ヒワマキシティ。
ツリーハウスが立ち並び、緑が生い茂る町だ。
そこにハルカとダイゴはやってきた。
「ヒワマキに誰か居るんですか?」
ハルカの問いにダイゴは答えない。
ハルカは少しだけ不機嫌になりながら、彼の跡をついていく。
「ここだ」
彼が立ち止まった――その先にあるのは、ヒワマキジムだった。
「ここって……ヒワマキジムですよね? どうしてここに?」
「それは見ればわかるよ。彼女に会いに行くんだ」
そしてダイゴはジムの中へと入って行った。
ヒワマキジム内部では、一人の女性が待ち構えていた。
「待ち草臥れたぞ、チャンピオン」
その言葉を聞いてダイゴは笑みを浮かべる。その皮肉交じりの言葉も、そう珍しいものではないのだろう。
「すまなかったね、ナギ」
ヒワマキジムジムリーダー、ナギ。
彼女は飛行タイプのジムリーダーであり、彼女自身空を飛ぶ。……勿論風に乗って、ポケモンとともに、であるが。
「今回チャンピオンに伝えるべき情報はこれだ。まったく、骨が折れたよ」
そういってナギはある紙を手渡した。
それを見たダイゴは――驚愕の表情を浮かべる。
「おい……。これはいったい……」
「一番つらいのはチャンピオンである君かもしれないね。でも、これは事実。……あら、ハルカちゃんも来ているの」
ようやくここでナギはハルカの存在に気が付いたらしい。ハルカはそれを聞いて頭をさげる。
「……どういうことだよ、これは」
「どうしたんですか、ダイゴさん?」
「第三の超古代ポケモン、レックウザについて知識はどれくらいある?」
突然ダイゴはハルカに訊ねた。
ハルカは首を傾げつつも、自らの知識を示した。
「レックウザは空の柱にいるポケモンです。大気層の中に住んでいて……ということくらいしか解りません。あくまでもポケモン図鑑の中に書かれていることだけになりますけれど」
「そう。それだけで充分だ。……ここに書かれていることを要約すると、新しい巨悪が蔓延っているらしい。それも、陸と海ではない、別の存在」
「それは……」
「空、だ。陸も海も関係ない。自分たちは空に生きるのだと。そして、そのために……大地を、海を、破壊する……。そういう組織が居るらしい」
「その、組織の名前は?」
「その名前は……スカイ団」
ダイゴは重々しく、そう呟いた。
バトルリゾート。
高級リゾート地であるここにはバトルハウスがあり、名前の通りバトルを追い求める人間たちが集まる場所である。
その、とある家。
「……まさか、君が私の元を訪れるとはね」
その男はかけている眼鏡を上げて、小さく溜息を吐く。
「かつては人類の幸福を追い求めるために、大地を増やそうと考えていた。だが、大人には次の世代を受け継ぐ義務がある。だからマグマ団を再編して、今はバトルリゾートでバトルの腕を鍛えている……だったよな? マツブサ」
少年は笑う。
かつて、彼は問うたことがある。
ポケモンとは――少年にとってポケモンとは何か、と。
少年は一寸の迷いも無く、言った。
――仲間、だと。
仲間とともに、自分は強くなれたのだと。
それを聞いてマツブサは変わろうと思った。再び自分がトレーナーとしてポケモンと接しても構わないのであれば、今度は少年のようにポケモンを道具と思わず仲間と思おう、と。
少年を見て、マツブサは笑みを零す。
「それで? 何のために君はここまでやってきた? 君が私を訊ねるということは、相当重要な問題が起きていると思うのだが」
「ああ、その通りだ」
少年は頷く。
そして少年の口から、言葉が紡がれる。
「……俺と同盟を組んでくれないか、マツブサ」