TS転生ヴィランロリ、疲れ切ったヒーローを拾う   作:蓋然性生存戦略

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DRS、大体リンネのせい。


第三輪:天落

「オロロロロロロロロロロロロロ」

 

リンネの襲撃への対応に動き出して2時間。

エソラは口から虹色の液体を吐き散らかしていた。

 

少し、飛ばし過ぎたか……。

 

「げほっげほっ、このままじゃゲロインになっちゃうよ……!!」

「すまない、少し自分の力を見誤っていた」

 

しかしだ。

当時の私は、ここまで力を発揮できただろうか。

いや、身体能力自体は未来と比べると劣化している、それは間違いない。

当時のもので間違いないだろう。

だが体捌きでここまで大きく変わるほどのものでもない。

 

……。

 

心当たりは、ないでもないが。

なぁ、相棒?

 

『―――――』

 

少しだけ愛剣を抜いてみた。

最も記憶に新しい姿だった。

 

覚醒後だコレ。

 

「っ……!!」

「おねーさんどったの?」

「私の愛剣が過去ではなく未来の姿だった……」

「強くてニューゲームってコト?」

「担い手の肉体は分不相応な未熟な体であることを除けば、そうだな……」

「おい待てコラ」

「私とて想定外だ……」

 

《決意の剣》よ、こんなよく分からん状況にまで付いて来てくれているのは嬉しいが、今の私にお前を振るうに足る資格はあるのか?

私が今示せるのは覚悟しかないが?

 

「扱えんの?」

「分からん」

「これから旧オートですけど、大丈夫そ?」

「……大分不味い」

「おねーさんさぁ……案外ポンコツ?」

「言わんでくれ」

 

いやまあ、何も悪いことではないのだが。

どちらかと言えば私の不安である。

 

「ねえおねーさん」

「なんだ」

「剣、出て来てるよ」

「は?」

『―――――』

 

……。

分かった、わかったわかった。

お前を振るえばいいんだろう。

私もお前以外を振るうつもりはない。

全く、お前はそんなにも自我を出して来る剣だったか?

分かったから一度戻ってくれ。

 

「自我がある武器、いいな……」

「キミは作らんだろう?」

「そりゃね。道具に心を持たせちゃいけないよ」

 

『おーさまも言ってたし』とつぶやいてから、エソラは持ち直した。

吐瀉物はいつの間にか掃除されている。

 

「っし、じゃあ行こうか」

「ああ」

 

私は、きっと油断していたのだろう。

いや、それは少し語弊がある。

張りつめていた気が、一瞬だけほぐれてしまったのだ。

 

「その必要はないわ」

「!?」

「うそ、あの引き籠りが!?」

 

奴の接近を、幻楼院リンネの接近を許してしまっていた。

だが、続く言葉は私の予想を大きく裏切るものだった。

 

「ああ、そう身構えないでちょうだい。敵対の意思はないのよ、今は」

「なに?」

「むしろ手を貸してくれないかしら。あなた達が必要なのよ、切実に」

 

私の知る奴とは異なる、必死の思いが伝わる言葉だった。

 

 

 


 

 

 

ソレが見えたのは、ひと月と少し前から。

この星を覆いつくしてしまう、空白。

まるで宇宙から、この星だけ切り取られたかのような、そんな空白。

とうとうこの日が来たか、という感慨。

 

()()()()=()()()()()。貴女しか、アレは斬れないのよ」

「どういう意味だ」

「気付いていないのかしら。この星を覆う空白に」

「……なに?」

「孫娘じゃダメなのよ。あの空白が相手では無力に等しいわ」

「誰が孫娘だクソババア」

「……いや待て。貴様、記憶を持っているな?」

()()()()

 

この世界に産まれ出でた時から、私は記憶を見ている。

私ではない私の記憶を。

だから知っている。

私は、この二人に敗れる運命だと。

それは覆しようのない定理であり、公式であり、水が水であるという証明と何ら変わらない。

それは良い。

全力を尽くして満足して逝ける。

 

だが、これは違う。

 

「アレを滅した後、改めて雌雄を決しましょう?あの空白には、このアルスガル全てのリソースをまとめる必要があるのだもの」

「そのために行動を早めたと?」

「ええ。既にアセリアのリソースは掌握したわ。アルスガル全体で言えば5割のリソースが既に私の手中にある」

「……」

 

