徒然草と青溟鳥   作:上条@そぉい!

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繰り返し

 澄輝坪は大混乱に陥っていた。突如として現れたいる筈のないエーテリアス達に襲われていたからだ。以前にも同じことがあった。しかし、その時は防衛軍によって避難が始まっており、被害は少なく済んだ。だが今は違う。事件が終わり、その復興の為様々な人たちが行き交い、無防備だった。

 

「うわぁ!」

「助けてくれぇ!」

 

 怒号、悲鳴。普段の賑やかさとは真逆の騒がしさが辺りを包んだ。1人、1人とエーテリアス達の凶刃に倒れていく。辺りには濃密なエーテルが蔓延しつつあり、ミアズマによる幻覚症状まで起きつつあった。

 

「離れてください!」

 

 しかし、その中で勇猛果敢にエーテリアス達に向かっていく少女がいた。まだ幼そうな顔つきに、小さい身長。しかし、その身に収まらぬほどの闘志と覚悟がある。その名を橘福福。雲嶽山に所属する虎のシリオン。

 

「そぉら!!」

 

 一気呵成。掌底の一撃でエーテリアスを吹き飛ばすは適当観厨房の鉄人、潘引壺。そしてそれに続く雲嶽山の門下生達。それぞれエーテリアス達と対峙し、戦えない人たちの盾となっていた。

 

「師匠がいない衛非地区は、私たちが守るんです!」

 

 何のために留守を任せられているのか。それはこういった有事の時、師匠が居なくとも守れると信頼してくれたからだ。その信頼を裏切って、どうして師匠の弟子を名乗れようか。今まさに、福福は正義に燃えていた。

 

「避難所はこっちだ!急げ!」

 

 また別のところでは、人よりも恵まれた体格を使って、エーテリアスの攻撃を受け止め盾となる男がいた。その後ろでは、傘を振り回し、傘に仕込んだ隠し銃でエーテリアスを撃ち抜く少女がいた。背後には今も逃げ走る戦えない老若男女がいる。

 

「ちょ、真斗!怪我がまだ治ってないでしょ!」

「そんなこと言ってる場合じゃねぇだろ柚葉。街は完全に混乱してる。今動かなくてどうすんだ、よっ!」

 

 話しながら身の丈程はある大剣でエーテリアスを後方へと押しやる真斗と呼ばれた青年は、それよりも、と話を変える。

 

「本当なんだよな?防衛軍の人間が讃頌会と密会してたってのは」

「うん、これはそいつらの仕業。事が起こる前にどうにか皆に伝えようと思ったけど、もう遅かったみたい」

「まだ間に合うだろ、それに、前からそれほど時間が経ってない。むしろ下手に長く間が空いてたら爺さん婆さんは逃げるのが遅れてた」

 

 肩に武器を背負い、周囲に目を配りながら、真斗はそう話す。

 

「意外と冷静なんだ、真斗」

「こんな時だからこそだ。俺も怪我で無茶は出来ねぇし、だったら使えるもんは使っとくべきだろ」

 

 爺さん婆さんに限らず、家に何かを残していけない人は多い。だが以前の避難から時間が経ってない今、まだ家にそういった物を戻せずにいた者たちは多い。避難のしやすさと言う点で、今の状況はある意味好都合だった。

 だが、そんな状況でも事態は悪い方向へ向かっていると言える。衛非地区にいる戦力だけでは、この波は抑えきれない。ただのエーテリアスだけでなく、讃頌会が誘導して襲わせているサクリファイス達がいる。抵抗しても、このままでは希望が見えない。

 

「だが防衛軍だって、一枚岩じゃねぇ筈だ。こんな事になって動かない訳がねぇ」

 

 だと言うのに、街にいた筈の防衛軍にその気配がない。

 

「どうなってやがる……!」

 

 


 

──お兄ちゃん、街がサクリファイスに襲われてる!

