「さて、向かうことにするか」
ヒガナは翠色の宝珠を持って、うなずいた。
俺はどうすればいいのか解らなかったから、とりあえずヒガナのボーマンダに乗り込んだ。
「これから向かうのは、空の柱。間違っていないよな?」
「うん。正しいよ。空の柱に向かえば、そこにはレックウザが目覚める準備をしている。そこへ向かえばいい」
「向かえばいい……とはいうけれど、俺は何をすればいい? だって、何も見つからないんだぜ。何も持っていないと思うんだけれど……」
「それは問題ない。すでにこちらで用意している。あなたが元の世界へ戻るにはレックウザによりこっちの世界で隕石を破壊しなくてはならない。だから、あなたもレックウザの場所に居るほうがいいってこと」
「……そうか」
俺はすぐにヒガナが何かを隠しているのではないかと思った。
しかしそんなことよりも、この世界を救うべきだと思った。
たとえそのあとに何かあろうとも――それは世界の選択だ。
そして俺とヒガナはボーマンダに乗り込み、空の柱へと向かった。
そのころ。
「ルチア、来てくれたのか」
空の柱の前に立つミクリの前に、ある少女がやってきた。
ルチア。
コンテストアイドルと言われる彼女は毎日多忙の生活を送っている。
そんな彼女が今悩んでいるのは、盗まれたキーストーンのありかだった。
「おじさま、キーストーンを持った犯人はほんとうにやってくるんですか?」
「ああ、確実だ。だが……ルネの民として、違和感を覚えるのだよ。ヒガナと呼ばれる少女は何のためにこの空の柱へとやってくるのか? この場所を選んだのか? きっとダイゴもそれを理解しているのだろうね」
「それって……」
ルチアもルネの民である。
知らないわけではない――ルネの民に課せられた役目を。
ルネの民はメガシンカの仕組みについて詳しい。ルネに落ちた隕石のことについて、レックウザについて、そして『デルタ』について知っている。
「すなわちここがデルタへと至る道、その序章となるわけだよ」
ルチアは首を傾げる。
「おじさまはすべてを知っているのかもしれませんが……私は、ルチアはあまりそれを理解していません。だって、ほんとうに起きたかどうかも……」
「もしこれが落ちてこなかったら、もしメガシンカが無かったら、この世界はどうなっていたのだろうね。このような事態になった時、彼らはどのように解決するのだろうね」
ミクリの言葉に、ルチアは頷く。
「私たちの問題は私たちで解決する……ということですよね?」
「ああ、そうだ。通信ケーブルで別の場所に飛ばすことを、ダイゴもまだいいものとは思っていないらしい。やはり彼も良心が痛むのだろうね。確かにそうだ。もし別の人間が住む惑星があったら、そしてその惑星が隕石の問題を解決できるほどの科学力をもっていなかったとしたら……ひやひやするよ。この世界だって考えられたことだからね」