デルタへといたる道   作:natsuki

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第十八話

 プロジェクトAzoth。

 それについて俺は聞いたことなんて無かった。別に語られることでも無かったからかもしれない。しかしながらそれについて何も知らないまま、物語が進むのもおかしな話だ。

 

「プロジェクトAzothは、ポケモン協会とマグマ団が再現しようとしていた、ある計画のこと。ああ、勿論それぞれは別々に行動していた。お互いがお互いにそのような計画を進めているなど知る由もなかっただろうね」

 

 ヒガナの話は続く。

 

「プロジェクトAzothはレックウザを呼び出し、世界を一度リセットさせるということ。グラードンでもカイオーガでもよかった。レックウザが出てくるくらい暴れてくれればよかったのだから。それさえしてくれれば、あとはどうだってよかった。勝手にレックウザが粛清の彷徨を放ち、グラードンとカイオーガが暴れつくしたところで解散する。そして、残されたのは破壊された地方のみ。……まあ、問題はその後だけれどね」

「その後?」

「考えてもみなよ。そのあとに開拓するのは誰になる? ポケモン協会かもしれないし、マグマ団かもしれない。アクア団の可能性だって考えられる。それに乗じて世界を乗っ取ることだって不可能じゃないはずだ」

「でも……それ程の災害が起こった時、人々はどこへ避難する!?」

「ニューキンセツに行ったことはあるか? この世界のニューキンセツは閉鎖されている。計画が失敗したから、とね。しかし実際は違う。実際には地下にニューキンセツは実在している。ホウエンの全人類を入れても余裕で間に合うくらいの……ね。もっとも、ポケモン協会が考えていたのはさらに上を行くものだったけれど」

「さらに……上を行く?」

 

 俺はもうヒガナの話を聞くだけで精一杯だった。

 ヒガナが何を言っているか解らなかったが、理解するよりもまず話を聞き終えることを選んだためだ。

 プロジェクトAzothについて聞いて、理解せねばならないのは確かだが。

 

「ポケモン協会は世界の現状にほとほと困り果てていたそうだよ。特にポケモンマフィアであるロケット団の台頭から世界は狂い始めたと語っている。それもそうだよね、ポケモンマフィアである彼らはポケモンを道具として扱う。それによって、ポケモンはいい金儲けの道具に変換されてしまうわけだ。今まで野生でのびのびと過ごしていた彼らも、ロケット団に捕まってしまえば何千円の価値でしかない。そうでしか扱われなくなる」

 

 ロケット団。噂には聞いたことがある。カント―地方を中心に活動していたポケモンマフィアで、確か数年前に一人の少年によって壊滅させられたと聞いたが……。

 

「そう。ポケモンマフィアは数年前にレッドという名前の少年に壊滅させられた。確かにそれは君の考えている通りだよ」

 

 ヒガナは俺の心を読んでいた。

 

「……ならば関係ないんじゃないのか? ポケモンマフィアが壊滅したというのなら、彼らによる犯罪が消え去ったんだろ?」

「そうなるほど、世界は甘くない」

 

 ヒガナの言葉は冷たいものだった。

 


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