デルタへといたる道   作:natsuki

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第十四話

「……次に私の話を始めよう。なに、そんな長い話にはならないよ。ただ、少しばかり話が長くなるだけ。そう長くならないように努めるけれどね」

 

 ヒガナはそう長い前置きをして、話を始めた。

 

「だが、まずその前に、シガナについて話をしなくちゃいけないね」

 

 シガナ? 突然登場したキャラクター名に俺はどよめいたが、すぐにそれが何なのか理解した。

 ヒガナの足許に一匹のゴニョニョが居たからだ。おそらくそのポケモンがシガナなのだろう。

 

「おー、シガナ。私のことがやっぱり好きなのかー?」

 

 ヒガナはシガナの頭をなでる。それはまるで娘に愛情を注ぐ母親のようだった。

 俺がじっと見ているのをヒガナも理解していたらしく、しばらく頭を撫でていたが、それをやめ、俺のほうを向いた。

 

「……君はシガナを見て、何だと思っている?」

「何だと……って、そりゃポケモンだろ。ゴニョニョ。生息地は……カナシダトンネルだったかな」

「そうだ。普通の人間はそう答えるんだよ。このポケモンはゴニョニョで、カナシダトンネルを生息地にしている。かすかな音でも聞き取れるために、工事用機械が搬入できないとか言って、騒ぎになっていたっけね」

 

 そういえばそんなこともあった気がする。

 だが、それがどうしたというのだ。

 それとヒガナに……何か関係があるのだろうか。

 

「あなたは信じる? ……ポケモンだけが暮らす、まさに理想郷のような場所を」

 

 唐突だった。突然にそう告げられ、俺は何も言えなかった。ただ、ヒガナの話をゆっくりと噛み砕いて理解するしかなかった。

 ……ポケモンだけが暮す、理想郷?

 そんな場所、そんな世界がそんざいするのだろうか。いや、もしかしたら人間に開拓されていない未開の地ならば、あり得ることかもしれないが。

 

「シガナはそんな世界に居たゴニョニョ。……正確には、私の娘と言ってもいい」

 

 ……娘?

 

「娘と思えるほど、愛情を注いでいるということだよ。……シガナは人間だ。ポケモンじゃない。今はこんな姿をしているけれど……実際、彼女は人間なんだよ」

「……すまん、話の流れについていけないんだが……。それってどういうことだ?」

「『じくうのさけび』」

 

 ヒガナはある単語を呟いた。

 聞いたことのない単語だった。

 

「時空を超えるときに突然そういう現象が起きるらしいんだよ。小さいものだったら持っていた荷物が姿を消したり逆に増えていたり……場合によっては、人間がポケモンになってしまうことだってあり得る。そしてその『じくうのさけび』を経験した、ポケモンになった人間は必ずその現象に基づいたある能力を手に入れることが出来る」

「……能力?」

 

 ヒガナはずい、と一歩前進する。

 

「未来予知、あるいは過去のことを知ることが出来る、サイコメトリーめいた現象のことだよ。私はポケモンになってしまったシガナと再会し、その能力を得たシガナと会話して、そして……今回の『災害』が起きることを知ったというわけだ」

 


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