「……なあ、ヒガナ。そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか」
空の旅を続ける俺たちだったが、気になることはまだぬぐい切れていなかった。
だから、俺は訊ねた。聞いてもいい事実なのかどうかは解らなかったが、それでも気になる気持ちを消し去ることも出来ない。
「いいよ、普通なら嫌だけれど……。君なら素直に話してもいいかもしれないね。それに、私のことを話してもいい相手だと思うし」
「それっていったい……」
「私がどんな存在であるか、どれくらいまで知っているかな。……いや、それは意地悪な質問だったね。だって君は私について何も知らないのだから」
「確かに俺はヒガナのことを何も知らない。……お前はいったい何者なんだ?」
「私はヒガナ。流星の民であり、その伝承を継承する存在。レックウザを来るべき事態に備えるために呼び覚ます……それが私の仕事。そしてそれをする理由は簡単なこと、私はこの世界を救う必要があるから」
「この世界を救うのは……、もちろん君がこの世界を愛しているからなのだろう……。それは僕だって理解できるよ。しかし問題はここから、どうして君はパラレルワールドの存在を知っているんだ? もしかしてあれは、君の考えた空想であり妄想だったのではないか?」
「……疑問に思うのは当然かもしれない。でも私とあなたの境遇は非常に近しいものだとわかれば、きっと君は協力するはず」
その言葉に俺は首を傾げる。
「協力するはず、とは随分と言い切ったな」
「この世界はパラレルワールド。確かに私はそう言った。そこまで言い切る理由は私がこの世界イコールパラレルワールドであるという確固たる証拠を得ているから。……当然よね、それくらいしなくちゃ、無理に決まっているというのに」
「パラレルワールド。そうだ、そこは俺も気になった。……嘘では無いんだよな?」
「嘘なわけがない。そんな本物めいた嘘を吐くことが出来ると思っているの? ……まあ、今はそれについて議論している場合じゃないのは確か。だからといって、私がそれについて間違いを是正するつもりは無いけれどね」
ボーマンダに指示を出したヒガナ。そしてそれを聞いたボーマンダは滑空する。
「お、おい……! いったい、どこへ向かう気だ!」
「話を空の上でしてもいいんだけれど、そう長い話でもないし。取りあえずあの小島にでもいこうかな、って。私の秘密基地があるからね!」
「秘密……基地?」
秘密基地。
その単語を知らないわけではなかった。むしろよく知っているといってもいい。秘密基地はトレーナーにとっての第二の家だ。『ひみつのちから』という技マシンを使って、その技を覚えさせたポケモンに、ある場所でその技を使わせると秘密基地をつくることが出来る……というものだ。
その、秘密基地へ向かうと?
「秘密基地を知らない、なんてことはないでしょう? 私が暮していた場所だからね。防犯性も富んでいるから、そこで話をするのがベストというわけ。さ、ボーマンダ。急いでそこへ向かって」
一啼きして、ボーマンダはその場所へと向かった。