あの空白だけは許せない。

人間(ヒト)を値踏みするような、上から目線の存在が。

私たちの命運を勝手に弄ろうとしている。

 

私たちは決して、傀儡などではないのだから。

 

「ふざけるなよクソババア。今更ゴタゴタと言いやがって。お前ボクの前にノコノコ姿を現して無事で済むと思ってんのか?」

「思ってないわよ。それでも、今ではなく、後にしてと、頼みに来たの」

「テメェ……!!」

「エソラ、今は引いてくれ。こいつはどうしようもない屑だが、嘘は吐かん」

 

あら。

私ったら、ヒイラギ=オークニーからは意外と信頼を得ているのね。

驚きだわ。

 

「正直今すぐにでも始末したいが……世界の半分を相手に切った張ったをしても意味はない。その後に滅亡が待っているだけだろうな」

「……妙な真似した時点でシバくからな……!」

「分かっているわよ」

 

まあ、孫娘からの心象は悪いわね。

仕方ないことだけれど。

客観的に見て、私が好かれる要素などないのだし。

 

「それで?その空白とやらは高度何メートル付近を覆っている?

「静止軌道の少し上よ」

「ふむ……ギリギリ届くな」

「届くのかよ……こっわ……」

 

奇遇ね、孫娘。

私も怖ろしいと思ったわ。

 

「今認識できた。確かに、あれは(ソラ)として見るには、歪にすぎる。まるで虚空だ」

「あら、視たことがあるのかしら」

「数度な」

 

へぇ。

一度視てみたいわね。

面白いものが見れそうだわ。

まあきっと、孫娘の許可がいるでしょうけれど。

 

ちらりとそちらに視線を向ければ、今にも爆発しそうな孫娘の姿がある。

ふふ、そうね。

まだまだ子供なのだものね。

 

「少しだけ時間をあげるわ。精々話し合ってちょうだい。あと、貴女たちが片付けたゴミは気にする必要はないわ。廃棄処分予定だったモノを有効活用しただけなのだから」

「はぁ……まあ良い。大まかに相手の正体は掴めた」

 

あら。

正体が分かっているのね。

一体どこの誰なのかしら。

気になるけれど……ああ、そう。

だから貴女なのね、ヒイラギ=オークニー。

人でありながら、人を超越した存在である、貴女だから。

 

腹の立つことね。

 

まあ、孫娘の機嫌を取るよりはマシかしらね。

秋の空模様よりも大変そうだわ。

 

 

 


 

 

 

ボクは怒っている。

ああもう、それはもう怒っている。

 

「おねーさんさぁ……何かボクにいうことあるんじゃない?」

「……キミの怒りはもっともだ。すまない」

「なぁんでにっくきクソババアと話が通じているのかなあ?」

「性根が腐っているだけで話自体は通じるからな……」

「その性根が問題すぎるんだけど?」

「……異常事態なのは確かなんだ、許して欲しいとは言わないから、今だけ堪えて欲しい」

「美味いメシと性癖ドストライクな容姿じゃなかったらもう手打ちだったよ」

「本当にすまない……」

 

とはいえ、実際に観測した上での異常性も理解している。

業腹だが、あの女の手を借りなければならないのは必然である。

世界征服とかを企む馬鹿だが、その頭脳だけは本物なのだ。

味方に付けられるのであればありがたい。

 

だがそれはそれとしてアイツ仇なんですよ分かりますよね?

 

「当然、最後はアイツを捕まえるんだよね?」

「当たり前だ。奴を野放しにしておけるわけがないだろう」

「ならいいさ。アレだけ煽ったんだからわかってるよねえ?」

「悪かった、悪かったから、あまり距離を詰めるのはやめてほしい」

「なんでさ」

「……分かってくれると信じている」

「……脳内ドピンクかぁ!?」

 

くっそこれじゃご褒美じゃないか!!

ええい、こいつ無敵か!?

もうほんと隠す気ないだろお前!!

これもうAどころかBもCも終わってるだろお前!!

なあ、おい!

目逸らすなハッキリしやがれコラ。

 

「……Fまで終わっていると言ったらどうする?」

「お前マジでこんなところにいるんじゃなくてさっさと帰れよ。ホントに」

「異常事態が起きていなければキミに前を向けさせて帰るつもりだったんだが」

「すでに余計なことが入ってることに気付けやボケナス」

 

マジかぁ、マジかぁ~~……。

ていうかFまで行っててなんでまだ動じちゃってるんですかね本当に!!

