「怒り?エソラとて普通に怒る時はあるが……」

『なんて言えばいいのかな。普通の怒りじゃないんだ。心の奥底に封じ込めた、どうしようもなくて封じ込めることしか出来なかった怒り』

「……行き場を失った感情の掃き溜めが、アレだというのか?」

『うん。ただ怒りを振りまいて手段を択ばないだけで、えっちゃんであることには変わりないんだ』

「何に怒っているんだ、あいつは」

『分からない。私が呼び出したときには、もう怒ってた』

 

それよりも問題なのは、エソラ自身ほぼ無自覚な可能性があるということだな。

ヒイラギと出会う以前のあいつのことは、よく知らない。

一番知ってそうな人物からも、よく分からないと返答が来た。

参ったな。

 

「以前から面識があるのに知らないのか?」

『私は……えっちゃんと最期を迎えたわけじゃないから……』

「……そうか」

『ヒイラギさんが来てから、それも鳴りを潜めたように見えてたんだけど……ああでも、20年前とか、シオンくんが《鮮血の恐怖》でやられたって聞いた時はおかしかったかも』

「「……」」

『あっ、二人のせいってわけじゃなくって……!!』

「いや、分かってる。けどなあ……」

「私たちまだまだ弱かったんだなあって……」

 

リンカが呼び出したときから、すでに怒りを身に灯していたとしたら、原因は前世にあるだろう。

……そう考えると、元凶っぽいのが私の目の前にいる気がするが、指摘するのは野暮だろうか。

まあいい。

大切な存在、というのは重要なワードだろう。

それらに何もなければ、エソラが暴走することはないと思われる。

おかしくなっていたというタイミングを考えれば、間違っていないだろう。

であればだ。

 

大切な存在の危機、もしくは喪失。

 

このあたりだろうか。

もし当たっていなくても、そう間違ったものでもないだろう。

これまでの事を考えれば納得がいくくらいだ。

 

「キミのせいじゃないのか?リンカ」

 

そこまで考えが行きつくと、ヒイラギが入って来た。

なぜか煤けている。

何をしてきたんだ。

 

「エソラは良いのか?」

「もうしばらくすれば復帰する。今回は酷かったな、32年前の方がマシだった」

「そこまでか……」

『……私のせい……それは……』

「どう考えてもキミが原因じゃないか?」

「ヒイラギ、私も指摘するのはどうかと思ったところなんだが」

「そんなことはどうでも良い。話は聞いていた。ああ、納得したさ。()()()()

『っ……』

「だが敢えて私は何も言わない。何も咎めない。()()()()()()()()()()()

『……ごめんなさい』

 

地雷原はもう一つあったようだな。

……胃が痛い。

 

それでも、話し合いは続けなければならん。

私はどうにかしてその場をまとめ、今後の方針を固めた。

 

 

 


 

 

 

一歩も動けない。

ちくしょう。

また負けた。

 

何があったかって?

 

ヒイラギに喧嘩吹っ掛けられてボコボコにされたんだよッ!!

ええそうですね!ボクはめんどくさい人間だから言葉で立ち直らせるには時間がかかりますからね!!

叩けば治るらしいですよ!

ふん!!

 

まあ、はい。

おかげで何とか持ち直したわけですが。

一歩も動けないけど。

 

一 歩 も 動 け な い け ど !

 

本当にボコボコにされたからね。

配慮とか一切ないからね。

死ななければ手加減でしょと言わんばかりだったよ。

まあ、ボクに文句を言う資格があるのか?と言われればないんですが。

 

アジトのベッドで寝かされたまま時間が過ぎてます。

……こうしてアジトで寝るのも久しぶりだな。

 

『ここがお前の秘密基地か。中々のものじゃないか』

「お前、数話前からシレっといるけどなんなんだよ」

 

また黒猫が現れた。

もう夢の中の存在じゃないというか、やたらと存在感を出してくるこいつは何なんだ。

 

『メタいなオイ。まあ、お前が真っ先に壊した《魔女の遺産》だが?』

「壊れたんならさっさと成仏してクレメンス」

『まあそう言うな。私がいれば御利益があるぞ』

「うさんくせー」

『実はお祈りする必要がなくなる程度の能力を持ってるんだが』

「……待って、ちょっと詳しく」

 

全然成仏しない《魔女の遺産》の意思だったが、ちょっと話が変わって来た。

お前その能力、他人にも付与可能だったりする?

 

『なんだ?お祈りする必要がなくなるとしか言っていないが?』

「そんなこと言わずに仲良くしていきましょうよ~、黒猫さん~~」

『清々しいほどまでの掌返しだな』

 

いやそんな、ほら、ね?

お祈りってそういうことだよね?

ね?

 

『現金な奴め』

「この世に神がいるとしたら乱数の女神だけだから」

『同感だ。だから気に入った』

 

いえーい、仲良くできそうじゃんね!

