「レックウザを呼び出すためにカイオーガとグラードンの戦いを再現した……。それはなんて恐ろしいことなんだ……!」
ダイゴさんは狼狽える。確かにカイオーガとグラードンの争いは酷いものだった。それは、俺自身も実感していた。
それを実現したのがヒガナだというのか?
ヒガナの話は続く。
「私は別にあなたたちの考えを否定するつもりはないんだ ……ただね、きちんと考えてほしいんだよ。必要な犠牲と、不必要な犠牲……そのふたつがあるということを。……やるせないな、ここは宇宙センターだろう? これだけの知恵と技術を持つ人たちが集まっているのに。0から1を生み出さず、考えなしに過去の過ちを繰り返し……その結果、新たな過ちさえも 犯そうとしている。その事実にどうして気付こうとしないの? どうして目を背けようとしているの?」
「……何を」
ダイゴさんはヒガナを睨みつける。
「ここが宇宙センター……ふうん、オモチロイことになっているんだなあ♪」
声が聞こえた。甘だるいような、狂ったような、声だった。
「君は……確か!」
ダイゴさんは見たことがあるらしい。
「元チャンピオンに……博士に……君は見たことないけれど、その後ろにいるのは……ああ♪ まさかここで出会うなんてネ」
紫色の髪をしたタイトスカートを履いた女性だった。その格好は特徴的なフード、全体的に赤く、その格好をしている人間等たった一つしか見受けられなかった。
マグマ団。まさかこの世界でも活動しているとは、知らなかった。まあ、グラードンとカイオーガが復活したということは、マグマ団がいるということは確定事項だったけれど。
「オモチロイ、オモチロイ♪ まさかこんなトコロで会えるなんて思わなかった。こんなところでリーダーマツブサの復讐ができるなんて思えなかった♪」
笑みを浮かべて俺に近づいてくるマグマ団団員。
……あいつはいったい誰なんだ?
「そうか、そういえば幹部のカガリとやらもメガストーンを持っていたね。……だったらそれも使ってしまうのが一番、だね!」
ヒガナは腰につけていたモンスターボールを手に取ると、それを投げた。
そこから姿を現したのは、ボーマンダだった。
「ボーマンダ!?」
「……………………アナライズ、します」
対してカガリ――ほんとうにカガリなのか? 俺の世界で見たカガリとはまったく別人に見えるのだが……――もそう言って、モンスターボールを投げた。
出てきたポケモンはバクーダだった。
そしてお互いにキーストーンに触れる。
「メガ……シンカッ!!」
バクーダとボーマンダが七色の眩い光に包まれる――!
「これが……『メガシンカ』……?」
俺は思わずそう呟いていた。
ヒガナのボーマンダの翼が違っている。強いて言うなら、『メガボーマンダ』か。
カガリのバクーダも身体が倍近く膨れ上がっているようになった。強いて言うなら、『メガバクーダ』といえばいいだろうか。
お互い、メガシンカした姿は、メガシンカ前の姿とは別のものとなっていた。