徒然草と青溟鳥   作:上条@そぉい!

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止まったあの日は新たな一日へ

 クライン──いや、もはや個人とは認識できない化け物はその大きく肥大化させた四肢でこちらを押し潰そうと上から腕を叩きつける。

 2人は左右に避けて更に距離を詰めようと走る。しかし、化け物はその動きを察知すると叩きつけた腕から触手のような数多の手を伸ばしてこちらを捉えようとしてくる。

 

「ふっ!」

「はっ!」

 

 その一切を2人は通さない。かたや斬撃が飛び、かたや鳥がその全てを叩き落とす。

 

「動きは鈍ってないようだ」

「そっちこそ、宗主になってから怠けてなかったみたいだね」

 

 顔を見合わせ笑う。2人で組み手稽古をしたのはもういつ以来か。一瞬、儀玄が顔を顰めたように見える。その視線は私が持つ剣に。

 

「大丈夫だよ」

 

 今、私の背中には沢山の人がいる。征けと背中を沢山の手が押している。きっと、この剣が溜め込んできた人々の奪われたものが今私を支えてるんだ。

 

「っと──」

 

 横薙ぎに振るわれる丸太よりも大きい腕を2人して跳んで回避。こういった大型エーテリアスは馬鹿正直に付き合う必要はない。エーテリアスには核となるコアが存在している。それを破壊すれば倒せる筈だ。儀玄もその事は理解しているだろう。

 

「上!」

 

 端的に、私が叫べば儀玄は即座に呼応する。鳥の足が私を掴んで上へと大きく跳躍する。

 

「はぁっ!」

 

 青溟雲影終結スキル、大きく振り上げて振り下ろされる剣に合わせて、一際大きい墨のようなエーテルの斬撃がエーテリアスを上から下まで両断する。その余波は凄まじく、その背後に存在するラマニアンホロウの外殻に大きな傷跡を残していく。

 

──迷うな、行け。

 

 振るうと共に、1人、1人と背後の気配が消えていく。幻聴かも知れない、その言葉に私は剣を握り締める。

 

「儀玄!」

 

 両断されたエーテリアスの胴体、心臓に当たる位置にコアが見えた。最後の時だ。

 

「もはや命数は尽きた、邪祟滅殺──ッ!」

 

 儀玄はコアが出てくることを確信して既に術の発動の為溜めていた。そうして放たれるエーテルを纏った儀玄の鋭利な突撃は、コアを粉々に砕いた。

 言葉もなく、存在を保てなくなったエーテリアスが崩れていく。

 

「……さようなら」

 

 着地した私はそれを見ながら、黙祷する。方法は違えど、ありえた私に。そしてその想いに。

 後は、この剣に。最後の一撃の時点で感じていた別れはすぐそこにある。青溟剣に目を向ければ、ボロボロと崩れていく姿があった。剣を支えていた中身を使い切ったのだ、こうなる事は分かっていた。あの白一色の世界で見たあの人達は、きっと歴代雲嶽山宗主。自らを薪にしてこの時に間に合わせてくれたのだ。

 

「姉様!」

 

 こちらに駆け寄る儀玄に、私は体が勝手に動いた。サラサラとした髪の感触が手に伝わる。うん、大きくなったなぁ。

 

「……大丈夫なのか?」

 

 そんな泣きそうな顔で言われてもなぁ。大丈夫、代償はあの人たちが持っていった。私は何ともない。もう剣は消えた。それと共に感覚と記憶も戻ってきた──あっ。

 

「姉様!?」

 

 ふらりと、体が後ろへ倒れ込む。そうだ、私怪我してたんだ。感覚が戻って、それを思い出した。信じられないほどの激痛で、私は意識を手放した。

 


 

 

 そうして、私が目覚めたのは3ヶ月も先のことだった。さらりとした感触と、自分の閉じた目を眩しく照らす陽の光で目が覚めた。

 

「ん……」

 

 体を起こす。ここは……適当観、かな?とても懐かしい匂いがする。服もあの頃のものだ。もしかして私は実は死んでいて、ここはあの世だったりしないだろうか。とても現実感がなくてふわふわしている。

 しかし、そんな私を現実だと理解させてくれたのは、タイミングよく部屋に入ってきた儀玄だった。

 

「……姉様」

「あ、儀玄、おはよう」

 

 手を挙げて挨拶すれば、儀玄は手に持っていた桶を落としてこちらに駆け寄り、抱きついてきた。いてて、まだ痛いんだけどなぁ。

 

「良かった……本当に良かった……!」

 

 こんなふうに啜り泣かれて抱きつかれたら、私は何も言えないじゃないか。宥めようと、私は儀玄の頭を撫でる。

 

「ただいま、儀玄」

「──おかえりなさい、姉様」

 

 そんなやり取りをしてから、色々と説明された。あの後、事件は収束し、あの研究者は雅さんが捕まえたとか。街も復興して、既に日常に戻ったとか。あぁ、それと、白祇重工の皆も私の帰りを首長く待っている。怒られるのが分かっているので憂鬱であるけれど、贅沢な悩みだと苦笑するしかない。

 

「大丈夫か、姉様?」

「心配性だなぁ、大丈夫だって」

 

 私は街が見たくて、儀玄の助けを借りながら外に出た。私を診た医者曰く、死んでないのが不思議なくらいの怪我だったらしい。外傷以上に、体の中がボロボロで以前のような生活は無理だとか。まぁ、仕方ないと割り切っている。足も不自由で、杖が手放せない生活になってしまったが甲斐甲斐しく世話をする儀玄の姿を見ていると、悪くないなんて考えて怒られた。

 

 人々が歩く商店街を2人で歩く。色々と眠っている間の話を聞かされながら歩く私は、店売りされていたチャーシューまんを見つけた。買おうと声をかけてみたら、向こうは私を知っていたみたいで、助けてくれた礼だとタダでくれた。なんだか私は、そこでようやく自分は守れたのだと実感が湧いた。ありがたく貰って、私はそれを二つに分けて、片方を儀玄に渡す。

 

「ほら、儀玄の分」

「──あぁ」

 

 人に聞いた話だと、こういうのは分け合った方が美味しいらしいからね。儀玄は躊躇った後、思い切ったようにチャーシューまんを一口。

 

「……美味しいな、姉様」

「でしょ?美味しいよね」

 

 食べながら歩く2人は、そうして人々の雑踏の中へと消えていった──




後書き

はい、最後急ぎ足になってしまいましたがこれにて完結でごさいます。ここまでお付き合い頂きありがとうございました!途中、展開に少し悩みアンケートを取りましたが、それをみて私もルートを定めここまで走り切ることが出来ました。

バッドエンドルート、実は考えていたんですが結局こっちの方が私は嬉しいです。バッドエンドだと、雅さんに止められることもなく、そして儀玄が間に合うこともなくクラインを1人で倒し、燃え尽きて姿を消し、その後、抜け殻となった体は儀降の墓に寄りかかる形で静かな眠りにつく。それを最後に発見するのが儀玄というものでした。ハッピーエンドの鍵は雅さんとの出会いと、白祇重工の想いです。それが足りてようやく儀玄は間に合った、という事で。
 これはこれで曇らせという点においていいかも知れませんが、やっぱり見るならハッピーエンドがいいですよね。うん。

 そんな訳で、皆様の感想を楽しみにしながらここで締めさせていただきます。ここまで書いてこれたのは皆様の感想のお陰です。本当にありがとうございました!

どんな結末が見たい?

  • 主人公も皆も無事のハッピー
  • ……バッドエンド
  • 欲張りに両方欲しい!
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