建物の間を飛び石のように跳ねて、急行する。目標は、今にも囲まれそうなあの人達。早く助けなければ。その想いで、剣の柄に手を掛ける。しかし、引き抜けない。これを引き抜いたら最後。どうなるか。それをさっき見たばかりだったから。
「ッッ!」
そんな私に、サクリファイスの群れが襲いかかる。咄嗟に避けようとするも、相手の丸太みたいな腕から放たれる打撃に吹き飛び、ゴロゴロと地面を転がる。血で視界が埋まる。鼻と口からポタポタと血が地面に垂れて余りにも見っともない。
「……そっか」
ここまで動き通しで、休みなく動き続けた私が万全の状態であるはずがない。切れた、私の中で支えが折れてしまった。さっきの元気はもうない。ずるずると、体を引きずるようにして立つ。剣を支えに前を見る。早くしなければならない。だけどどうやって──?
幾つもの化け物が前を塞いでいる。怖かった。私が死ぬ事じゃない。大切な人達を守れないことが怖かった。剣を持つ手が震える。この剣があれば、守れる。きっとこの剣はそれを伝えたかったんじゃないのか?
「──ッ!」
歯を食いしばる。動けと命令して、油の切れたロボットみたいにようやく動く手は、剣の柄に触れた。
──青溟剣、抜剣。
次の瞬間、一陣の風が化け物の間を通り抜けた。引き抜かれた剣を握ったユキが、化け物達の背後で剣を見つめていた。サクリファイス達は、霞の如く掻き消えていく。切られたことにも気がつかずに消滅したのだ。
「あ──」
ぐしゃり、と何かが消えた。まるで腐ったトマトみたいに不恰好だった。みっともなく、消えていく。──何のために戦うのか。──何のために、立ち上がるのか。
何もかもが0と1に還元されていく。目の前の全てが白黒になっていく中で、私は前に誰か居ることに気がついた。その人はボロボロな私を嘲笑うように、呆れるように、だけども、確かに私を見ていた。
──お前の後ろには、誰が居る?
音すら消えていたけど、その中でその人の声ははっきりと聞こえた。白い髪、自信に満ち溢れた表情。何処か凛とした佇まいの女性。そうだ、そうだった。そうなのだ。
「守らなきゃ」
感覚が戻ってきた。色は戻って、足に力が入る。まだ立てる。走り出せる。私はその女性と肩を並べて言った。
「初めまして『私』──短い間だけど、よろしくね」
私はその言葉に微笑んだように見えた。
そうして、再び走り出した私は、白祇重工の皆の元へと辿り着けた。その剣でその場にいた化け物達を切り裂き、皆を見る。良かった、怪我もない。ク**さんは相変わらず強気だったし、*レースさんはこちらを見てホッとしたようだったし、**ドーさんは**さんの巨体を思わず抱きしめながら喜んでいた。
「ユキ!その怪我、大丈夫なのか!?」
駆け寄ってきた**タさんは、こちらの怪我を心配そうにしていたが、私はそれらを無視して話す。
「早く逃げて、ここは危険だから」
「何言ってんだよ、だったらお前も!」
*レ*さんは、泣きそうな顔でこちらの手を掴んで引っ張る。いつもなら現場で泣かされていたのは私だったのに、まるで逆だ。
「それは出来ない。私にはまだやる事がある」
この騒動を終わらせる。根本を断たなければこの事件は解決しない。行き先は、剣が教えてくれる。私は、誰かが落とした術符を拾い、口に咥え、ボロボロに破れた服の袖はヒラヒラして邪魔なので引き裂いて紐として自分の長い髪を一纏めにする。
「おい、何処いく気だよ」
手を振り払って、私は違う場所に向かう。まだ化け物達はいる。それらを先ずは片付ける。そしたら次は、この事件の黒幕だ。青溟剣が震えている。同じ力に共鳴しているのだと思う。これを辿れば良い。
どんな結末が見たい?
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主人公も皆も無事のハッピー
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……バッドエンド
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欲張りに両方欲しい!