カツン、カツンと、石の床を歩く。何処までも白いここは、何処だろう?地平線まで白く、果てがないようにも見える。私は剣を掴んで、そうしたら、ここに飛ばされた。そうして歩いていると、重そうな木の扉が、目の前に現れた。
……ここに入れ、という事なのか?その扉以外に何もない白い空間を歩いても仕方がない。私は導かれるままに扉を開いて、中に入った。入った途端、目に飛び込む強烈な白い光に思わず目を瞑った。ざわざわと騒がしい沢山の人の声が聞こえる。
「ここは……」
恐る恐る目を開けば、私がいたのは雑踏の中だ。周りには炊事の煙で湯気が立ち上り、沢山の人たちが此方を見もせず横を通り過ぎていく。商店街のようだった。何処か、衛非地区にも似ている。
──出来たてほやほやの饅頭はどうだいー?
そんな呼び込みの声が聞こえる。私は、何処に迷い込んだのか。一体、何を見せたいのか。そんな疑問を尋ねようと、道ゆく人に話しかけてみても、誰も反応しない。見向きもされない。
「私の姿が見えていないのかな」
まるで透明人間になったような気分の私は、そのまま歩き始める。しとしと、と雪が降っていた。吐く息は白く。とても冷たい。人にぶつからないよう、大通りを避けて狭い路地に入る。すると、そこには2人の子供がいた。雪よりも白い髪が特徴的な子供達。幼い子を、少し大きい子が背負って、ふらふらと歩いていた。
──姉様……あれ、食べたい
背負われた子供は、大通りから聞こえてくる呼び込みの声に、腹の音を鳴らした。とても身なりが整った子達ではない。孤児だろう。
──買ってあげる!
背負った姉と呼ばれた子供は、明るくそう言った。そうして、2人はお店から売られていたチャーシューまんを盗み、そして店の人に追いかけられていた。私はそんな光景を、何故か目を離せずにいた。
その後、子供達は、優しい人に助けられ、住処を与えられ、新しい生活が始まった。その一部始終を見ていた私の前に、また同じ扉が現れる。次に進め、という事らしい。
その扉を潜ると、再び白い光が私を照らす。そうして、収まった頃には、また別の場所に立っていた。私を横切る2人の子供達がすくすくと育っていた。時間が経ち、成長した姿がそこにはあった。2人は仲睦まじく、支え合っていた。あの日食べようとしたチャーシューまんを、2人で分け合って食べる姿があった。
そんな月日が経った2人は、街を一望できる道場の屋根に登って景色を見ていた。
──私ね、雲嶽山の宗主になったら。その力で皆を守りたい。私たちみたいな子を、1人でも減らしたい。
そんなふうに、姉は言った。妹も、それはいいと目を輝かせ、姉についていく、と。
そんな2人は、いつしか成長し、上の者に師事する立場ではなく、教える立場へとなっていった。だけど、姉はそんな妹を憂いていた。
──儀玄。貴方は私や師匠とは違う。もっと遠くへ行ける人。
ただ後ろからついてくるだけになって欲しくなかった。だけど今はまだ、その時じゃない。姉は決意した。いずれその時が来る。その時まで妹を守ろう、と。妹が自分より先を行く未来を想像して、少し寂しそうに笑った。
再び、扉が現れた。私はもはや何もいう事なく、その扉を潜った。
場面は変わり、その2人の姉妹はエーテリアスと戦っていた。それだけじゃない。背中には、沢山の門下生がいた。2人も、とても苦戦し、時には命の危機に追いやられる事もあった。しかし、そんな危機を救ったのは、かつて2人を助けた優しい師匠。
その場にいるエーテリアスを全て微塵切りにし、その代償として全てを吸い取られ膝をつく師匠の姿があった。握られていた剣についていた宝珠は、青白く爛々と輝いていた。
その時、2人は知った。その剣は強大な力と引き換えに、使い手の全てを奪っていく、と。だが、エーテリアス達の脅威が続いていた中で、それを使わずにはいられなかった。姉は、皆を守るためなら、使うしかないと。
雲嶽山宗主となった姉に選択肢はなかったのだ。
──修行すれば、別の道だってあるはずだ。そんなものに頼らなくても……!
そう姉に話す妹に、姉は首を振った。彼女達には、時間が致命的に足りなかった。こうしている間にも、人々は苦しみ、エーテリアスの脅威に怯えていた。あの日々が続く事を疑わなかった姉妹の背中には、いつしか沢山の重しが載っていた。それらが、別の道を許さなかった。
妹は、あらゆる術を探した。そして努力した。姉が、その剣を使わなくても良いようにと必死に。だが、最後には──
再び現れた扉を、私は潜る。なんとなく、これが最後になると予感して。
場面が変わった。ここは、戦場だった。沢山のエーテリアスの前に、姉はいた。その手に握られた剣を引き抜こうと、柄に手を掛けている。しかし、その手は震えていた。その日、都市は崩壊し、沢山の人たちが逃げ惑っていた。
──私の後ろには、儀玄がいる。
その事実を前に──震えが、止まった。
そして彼女は剣を引き抜き、山程エーテリアスを駆逐し、沢山の命を救い、散った。残されたのは、妹の慟哭だけ。それを見届けた私を再び光が包み、目を開けた時には、元の場所。剣が納められた祠の前にいた。
「……この剣が」
これを見せて、何を言いたかったのだろうか。だがそれを考える時間は私に残されていなかった。木々の隙間から、人々の悲鳴が聞こえてきたからだ。その中には、私が知る人達が混じっていた。
──社長。皆。
考えるよりも先に、体が動いていた。
「くそっ、マズイぜこりゃ」
アンドーが吐き捨てるように悪態をつく。どんどん増えていくサクリファイス達を前に、白祇重工の面々は追い詰められつつあった。場慣れした面々であっても、許容範囲を軽く超えたこの場においては、とても太刀打ちできるものではなかった。
「そんな事言ってる暇あるならもうちっと気張れアンドー!」
サクリファイスの攻撃をハンマーで鍔迫り合うクレタは、そう周りを鼓舞するも、そんな彼女も限界が近い。あれから随分と戦っても戦っても、相手の数が一向に減らないのだ。
「危ない!」
そんなクレタを横から鋭い爪でもって、串刺しにしようとするサクリファイスの新手。反応が遅れたクレタにそれを回避する余裕などなく、それを見ていたグレースだけが叫び、咄嗟に庇おうと、盾となり立ち塞がった。
「ばっ、姉貴!」
その光景に、目を剥いて叫ぶクレタ。だが──
「せいッ!!!」
乾坤一擲。鋭い斬撃が横からサクリファイスを薙ぎ倒した。着地した女性を見て、白祇重工の面々は、驚き半分、喜び半分といったふうに叫んだ。
──ユキ!!!
こちらを見るユキの目は光がなかった。
どんな結末が見たい?
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主人公も皆も無事のハッピー
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……バッドエンド
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欲張りに両方欲しい!