デルタへといたる道   作:natsuki

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第三話

 キンセツシティ。

 

「……なんじゃこりゃ」

 

 俺はポケモンセンターの前に降り立って、最初に得た感想がそれだ。

 今まで俺が歩いてきたキンセツシティとは違う。

 今まで俺が理解しているキンセツシティと違う。

 まさに別世界がそこに広がっていた。

 

「これっていったい……どういうことなんだよ……!」

 

 俺はそう思うと、ある場所へと向かった。

 キンセツシティの改造を計画していた人物。それは俺の知っているキンセツシティにも居た。電気タイプのジムリーダーでいつも笑っている、最年長ジムリーダー。

 その名前は、テッセンという男だ。

 

 

 

 ジムにいくとテッセンはおらず、代わりにキンセツヒルズなるマンションの二階へ向かって欲しいとジムの人間に言われた。

 キンセツヒルズとは高級マンションの一つで、マンションの住民による許可が無いと入ることが出来ないらしい。俺がキンセツヒルズに入れるのかどうか解らなかったが、入ることが出来た。

 キンセツヒルズの床はゴミ一つなく綺麗だった。

 廊下を進み、テッセンの家へと向かう。

 ふと、目をやるとそこに表札があった。

 ――力のない男の家。

 

「力の無い男……?」

 

 興味をそそられ、インターホンを鳴らす。

 

「どうしたんだ。俺は何の力も無い男。わざわざ俺に話しかけてくるなんて、君も変わった人間だね」

 

 インターホンから聞こえてきたのは、小さい声だった。声のトーンからして、男だろう。

 俺は訊ねる。

 

「表札を見て少し気になったものでね……。なぜ力の無い男なんてわざわざ書いているんだ?」

「当たり前だ。俺には力が無い。だからそれを自己表現しているんだよ。そうすればあのときだって……俺に力があればシーキンセツの皆を救えたかもしれなかったんだよ……」

「シーキンセツ?」

 

 聞いたことのない単語だ。

 

「聞いたことは無いか? 今はもう寂れてしまったが、自然保護区として有名な場所だ。かつてはムゲンダイエナジーというものを採掘していた。だが俺は……いいや、もう終わった話だ。それに俺は何の力も無い。君、誰だか知らないが、つまらない話を聞かせてしまったね。どこへ向かうのか知らないが、早く向かうがいい」

 

 ……それ以降、その『力の無い男』は話さなくなった。

 取り敢えず、目的は別だ。

 俺はそう呟くとテッセンの居る家へと向かった。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ところ変わって、ここはマグマ団アジト。

 マツブサがメガメガネを外して、休憩をしているところだった。

 

「リーダーマツブサ、いかがなさいましたか?」

「……ああ、ホムラか。突然呼んで済まないな」

 

 そこに立っていたのはマクノシタみたいな体型をした男だった。男はマツブサの言葉を聞いて、頷く。

 

「私はサブリーダーですから、問題ありません。ですが、リーダーマツブサ。いったいどんなご用件でしょうか?」

「我々マグマ団がかつて実施していたプロジェクト……プロジェクトAzothのことを覚えているか」

 

 それを聞いてホムラは頷く。

 プロジェクトAzoth。グラードンのゲンシカイキ、その可能性を調査したことにより浮上したプロジェクトのことである。

 ゲンシカイキはメガシンカと異なる進化の形態を辿り、中でもグラードンのゲンシカイキは自然エネルギーを取り込むことで行われる。メガシンカは人間との絆で行われるが、ゲンシカイキはそうではない――そこに着目したプロジェクトだった。

 

「……プロジェクトAzothは3000年前の最終戦争に用いられたポケモンの生体エネルギー。これを応用することから始められた。そのために、おまえが必要だった」

 

 再び頷くホムラ。

 


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