TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う 作:蓋然性生存戦略
それはそれとして、これが投稿される頃には私はカルデアスで未来へのバトンを繋いでいることでしょう。
最前線のマスターども!!
音量上げろ!!!生前葬だ!!!!
一片たりとも存在を
キルゼムオール、キルゼムオール!!!!!!
ドクターとの約束だ!ゲームセット、してやろうぜ!!
私は基本暇をしているので雑用を任されることが多い。
その日は夕飯も近く、エソラがアジトから出てこなかったから、ヒイラギとアルトリウスから呼んでくるよう頼まれた。
まあ、いつものことだ。
最近のアイツは何かに没頭している。
鬼気迫る感じではないが、少しだけ、何か思い詰めているようだった。
何かが上手くいっていない。
なんというべきか。
ゲームでうまくビルドを組めていない時のような、そんな顔だ。
「おーい、飯だぞ」
「zzZ……」
「寝落ちしてんのか……全く、何をそんな熱中しているのやら」
部屋に突撃すると、エソラの奴は寝ていた。
パソコンの前で突っ伏して寝てやがら。
仕方ない、二人にはエソラの分を取っておくよう言っておいて、こいつはベッドに寝かせておくか。
とりあえず椅子から引きはがして……と、思った矢先。
パソコンの画面が見えた。
見えてしまった。
しっかりとそれを見てしまった。
『ケース3-34、細胞サンプルの死滅を確認できず。アプローチ3番台のは破棄することとする』
これは……。
「悪いな、ちょっと見させてもらうぞ」
エソラをベッドに寝かせ、パソコンを少し探る。
こんなもんが書かれてるファイルは何だ。
何を研究してやがるこいつは。
ファイル名は……《
丁寧に概要まで残してあるな。
開くか。
『まず最初に。
これはヒイラギに選択肢の幅を持たせるための計画であり、ボクの死後を想定した計画である。
最終目標としてヒイラギを殺せる毒の完成を目的としているが、苦しめるためではない。
前提として、ヒイラギやキャスパリーグ、アルトリウスは、人類より上位の存在と断定するものとし、そのため一般的に考えられる老衰、病、毒などの原因による《死》は原則存在しない。
また、存在強度が異常に高いことも確認できており、ツァーリ・ボンバークラスの爆弾に無防備な状態で直撃しても、恐らく生存可能であることが推察される。
この前提条件は別途《人外考察》の資料にて証明済み。
以上のことから、現状の人類が上記3名を殺害することは不可能だと判断し、ヒイラギに安らかな自死という選択肢を持たせるためにこの研究を開始する。
なお、この研究を隠し通せるとは思っていないので特にロックはかけない。
特にキャスに対して電子戦とかアリがドラゴンに挑むようなモノなので無駄。
バレたら土下座してでも研究を続けるつもりで行く。
また、キャスとアルトリウスに関しては多分勝手に自滅してくれると思うので放置。
最優先はヒイラギ』
なんなんだぁ、このクソボケはぁ……?
私らが自殺出来ないとでも思ってんのかぁ?
いやまあそれなりに苦労するが出来ない事は無いんだが?
ヒイラギも似たようなもんだろう。
ぶっちゃけちまえば余計なお世話ってなもんだが……。
「……よくできてやがらあ。特に4番台と6番台、それから9番台。ことさらケース9-61は再生力と拮抗してやがる……これだけでも相当な劇物だぞオイ」
どーすっかなあ。
チクってもいいが、チクったところで止まらねえよなあ……。
私は少しだけ悩んで、一つの薬瓶を、メモと一緒に机に置いておいた。
「置いてかれる気持ちは、よく分かるからな……」
私はどう足掻いたって置いてかれる。
フレンドにも親友にも家族にも最愛にも置いていかれた。
だから分かる。
分かっちまう。
「辛いよな、置いてかれんのは」
見送る辛さを知っているから。
少しでも多くを遺そうとする。
私はもう慣れた。
だからもう人間には戻れない。
だが、お前は人間だ。
どうしようもなくちっぽけで弱々しい、どこまで行っても人間でしかない。
人間になんざ欠片たりとも期待してないが。
こういうどこまでも人間らしい愚かな思いやりは、嫌いじゃない。
「せいぜい足掻けよ」
さて、そろそろ戻ろう。
ヒイラギに勘付かれても困るしな。
「エソラのやつ寝てたわ」
「そうか。であればエソラは飯抜きだな」
「はは、そうしてやれ。あのバカにはそれくらいでいい」
「エソラは何をしていた」
なんだ気付いてんのか。
じゃあ隠す意味もないな。
「直接聞いてやれよ。隠しはしないだろうぜ」
「そうか」
起きたらベッドで寝ていた。
最後の記憶は記録をとっていたときだから、寝落ちして誰かが運んだか。
やっちゃったなあ。
見られたかな、見られてるな。
まあでもヒイラギじゃないだろう。
ヒイラギだったらボクが目覚めた瞬間隣にいるはずだ。
となればキャスか。
覚えのない薬瓶が置いてあるし、多分そう。
メモが置いてあったので読んでみる。
『一時期、傲岸不遜の権化みたいなビジネスパートナーのクソ野郎を毒殺しようとした時に試作した毒薬だ。即効性はあるが相手の格によっては効き目が薄い。参考程度に使え。
P.S. 勘付かれてるぞ』
参ったな、土下座秒読みじゃないか。
まあいいけど。
アイテムボックスにブツを仕舞い込んで、ToDoリストに書き加えておく。
「そろそろ
果たして、このリストを埋め切ったあと。
ボクは満足しているだろうか。
答えは決まっている。
しているわけがない。
人間、完璧に満足できるようにはできていない。
果てしない願望こそが、人間たる証左なのだから。
「無駄な足掻きだよなあ」
どうせ泣き喚くクセに。
涙は見せたくないから強がる。
我ながら悪いクセだ。
「何がだ?」
「うわ、びっくりしたぁ?!」
いつのまにか、側にヒイラギがいた。
ちょっとしたホラーである。
「また何か、企んでいると思ってな」
「まあ気付くよねー」
ヒイラギに隠し事はできない。
素直に白状する。
「はいこれ」
「これは?」
「ヒイラギを苦しませずにあの世に送る薬の研究資料」
「……キミが死んだ後を考えてのことか?」
「そ。前提研究から、どう足掻いたってボクが先に死ぬ。
「直接出さないということは」
「直接は無理だったってこと」
気長にとは言ったけど、生きるのに飽きる前に完成させたいね。
あんまり長く生きてると変質しそう。
「全く……意地でも生きてはくれないのか?」
「その時にならないとなんとも。今のボクはまだ時間がある。生き汚くなれるかは、どれだけヒイラギに甘やかされるかかなあ」
「やれやれ、脅しのつもりか?」
「人聞き悪いなあ、もう。分かってるクセに」
「気持ちは理解しているさ。だから許してやろう」
「ありがと」
へへ、許されt
「それはそれとしてキミはしばらく三食カップ麺だ」
「そんな殺生な?!ヒイラギの美味しいご飯は?!」
「お預けだな」
「ギャォォォォォン!!(ジン◯ウガ)」
アメトムチ!!
ヒイラギには悠久を生きる神の素質があるけど、エソラにはないという話