「……確かに話す機会は幾度と無くあったかもしれない。けれど、私はあなたに話すことは出来ない……」
「どうしてだ! 私たちを信じることが出来ない……そう言いたいのか!」
「……」
ヒガナは答えない。今の状況は彼女にとって圧倒的不利だ。
「隕石が落ちてくるのが解っていたなら、どうしてそれを私たちに伝えようとしなかった! 一言くらい……せめて一言くらい伝えてくれれば! 私たちだって何か考える時間もあったというのに!!」
確かにその通りだ。
むしろここまで二人でやってこられたのが不思議なくらいなのだから。
「……それは申し訳なかった」
そして、
ヒガナはようやく――頭を下げた。
「でも、ここから先は私とユウキだけにやらせてもらうよ。ここから先はもう……流星の民である私の役目だ」
「レックウザを呼び出すということが……か。噂によれば、エネルギーはキーストーンに埋め込まれているのだったか?」
ヒガナは頷く。
それを聞いてダイゴは目を瞑る。
「……解った。ミクリ、彼女を通してやってくれ」
「いいのか?」
ミクリの言葉に頷く。
「ミクリ、君も聞いただろう。彼女の決意は固い。きっとここで止めようとしても無駄だ。ただ、これだけは約束してほしい。……ヒガナ、必ずこれが終わったら、迷惑をかけた人間に誤ってほしい。君の行為は正しいものなのかもしれない。まだ結果がでていないから解らないけれどね。結果がどうであれ、君が多数の人間に迷惑をかけたのは事実だ。だから、それについての謝罪をしてほしい」
「……解った」
ヒガナの言葉に頷き、ダイゴとミクリ、それに……誰だろう? 派手な格好をしたアイドルのような少女は去って行った。
「さてと、これから向かいましょうか」
「……なあ、ヒガナ。一つ聞きたいことがある」
先ほどの会話で違和感を覚えた。
どうして、俺を必要とするのか――ということについてだ。
それをヒガナに訊ねるとヒガナは悲しげな表情を浮かべ――ただ、こう言った。
「この世界での歴史を書き換えてしまったとき……私とシガナ、それにあなたはどうなるのだろうね?」
衝撃だった。
それは聞きたくなかった言葉かもしれない。
いや、もしかしたら今聞いておいて正解だったかもしれない。
いずれにせよ、その言葉を聞いて――俺は一瞬理解を失った。
「まあ、聞いたら驚くのは当然だよね。いつ言うか悩んでいたのだけれど……このタイミングで言うしか、もう無いんだよね。ごめんね、言う機会がいっぱいあっただろうに、こんなギリギリで伝えることになって」
「……それはほんとうなのか?」
「何が?」
「だから、この世界の歴史を書き換えると――」
「――私たちは消えてしまうだろうねえ。きれいさっぱり。記憶は未だ覚えているかもしれないけれど、それでも、私たちが別の世界に行ってしまったなんて解る人は少ないだろうね。流星の民……その中でもばば様くらいしか解らないかもしれない。もともとこの世界は隕石をほかの世界に飛ばす予定だったのだから」
「ほかの世界……それが、俺のもともといた世界だということか」
ヒガナはそれにゆっくりと頷いた。
そして歩き出す。
「……積もる話もある。まずは、空の柱に描かれた壁画……レックウザの伝承についてだ。それから話すことにしよう」
ここまで来て、俺は否定することなど無い。
ヒガナの指示に従い、俺たちは空の柱へと入っていった。