デルタへといたる道   作:natsuki

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第四話

 

 同盟。

 それを聞いてマツブサは耳を疑った。

 かつて戦った……いわば敵だった少年が、同盟を組んでくれないか、と提案する? そんなことがあり得るのだろうか?

 

「もちろん、突然言われて驚いているかもしれない。俺はこの間のレックウザ騒動では何もしなかった。はっきり言って、最低な人間だよ」

 

 少年の名前はユウキ。

 かつてカイオーガ・グラードン事件を解決した少年だ。また、隕石騒動においても解決し、その後消息不明となった――そういわれていた。

 だが、彼はいまマツブサの前に立っている。

 それがマツブサにとって驚愕でもあり、興味がわいた。どうして彼が生きているのか、ではない。今の言葉について――気になることしか浮かばないからだ。

 

「レックウザ騒動では何もしなかった……? 馬鹿な、何を言っている。隕石を破壊したのはお前がメガレックウザの力を使っている、と……」

「俺であって、俺じゃない。正確には、別の世界の俺だったんだよ」

「……残念ながら、言葉が理解できないのだが……」

 

 マツブサは顔を顰める。

 それを当然だという目で見るユウキは、話を続ける。

 

「確かにそう思うのが当然かもしれない。だが、これは紛れもない事実だ。別の世界にいた俺が、この世界にやってきて俺の代わりにレックウザで隕石を破壊した。それ以上でもそれ以下でもない」

「……つまり、お前は二人居たということか? あの報道は、ほんとうにお前が死んでしまったわけではなく、別の世界からやってきたお前がメガレックウザの力を使って隕石を破壊し、そのお前は消えてしまった、と……」

「確証は掴めないが、おそらく元の世界に戻った、と思われる。多分だが」

「……そうか。ならば、いいんだが……。ところで、その元の世界について説明してくれるというのは無いのか?」

「して欲しいのか?」

「そりゃあまあ……」

 

 その言葉にユウキは微笑む。

 

「これは、ある少女が残した記録だ。多分俺に残したメッセージだと思う。そしてこれは……この世界を救う、たった一つの方法ともいえるだろう」

 

 そしてユウキは話を始めた。

 

 

 

 

 いつかの時代、どこかの場所。

 とある森に、一つの輪が浮かんでいた。

 その輪は金色に輝き、輪の中は真っ暗だった。

 

『おでまし~!』

 

 その言葉と同時に輪の中からきたのは、一匹のポケモンだった。

 金のリングをつけた精霊のようなポケモン。

 そんなポケモンが笑いながら浮いていた。

 

「……?」

 

 そんなポケモンの目の前には一人の少年が居た。

 そしてパートナーと思われる、一匹のラグラージ。

 すぐに少年はポケモン図鑑を確認する。そのポケモン図鑑は古いタイプのものだ。

 そして、ポケモン図鑑はすぐにエラーを吐き出す。当然だ。そのポケモンは『この時空上』に存在してはいけないのだから。

 

「何だ……このポケモンは?」

 

 だから、彼にはそのポケモンが解らない。

 得体の知らない生き物だ――そう思うしかなかった。

 

「現れたのですね、フーパ」

 

 少年の後ろには、一人の女性が立っていた。

 その女性は白い髪をしていた。

 

「あなたは……確か」

「今はここでどうこう言っている場合じゃありません。彼女も連れてきました。先ずはフーパに従いましょう。話はそれから」

「ちょっと待ってくれ……。全然話が呑み込めないのだが」

「呑み込めなくても結構。とにかく、行きますよ。フーパ、構いませんね?」

『おまかせ~!』

 

 フーパと呼ばれたポケモンは笑いながら言った。

 ポケモンの声を聴き、理解し、話すことが出来る――?

 少年は女性とフーパの会話を見て、そう思った。

 女性は踵を返す。既に全員集まっていた。

 

「さあ、行きましょう。既に行先へと続くリングはフーパが用意しています。あとは意を決し飛び込むだけです」

「あんた……いったい」

 

 少年は呟くと、女性は微笑んだ。

 

「話は後にしましょう。……それに、あなたが知らない世界ではないのは確かですよ? ユウキくん」

 

 そして女性はユウキともう一人の女性の手を握り、そのまま強引にフーパが作った輪の中に入って行った。

 それを確認して、フーパも輪の中へ入って行った。

 輪は小さくなって、そして、消えた。

 


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