プロローグ
「チャンピオンである僕が負けるとはね……さすがだ、ユウキくん! 君は本当に素晴らしいポケモントレーナーだよ!」
「おめでとう! 君のポケモンを思う気持ち、そしてその気持ちに応えるため全力を尽したポケモン、それらが合わさってひとつとなり、さらに大きな力を生み出した。だからこそこうして君が勝利をつかんだ! 君こそホウエン地方の新しい……」
「ユウキくん! チャンピオンに挑戦する前にアドバイス! チャンピオンが使うポケモンは……ってあれ? あれれ? ユウキくん、ひょっとして、もう終わっちゃった?」
「だから、言っただろう! ユウキくんなら心配ない、と!」
「ユウキくん。いや……新しいチャンピオン! 僕についてきなよ」
「申し訳ないけど……ここから先はチャンピオンになったトレーナーだけが入れる場所! 君はそこで博士と一緒に待っていてくれないか」
「ガーン……! なんてね、いいよ。そういう決まりだもんね」
「ユウキくん、ほんとうにおめでとう!!」
「ここは……激しい戦いを勝ち抜いたポケモンを記録する場所。リーグチャンピオンの栄光を称えるための部屋! さぁ! ポケモンリーグを勝ち抜いた君の名前と共に戦った君のパートナーをこのマシンに記録しよう!」
そこまでは覚えている。
俺はホウエン地方のチャンピオンであるダイゴさんを倒して……ポケモンリーグチャンピオンになった。
だけれど……ここはいったいどこだ?
そこは確かにホウエン地方だった。
でも知らないモノがあった。
メガシンカ。それにゲンシカイキ。
二つの単語は密接に繋がっているらしいが、俺の居た世界ではそんなものなんて無かった。
ここはほんとうにホウエン地方なのか?
「……やあ、ぐっすりと眠っていたようだね」
声が聞こえた。
どうやら俺は眠っていたらしい。
そこに居たのはぼろ布のマントをつけた黒いシャツを着た女――ヒガナだった。目つきは悪いが、笑みを浮かべると少し可愛い。彼女に擦り寄るようにゴニョニョのシガナもいる。
「それじゃ、始めようか。儀式を」
そう。
彼女がはじめるのは儀式だ。
大いなる、儀式。
この世界を救うための儀式。
そうだと彼女から聞いていたが……それでも実感というものがわかない。
それは、この世界の住民じゃない俺が深く関わっているからなのだろうか?
……解らない。今、ここで考えてみても解るはずも無かった。
……ここで、物語を戻そう。
どうして俺がこんな目に合っているのか、少しずつ語っていくことにしよう。