 

 ホロウの外にいたリンからの通信で、状況を知ったアキラは、その場に待機していたオボルス小隊の面々に、その事を伝える。

 

「衛非地区が、でありますか!?」

「タイミングが良すぎるわね」

 

 各々の所感を呟く面々に、シードが真面目な表情で疑問を呈する。

 

「讃頌会にここまでの事を出来るだけの力が、まだあったのかなぁ……?」

『少々妙なのは間違いないだろう。11号の言う通り、タイミングも少し良すぎる。こちらの情報が漏れていたか……』

 

 或いは、防衛軍に内通者がいたか。それを口にしないまま黙る鬼火隊長。イゾルデ大佐の件から時間は経っていない。再び同じ仲間に刃を向ける様な事はもう御免だった。その様子に、オルペウスが明るい声で皆に言う。

 

「とにかく、街に戻るであります!私達にしかできない事がある筈!」

 

 その言葉に、皆が頷く。儀降の事は気になるが、街の事が最優先だ。

 それから、ホロウから直通で帰れるロープウェイが何らかの爆発により使えないことをリンから聞いたオボルス小隊は、アキラとリンの案内でホロウの中を走った。

 

 


 

 

「なんだこりゃあ……!?」

 

 衛非地区へ足を踏み入れたクレタ率いるアンドー、グレース、ベンの御一行は突如として混乱に包まれた街を見た。

 

──私は別で動く。そちらも気をつけろ

 

 そう街に行く前に儀玄と別れた白祇重工は、ユキを探すため、衛非地区に来ていたのだ。黒ずくめの兵士の目撃情報をインターノットで見つけたからだ。

 

「気をつけて!来るよ!」

 

 グレースの言葉と共に、こちらにもサクリファイスが襲いかかるが、それをアンドーとベンの2人で抑え、その隙をクレタのハンマーがぶっ叩き、グレースの炸裂電気グレネードが相手の顔面で破裂し、吹き飛ばした。

 

「何処にいんだ、ユキ……」

 

 混乱の中で、クレタはあの優しい笑顔を浮かべた従業員の事に思いを馳せていた。

 

 


 

 

 儀玄はホロウを転々と移動していた。最後に目撃した地点から帯びる少量のエーテル残留物を辿り、ホロウを走り抜けていたのだ。

 

「奴ら、随分とホロウに詳しいな」

 

 最初はルミナスクエアに近いホロウだったはずが、裂け目を経由していくたびに、違うホロウへと飛ばされていた。デットエンドホロウ、バレエツインズホロウ、ポートエルビスホロウと転々と通っていき、最後にたどり着いたのが、自分がよく知るラマニアンホロウだった。

 

「──」

 

 雲嶽山の術法だけではない。このラマニアンホロウに来てから儀玄は理屈ではないものと惹き合う感覚があった。それは進むたびに近づいていく。

 

「──姉様、何処にいる」

 

 また・・間に合わないのか。そんな思いが一瞬過ぎったが振り払う。今度こそ、間に合わせる。その決意を胸に、走り抜けていくホロウの中で、一陣の風が、儀玄の頬を触れて通り抜けていく。

 

「……ッ!」

 

 確かに今、姉様の気配を一瞬感じた。とても揺らいでいて、まるでヒビの入ったガラスコップのように不安定だった。振り払って振り払って、それでも拭えない嫌な予感を、無理やり呑み込んで儀玄は走った。




 走って走って、ようやくたどり着いたのは、祠だった。たくさんの人が踏み荒らしたそこには、静かに、私の到来を待つ一本の剣があった。

「これは……」

 恐る恐る、その剣を掴んだ。剣は驚くほど素直に収まった。ズキン、と頭が痛む。剣から流れ込む何かに、体が拒否反応を起こしている。

「呼んでいたのは……」

 この剣だった。

どんな結末が見たい?

  • 主人公も皆も無事のハッピー
  • ……バッドエンド
  • 欲張りに両方欲しい!
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