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ホウエン地方のとある倉庫。
一人の少年が本棚を見つめていた。
取り出したのはとある一冊。
「かつて、ホウエン地方には超自然的エネルギーがあった。しかし、いつかはこの超自然的エネルギーも消えてしまう。伝説のポケモンがこのホウエンに垣間見えるようになったのも、これが原因だったのか……?」
そこに記されていたのは光輪を持つポケモンだった。
「フー……パ? 聞いたことないポケモンだ。こんなポケモンが居れば、どんなものだって取り寄せてしまう。きっと……あのポケモンだって」
『あら、ここにいたの』
声が聞こえた。
メイド服を着た若い女性だった。赤い髪はツインテールのようにしている。
「だってここに居るって言っただろう? 俺はいつもここにいるよ」
『もう少しだけ……時間がかかるかもしれない。けれど、ごめんね。きっといつか彼らも忘れていくはずだから……』
「ほんとうならば、俺も出ていきたいところなのだけれどね。さっきまでだと出ていたら捕まってしまうと、いろいろと問題があったけれど……。なあ、まだ俺は外に出ることを許されないのか?」
『ごめんなさい。多分未だ……終わっていないから』
音が聞こえた。
女性が何かを感じ取った。
『ちょっと出てくるわね』
「ああ」
女性は少年と別れて、玄関へと向かった。
玄関に居たのはボーマンダだった。
『ボーマンダ!』
『遅れてしまって済まなかった。……彼女から渡されたものを届けに来たよ』
『ということは……彼女は元の世界に戻ることが出来たのだね』
『そういうことになるな』
頷くボーマンダ。
それを聞いて、リンゴを差し出す女性。
『それじゃあなたも、ここで過ごすことになるのよね?』
『まあ、そういうことになるだろうな。彼女がああなってしまったからには、私も主を探さねばなるまい』
『だったらここに……』
「ボーマンダじゃないか。どうしてこんなところに?」
声を聴いて女性は振り返る。
そこに居たのは少年だった。
『よう、久しぶりだな!』
「ああ、久しぶりだな。……ヒガナは?」
『……彼女は帰ったよ』
それを聞いて、少年は俯いた。
「……そうか。それなら、仕方がないよな」
『ボーマンダが渡したいものがある、と。そして、あなたとともに活動したい……そう言っています』
「つまり、仲間になりたいってことか? 俺は別に構わないよ。それで……渡すものとは?」
ボーマンダが差し出す。
それは、七色に輝く石――ボーマンダのメガストーンだった。
「これは……ボーマンダナイト……」
ボーマンダナイト。
それを持つことでボーマンダがメガシンカすることのできる石だった。
「ヒガナがこれを俺に託した、ということは……。彼女はもう、これを使うことが無い、ってことか……」
少年は考える。
そして、少年は少しして、うなずいた。
「解った、ヒガナ。俺はお前の意志を継ぐ。お前に助けられた命――、そして、ラティオスに救われた命――、決して無駄にしない」
少年の名前はユウキ。かつてホウエン地方を制覇したチャンピオンの名前だ。
そして彼女の名前はラティアス。
今の彼女は人間の姿だが、これは兄であるラティオスと流星の民であるヒガナから指示を受け、ユウキの補佐を行っているポケモンが、ガラスのような羽毛で光を屈折させ変化しているように見せかけている姿だった。
To the next adventure...
第二部「光輪の魔神」へつづく。