ハルカと俺の家は隣同士だ。というか、ミシロタウン自体がそれくらいしか家がない。とても長閑な田舎町になる。
というか、あまり会いたくないのが現状。
ずっと一歩先を行っていたくせに、「私は私のやることがあるから」などと抜かしてさっさと居なくなってしまった。
俺にとっては侮辱と言ってもいい。だから、会いたくないのだ。
「……でもなあ」
父さんの言うことを断るわけにはいかなかった。断ったが最後、ケッキングの猛攻をくらうのは確かだ。……となると、
「やっぱり行くしかない、というわけか」
そんなつぶやきをして、俺はハルカの家へと向かう。
「やあ、おはよう」
……そんな時だった。
目の前に、薄汚いマントをつけた少女が立っていた。
傍らにはゴニョニョも居る。
「いやあ、いい場所だね。ミシロタウン。空気も綺麗だし!」
俺のことばを挟むことなく、その少女は言った。
「……誰だ、おまえ?」
「私かい? 私の名前はヒガナ。まあ、きっとまた会うことになると思うよ。……それにしてもここはいいところだね」
ずい、と一歩前へ動くヒガナ。
ヒガナは耳元で囁くように言った。
「この世界と別の世界がある……そう言われたら、あなたは信じる? 信じない?」
それを聞いた俺に、衝撃が走る。
「おい、それはいったい――!」
「それじゃ、またねー」
――俺の問いかけを最後まで聞くことのなく、ヒガナという少女はどこかへと消えていった。
それにしても、あのヒガナが言った最後の言葉が引っかかる。
――この世界と別の世界がある
それはつまり、俺が居た世界と今の世界を表現しているのではないだろうか?
ふと俺は無意識に装着したリングを見る。リングに填められた石が鈍く光を放っている。
この世界はいったい、何が起きた世界だというのか?
俺がチャンピオンになった世界とは――どう違うというのか。
俺はそれが知りたかった。
生憎、ラティアスを持っている。空を飛ぶポケモンだ。
先ずはホウエンを空から見るのも悪くない。そう思うと、俺はラティアスをモンスターボールから出した。
◇◇◇
上空からホウエンを眺めると、その光景は僅かに俺の知るホウエンとは違っていた。
一番の変化といえば、キンセツシティ。
俺の記憶が正しければキンセツシティはただの街だったはず。それが城塞都市のように壁に囲まれている。
「……先ずはあそこに向かってみるとしよう」
もしかしたら何か手がかりが掴めるかもしれない――そんなのぞみをもって、俺はキンセツシティへ降り立った。