デルタへといたる道   作:natsuki

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第二部、思ったより早く書けましたので、早くスタートします。
だって、お待たせするより早く始めたほうが……断然いいですものね。




第二部:光輪の魔神
第一話


 かつてのチャンピオン、ユウキがレックウザによって世界を救って一ヶ月――。

 人々はユウキによって世界が救われた事実を、徐々に忘れつつあった。

 だが、そんなこと無く、未だ風化しない場所があった。

 ミシロタウン。

 そこに住むハルカという少女は、ポケモン研究の権威であるオダマキ博士の娘である。

 彼女はオダマキ博士と同様フィールドワークをすることで、一帯のポケモンを調査している。

 

「103番道路のポケモンはこのくらいかな……」

 

 特にグラードン、正確には隕石落下未遂からポケモンの生態系は再び大きく変化した。

 

「あ、こんなところにいたのか」

 

 声を聴いて、ハルカは即座に振り向いた。

 彼の面影があったから――。

 

「ユウキ!?」

「……違う。僕はツワブキダイゴ。名目上、元チャンピオンと呼ばれている人間だよ」

 

 それを見てハルカは溜息を吐く。

 彼女がユウキだと思ったからだろうか?

 

「……騙したつもりは無いが、もしそう思ったのならば、済まないことをした。だが、どうしても話さなくてはならないことがあってね」

「話さなくてはならないこと?」

「ああ。取りあえず、君の家へ向かわないか? ここではいつどこで聞かれるか解ったものじゃない」

 

 その言葉に、ハルカは頷いた。

 

 

 

 

 ハルカの家。

 ダイゴはハルカの母親からもらったお茶を一口。

 

「申し訳ありませんね、急に押しかけてしまって……」

「いえ……。別に問題ありません。それよりも……どうしたのですか、急に」

 

 ハルカの母親はダイゴに訊ねる。

 ダイゴも特に時間稼ぎをする必要も無いと思い――告げた。

 

「ハルカちゃん、もしユウキくんが生きているとしたら、どうする?」

 

 衝撃だった。

 だってそれはずっと考えていたことだが、あり得ないと思っていたことだからだ。

 

「あり得ない……そう思っているかもしれない。だが、それはあり得ることだ。この手紙を見てほしい」

 

 そういってダイゴはあるものをとりだした。

 それは手紙だった。

 

「ヒガナという少女のことは覚えているね?」

 

 ハルカは頷く。忘れるわけがない。ハルカからキーストーンを奪った相手だ。のちにダイゴからキーストーンを返却してもらったが、彼女自身は消えてしまったため、未だ彼女はヒガナに対して怒りを募らせていたのだ。

 

「この手紙にこう書かれている。『ユウキは今、別の場所に居る』、と」

「それじゃ……レックウザで戦ったユウキは生きているということですか?」

「話すと長くなるのだが……ユウキくんはレックウザとともに隕石を破壊していない。そのユウキくんはヒガナとともにこの世界にやってきた、すなわち、別の世界のユウキくんだ」

「……パラレルワールド、ということですか」

 

 ダイゴは頷く。

 

「僕ははっきり言って半信半疑だったよ。だが、ついに情報を掴んだ。彼が生きているという情報を」

「どうしてですか?」

「こころのしずくというものを知っているかい? これはラティアスの心を映したものらしくてね。かつて、ラティアスから何かあった時に、と譲り受けたのだが……それを通して『彼女』から交信があった。そしてその交信で……こう語られた」

「ユウキくんが、新たな巨悪からあるポケモンを守るために旅に出た、と……」

「新たな巨悪……」

「それについては教えてくれなかった。だが、今ユウキくんは再び戦っている。どうだい、彼に会おうとは思わないか?」

 

 その言葉に、ハルカは頷いた。

 その選択しか、彼女には残されていなかった。

 

 

 

 

 

 そして、ダイゴとハルカの、ユウキを探す旅が始まった――!

 

 


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