 

「もーいーよ。こんなん付き合っとらんでさっさと帰れ。ボクとリンネがいればなんとでもならぁよ」

「……絶対うまくいかないだろう」

「うるせえな!!そもそも本来は部外者だろお前!!責任感じる必要なんかねーの!!ぱっぱと帰してやるから大人しく受け入れろ」

「だが断る」

「ざっけんなコラァ!!」

 

それはそれとして頑固だし!!

誰ェ?!こんなめんどくさい女を伴侶に迎えたの!!

違う世界線のボクでーす!!

お前の方が100倍めんどくさいって?

それはそう。

 

「まあ落ち着け。理由がいくつかある」

「おうコラ言ってみろよ」

 

聞いてやらんこともないぞ。

 

「まず一つ。相手が相手なのでそのまま帰っても元の世界線もマズい」

「なんでマルチバースに干渉する存在が当然のようにいるんだよ」

 

スケールでけえなオイ。

 

「二つ目。恐らく何らかのゲームの進行中なので投げたらもっとマズい結果になる」

「ねえもしかして相手ニャルニャルしてる?」

 

もしかしなくてもニャルニャルしてそうな上位存在感あるんだが。

 

「三つ目。別人とは言えキミがいる以上見捨てる気が無い」

「おい。思いっきり私情が混じってるぞ」

 

これが本音だろお前。

 

「そして最後。予想通りの相手であれば私以外勝ち目がない。キミとリンネが円満に手を組めたとしてもだ」

「……マ?」

 

と、最後にぶちまけられたな。

ボクとリンネが十全に組める前提ですら勝ち目がないっつったかコイツ。

 

「キミやリンネの持つありとあらゆる手段が無に帰すだろう。そういう相手だ」

 

え、マジでどういう能力持ちだ?

ボクもリンネも相当能力としては無法だと思うんだけど。

 

「まあ能力が無法なのもあるが、奴も技術屋だからな」

「ボクとリンネ以上の?」

「年季が違う。技術の知見自体はリンネよりも多いくらいだ」

「マジで言ってらっしゃる?」

 

マジかよ。

それちょっとヤバくない?

しかもそこに無法と言わしめる能力があるんでしょ?

ちょっとズルくない?

 

「ちなみに身体能力は?」

「私の身体能力を100として」

「うん」

「90くらいある」

「馬鹿なの?」

 

一体何を持ち得ないのだ!!になるが?

ただまあ、わかったことはある。

 

「能力強い、技術あります、身体能力つよつよです。そんな相手が推定敵対しています、既にアルスガルが包囲されています。詰みでは?」

 

詰んでないかコレ?

諦メロンじゃない?

 

「……まあ、何とかしてみせよう」

「やっぱお前帰れよ。ボクらのことなんかほっといてさ」

「だから」

「前ふたつの理由は建前だろ。帰ってから準備するのでもなんとかなるはずだ。だって今より成長したボクが、本来の肉体のおねーさんと一緒にいるんだから」

「……」

 

ならボクはおねーさんを帰そう。

真面目に。

気持ちだけで十分なのだ。

 

「それはできない」

「やれ」

「やらない」

「ぶちのめすぞオイ」

 

はー!?

ほんまこいつさぁ!!

自分だけ助かっとけばいいのによー!!

 

「オイコラ工房来いよ、分からせてやるからさァ……」

「おや?いいのか?ハッキリしてしまうぞ?」

 

梃子でも動かねえから気合でぶっ帰してやんよぉーーーー!!

 

 

 

――そしてその日、天が落ちた。




仇と手を組まされる羽目になった挙句めんどくさい女が帰ってくれないエソラ
VS
よく分からんが過去に戻ってしまい帰ろうとするもそう言えばコイツ死ぬ気だったよな、生かすか、なヒイラギ
VS
気に食わねぇ~~、上から目線で観察しやがって気に食わねぇ~~!撃ち落としたるでホンマに!!なリンネ
VS
いやー、今日も人間は愚か愚か!!今一度愚かレベルを測って裁定を下すニャ~~、な黒幕
VS
またしても胃痛が酷い《テリトリア》

ファイ!!
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