デルタへといたる道   作:natsuki

26 / 61
第二十五話

 空の柱へ俺とヒガナはやってきた。

 空の柱は俺が思っている以上に古びた造りになっていた。俺が訪れた記憶のある空の柱は崩れる床があった程度であとは塔の形を保っていたのに……。

 今はその形を保っているのがやっとで、中身はボロボロだった。

 

「これが……空の柱? 何だよ、ボロボロじゃないか」

「これがこの世界の空の柱だよ。崩壊しつつある世界のなれの果てだ。……レックウザの伝承の記憶が人々から薄れつつあるのが原因かもしれないね」

 

 レックウザの伝承。

 それはヒガナから語られたあのことなのだろうか。それともそれ以上の何か……なのか。

 ヒガナの話は続く。

 

「レックウザの伝承についてはまだまだ謎が多い。だけれど、私たち流星の民は空の柱に描かれている壁画……それに残されたものを、レックウザの伝承として取り扱っている」

 

 レックウザの伝承、か。

 聞いたことが無くてもレックウザというポケモンの名前くらいは誰もがきいたことがあるかもしれない。第三の超古代ポケモンにして、グラードンとカイオーガが太古の昔に暴れたときにそれを苛めた存在とも言われている。

 その強さは中立を保っているものの、グラードンやカイオーガを凌ぐ。

 そしてレックウザの伝承……。それを守るヒガナ以下流星の民。

 

「それじゃ、さくっと話しちゃおうかな。まずはこちらの壁画をご覧下さあい」

 

 バスガイドよろしくヒガナは壁を指さした。俺はそれを目で追った。

 ――そこにあったのは、巨大な壁画だった。人々が何かを崇めているようにも見えた。その崇めている対象は……隕石?

 

「三千年前、ちょうどここがまだホウエン地方と呼ばれる、はるか昔のこと。このあたり近辺……今でいえばルネシティのところに隕石が落下した。それは巨大な隕石だった。隕石が落下した島は大きく窪み、そこに雨水がたまって湖が出来た。そしていつしかその湖は海と繋がり……気づけば一つの町を作り上げていた。それがルネシティの始まりだと言われている」

「ルネシティは休火山にできた町では無かったのか?」

 

 少なくとも俺の世界で言われている『ルネシティ』はそうだった。

 俺の言葉にヒガナは首を横に振った。

 

「確かにその通り。そう呼ばれているのはあなたの住んでいた地方。そして、私の住んでいた地方でもある。隕石が落下しなかった世界。そして……メガシンカが発見されなかった世界でもある」

「メガシンカが発見されなかった?」

 

 俺は反応してみせたが、それに対して特段気にしているわけではなかった。だってそもそもがメガシンカのない世界で暮らしていたわけであって、メガシンカに対する意味も殆ど無い。それに俺はメガシンカの条件を満たしていないのか、一度もメガシンカが出来なかった。

 ヒガナは笑みを浮かべ、俺の言葉に反応する。

 

「別にわざとらしく反応しなくてもいいよ。……だって、あなたがそこまで反応する程メガシンカに関わっているわけではないもの。さあ、行きましょう、伝承の続きは次の階で教えてあげる」

 

 その言葉を残し、ヒガナは次の階へと進む階段があるほうへと向かっていった。

 俺はそれに少しだけ躊躇して――ヒガナの後を追った。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。