徒然草と青溟鳥   作:上条@そぉい!

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物語の最後に向けて

 人々は追い詰められていた。1人、また1人と倒れていく中、1人でも多く助けなくてはと動く者たちは、その数に押されて限界が近くまで来ていたのだ。

 

「大姉弟子!後は俺に任せて下がってくれ!」

 

 福福もまた、その限界が訪れていた。額から血を流し、その腕にはデカデカと爪痕が服を引き裂いて残っている。

 

「私はまだ、やれます!」

 

 未だサクリファイスが蔓延る衛非地区は戦場となっていた。何故こんなにもサクリファイスの数が減らないのか。福福は見た。サクリファイスが倒れた人々を自分と同じ存在へと変えていたのを。己の同類を増やされては幾ら倒しても減らない筈だ。しかし、それを阻止するにも、こちらの手数が圧倒的に足りない。福福は己の至らなさに歯噛みするしかなかった。自分は師匠が居なければ何もできないのかと。

 そんな時だ。そんな私たちの前にいたサクリファイス達が、霞の如く消え失せたのだ。金色の尾を引いてその場に現れた人に、福福は目を剥いた。

 

「お師匠!?」

 

 その後ろ姿は自分の知る師匠そのものだった。しかし、こちらを振り向く顔を見て、それは違うと理解した。

 

「邪祟滅殺……穢れが随分酷い」

 

 そう呟く彼女は体の至る所から血を流していた。片手に握られた剣を払うように振るうと、墨のようなエーテルがその場を薙ぎ払い、サクリファイスを一掃していく。

 

「あのっ!」

 

 誰もが目の前の光景に言葉を失う中で、福福は近寄り話しかける。

 

「助けていただいて、ありがとうございます!怪我、大丈夫ですか……?」

 

 とても師匠によく似ていたからだろうか。不思議と危険とは思わなかった。女性は、こちらの顔を見ると、驚いたように少し目を見開き、その後微笑んでこちらの頭を撫でた。撫で方まで、師匠にそっくりだった。

 

「その服、雲嶽山の者儀玄の弟子だね?ちょうど良かった。この札をこの街の四方に配置してもらいたい」

 

 そう言って、彼女は私に術符を渡した。これを知っている。かつて、同じような事があった時に師匠が弟子に渡したもの。この人は一体、何者なのだろうか。

 

「時間がない。頼んだよ」

 

 選択の余地はない。時間が過ぎればそれだけ人が死ぬ。

 

「任せてください!」

 

 福福は、師匠にするように笑い、弟子達をまとめ、各々が動き出した。配置は、よく知っている。

 


 

 大丈夫。まだユキはここに居る。儀降と一緒に居る。覚えている。

 

「やってくれたみたい」

 

 街の四方から昇る光柱を見て、私の頼みは果たされたことを知った。後は、この剣に。

 

「形神を俱に滅す──」

 

 この剣は、奪ったものを力に変換する。その性質を使えば、結界内のエーテルを簒奪し、支配下に置ける。それはこの場にいる化け物の消滅だ。これで一掃できた。

 

──あ

 

 その全てを吸収し終えた剣を掴む手が緩んでガシャリと剣が床に落ちる。膝をついて剣を見つめる。何かを奪われた。常に私を苛む痛みが消えた。どうやら痛覚が奪われた、らしい。いや、触覚もやられたな。感覚がない。

 冷静に考える私は、むしろ立ち続けるのに好都合だと判断して、剣を掴んで立ち上がる。

 

「後は──」

 

 この事件を起こした犯人を、倒すだけ。それまでに私の体が保つかどうかだけが、心配だった。

 


 

 

 アキラ達は、ようやく街に戻れた。化け物達を倒しながら進みリンと合流できた。

 

「お兄ちゃん、私あの人に会ったの」

 

 リンは、合流までの間にホロウでオボルス小隊を襲った人と会ったらしい。あの時とは全く雰囲気が違くて、最初は同じ人か疑ったけど、儀玄師匠と同じ雰囲気があったから分かったようだ。

 

「あちこち走り回ってサクリファイスを倒し続けてるみたい。こっちが声を掛けても反応なかった」

 

 ただ、探していたように見えたようだ。敵を探していたのか、或いはこの事件そのものか。

 

──黒幕を見つけた。

 

 最後にそう呟いてリンから姿を消した。

 

「黒幕、つまりこの事件の首謀者を見つけたと言う事でありますか」

『そうなるだろう。既にサクリファイスの襲撃は下火だ。すぐに終わる。我々も急ぐぞ』

 

 先ほど、何らかによってサクリファイスが一斉に消えた。リンとアキラはこれがすぐに師匠による術法だと理解し、先決はこの事件を起こした者を止める事だと考えた。

 

『マスター、既に彼女を捕捉しています。時速200キロの速度でラマニアンホロウへと向かっているようです──訂正、その眼前で停止。犯人と対面していると推測』

 

「……急ごう!」

 

 fairyの報告を聞いたアキラの一声に、その場にいた皆が力強く頷いた。




 ちょうどビーチでスイカ割りに興じる蒼角と悠真をパラソルの下で微笑ましそうに見ている柳は、課長が先程まで着ていた水着ではなく、H.A.N.Dの制服に身を包んでいた事に気がついた。

「課長……?」
「緊急だ、出動するぞ」

 緊急?そんな連絡は来ていなかったが、一体何処でそんな情報を。そう思いながら、遊んでいる2人を呼びながら立ち上がる。雅はすぐ書類仕事から逃げては修行と称して姿を消す人だ。しかし、この表情をした時の彼女は『虚狩り』だ。逡巡の余地なく即断する。

「分かりました。6課、出動です」

 雅は、未だ自分の手の中でガタガタと震え続ける自らの愛刀に目を向ける。最初は再び暴走しようとしているのかと驚きもあったが、それは違うとすぐに気がついた。これは共鳴だ。自らの同類に反応していた。それは雅を急かすように震えていたのだ。その方角は──ラマニアンホロウ。

どんな結末が見たい?

  • 主人公も皆も無事のハッピー
  • ……バッドエンド
  • 欲張りに両方欲しい!
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