ベッドから起き上がり、机に置いてあるモンスターボールを確認する。
それが俺の日課だ。モンスターボールからポケモンのテンションとか体調などを確認することで、休ませるなどの行動をするのが俺の大切な役目。
思えばその時から異変は始まっていたのかもしれない。
「……ん? 何だ、これは」
ポケモンが違う。
いや、正確にはポケモンはほぼ同じだ。
問題はポケモンが持っている七色に輝く石。
「ラティアスなんて持っていたか……?」
モンスターボールに入っているラティアスは俺の顔を見て微笑む。
俺、ラティアスを捕まえた覚えが無いのだが……。まあ、四百体近い全国図鑑をほぼ埋めたのだから、少しくらい捕まえたタイミングを忘れていてもおかしくはない。
「……ん、何だ?」
そこにあった、リングを見るまでは。
リングにはポケモンが持っているもの同様七色に輝く石が埋め込まれていた。
「これはいったい……?」
……っと、そんなこと考えている暇は無かったな。
そう思うと、着替えてモンスターボールを腰に装着して、準備万端。これで冒険の準備は完璧だ。……忘れてはいけないものがあった。帽子も被らないといけないな。
階下に降りると父さんと母さんが談笑していた。
父さんはトウカジムのジムリーダー。
だからいつもは家にいない。
「あれ、父さん。珍しいね。家に帰っているなんて」
「休みだったからな」
「知らなかったよ、事前に連絡してくれてもいいんじゃない?」
「急にとれたものでな。済まない」
父さんは頭を下げる。
母さんが笑みを浮かべ、近づく。
「そういえば、あなたに渡したいものがあるのよ」
「俺に?」
母さんはチケットを俺に手渡した。それも二枚。
チケットを見て俺はその文章を読み上げる。
「トクサネ宇宙ショー 特別招待券……?」
「ほんとうは母さんと行く予定だったのだがね、私がジムの仕事が入ってしまったんだよ」
答えたのは父さんだった。
「それで? 俺に渡しても相手なんて……」
「何言っているんだ。お隣のハルカちゃんが居るじゃないか。彼女と一緒に行ってきたらどうだ?」
ハルカ。
そうだ。憎きライバル、ハルカ。
橋の下で待ち伏せしていることもあった。天気研究所の事件を終わらせたのを見計らって登場することもあった。どちらにせよ、いつも俺の一歩先を進んでいたあいつ。
はっきり言って、あいつは大嫌いだ。
そんなやつと天体ショーを見に行く? 何を言っているんだ、父さんは。
「さあ、行ってこい。たまにはバトルをせずにこういうイベントをするのもありだぞ。父さんも若い頃は母さんと天体ショーを見たものだよ。えーと……シシコ座流星群だったかな? それを見に行ったものだよ」
「何言っているの、あなた。シシコ座流星群は今回のイベントで見ることが出来るものよ」
「おお、そうだったか。これは失敬。それじゃ、私はジムにもどるよ」
そう言って父さんは足早に去っていった。
「……まったく、ほんとうに父さんは仕事人間なんだから」
そう言った母さんの顔は緩んでいた。ラブラブってやつだ。
……ここで、違和を覚えた。
そもそも天体ショーを見る施設がホウエンにあっただろうか? トクサネと書いてあったがあそこは宇宙センターしかない街だったはず。そんなものが見ることの出来る会場なんて……。
「気は進まないが、とりあえずハルカの元に行くしかないのか……」
溜息を吐いて、俺は家を出た。