 

「もしかしてゲーマー?」

『1万時間がチュートリアルだった記憶があるな』

「見抜き」

『7鯖』

「大合宿」

『10鯖』

「深淵と崩壊の先に!!」

『全知へ至る道がある!』

「『我が名はル◯サー、全知そのものだ……』」

「……どうやら、ボク達は“親友”のようだな……!」

『今まともに言葉を交わしたばかりだが?』

 

ボクたちは心で固い握手を交わした。

 

『しかしまあ、気持ちの良いくらいにボコボコにされたな』

「うるさいやい。愛じゃよ、愛」

『お前地球ネタが通じるからとはっちゃけてないか?』

「仕方ないじゃん!!花〇院だってできないんだよ!?」

『そもそも院に繋がる知り合いがいないだろう、お前』

「幻楼院」

『お前の敵じゃないか』

 

ヤバい、こいつ話しやすい……!

親友!

 

『で、吐き出せたか?』

「まあ、ね。というより……もう一度安心したのかな」

 

なんかもう、ボクがどれだけやらかしてもカバーしてくれるという絶対的な安心感をもう一度くれた。

暴力で訴えてくるのはどうかと思ったけど。

暴力でしか示せないし……。

 

『……あれだけ強ければ安心もできよう』

「まあ憂うことなしというか。なんかボクが知らない間にリンネも撃退して《非業の天命》も退けたらしいね?圧勝で」

『そうだな……全盛期の我々でも勝てるかどうか……』

「じゃあボクは安心して裏工作ができるわけだ。最強無敵強靭の前衛ユニットがいるんだから、最強無敵強靭な後衛ユニットのボクが負けるはずがありませんよ」

『さっきまで泣きべそかいてたくせにやたら自信満々だなコイツ』

 

うるせえ。

ボクだって泣きたい時はある。

 

「というわけでまず幻楼院リンネとかいう調子乗ってるババアぶちのめします」

『まあ頑張れ。応援だけはしておいてやる』

「あ、手伝ってはくれないんだ」

『私が敵対しない事のありがたみを噛み締めておけ』

「あいあいさー!!」

 

そうですね、因果干渉とかそんなレベルじゃないヤバそうな猫さんが敵対しないだけありがたいです。

ありがとうございます、ありがとうございます、ねこはいます。

 

『収容違反』

「シレっと脳内見るのやめてね」

『ところで私とお喋りしてていいのか?』

「ん?」

『そこにヒイラギとかいう女がいるが』

「え」

 

ふと視線を泳がせてみる。

うん、いるね。

壁に寄りかかってボクを見ているね。

 

「エソラ、その猫について説明してもらおうか」

「ッスー……いや、ちがうんですよ、裏切りとか浮気とかじゃなくって……」

「随分と楽しそうに話していたな。私にも紹介してくれ」

『私は《夢想の黒猫》の意思。名は数多くあるが、気軽にキャスと呼んでくれ』

「そうか。くたばれ」

『まあ待て、私に敵意はぬぉあ!?』

「待ってヒイラギ、ボクの部屋が!!」

「大丈夫だ。この猫以外は斬らない手加減ができる」

『くっ、これだから剣士という奴は……!!』

 

ひぇぇ~~~!!

ヒイラギ、ストップ、ストォォォォォップ!!

部屋がこわれちゃ~~う!!

 

 

――十分後

 

 

『ぜぇ、ぜぇ……私の知る剣士に勝るとも劣らぬ腕だが……まだ経験が足りんな。私を斬ろうなど100年早い』

「ぜぇ……なんだ、はぁ……100年でいいのか……」

『待て待て、敵意は無いんだ。親友、こいつを止めてくれ』

「ヒイラギ、一旦敵じゃないからさ、剣を収めよ?ね?」

「……チッ」

 

すごいね。

あれだけ暴れたのに部屋に被害ゼロだ。

これが達人の技か。

ていうかヒイラギと同レベルの剣士が居たのかよ。

怖すぎだろ。

 

「まあいい。持ち直したみたいだな」

「お陰で動けませんけどね!!!!」

「元気になったな。ならいい」

「ちくしょう!!」

「で?反撃のプランはあるか?」

「これから考える。けど、がっかりはさせないよ」

「それは良い。楽しみだ」

 

とりあえず、さ。

自重もっとやめようか。

お利口なんかじゃなくて良い。

やりすぎたらヒイラギが止めてくれる。

 

「大逆転と行こうじゃないですか!!」

 

ここからですよ、ボクぁ!!




・アルティメットヒイラギ
ついに人間を辞めたヒイラギ。
全ての異能と溜め込んだ幸福指数を生贄に、生物としてより上位の次元に踏み込んだ……実は今のヒイラギには異能という分類の力はもう無い。
全くの別物になったのでリンネは観測できなくなった。
このままでは、誰もヒイラギを止めることができなくなってしまう……!!
なお、修羅ヒイラギを超えたヒイラギである。



・《夢想の黒猫》キャス
敵に回らないことがとても嬉しい存在。
この世のどんな因果干渉よりも恐ろしい。
そんな能力を彼女はゲームには使わない。
曰く『ゲームでチート使うとかクズかよ』。
根っからのゲーマーであった。
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