ダイゴもミクリも、自分の立場をよく理解している人間である。
だからこそ、自分の立ち位置で何をすることが出来るのか、よく解っている。これをせねばならない、あれをせねばならないという、比較的自分のことを客観的に見ることが出来る。
そうでなければ、二人ともそれぞれチャンピオンとジムリーダーに上り詰めることは出来なかっただろう。
「でも、おじさま? これからどうするの? このままだとやってくる二人に向かい打つことしかできない、ってことになるのだけれど」
「そうだよ、ルチア。その通りだ。このまま僕たちはここで彼らを迎え撃つ。……ただし、完全に倒すのではない。彼らを試す、と言ったほうがいいかもしれないね。それによって世界の運命がどうなるのか決まると言っても過言では無いけれど」
ミクリは飄々とした様子で言った。
しかし彼女は解っていた。それはとても難しいことであると。
ヒガナとユウキも、どちらも強い人間であることは彼女も知っていた。特にヒガナからはキーストーンが盗まれたということもあり、どうにかその敵を討ちたかった。
そしてミクリからの呼び出しだ。彼女はキーストーン……メガシンカするための『絆』を示すもの、を取り戻すためにここにやってきたということだ。
「……怖いのかい?」
ミクリは言った。
ルチアは首を横に振る。
しかし、彼女は怖かった。ヒガナとの戦闘を思い出したからだ。あの圧倒的戦力差にどう立ち向かえばいいのか――彼女は解らなかった。
だからこそ、ルチアはキーストーンを取り戻したかった。それと同時に自分が常日頃どれ程メガシンカをバトルの比重で重きを置いていたかを実感させられた。
キーストーンは返してもらう。けれど、自分はメガシンカに頼らない戦闘をしていかなくてはならない――それが彼女の決意でもあった。
「あとはダイゴさえ来ればいいのだけれど……まだかなあ。彼は最近というか、前からというか、時間にルーズなのだよね。昔から彼と友達の僕だから言えるけれど、もう少し時間をきちんと守ってほしいものだよ」
ルチアはその言葉を聞いて、心の中で微笑んだ。
ああは言っているが、ミクリとダイゴはとても仲良しである。かつてミクリがポケモンリーグを制覇したとき、ダイゴはその強さを認めた。ダイゴを倒したミクリもまた、彼の強さを認めていた。
それから彼らはともにポケモンバトルの修行をする程の仲にまで成長していったのだ。
「ダイゴさんとは、いったいいつからの仲でしたっけ?」
ルチアは悪戯っぽく笑みを浮かべて、ミクリに訊ねる。これを訊ねるのははじめてのことではない。しかしまだ時間があるということもあり、彼女は昔話を聞く感覚で(実際にそうなのだが)彼に訊ねたのだった。
ミクリは何も言わず微笑むと、話を始めた。
まだ彼がルネシティジムリーダーとなる前の話。
そしてダイゴがポケモンリーグチャンピオンとなる前の話だ。