「あなたたちがこれからどうするか、身の振り方を考えなくてはなりません」
シガナは告げた。
しかしながら、そもそもの話、ユウキとヒガナはこの世界がどんな世界なのか理解もしていないのである。そんな状況で「身の振り方を考えろ」など出来るわけもない。
「……確かにあなたたちは、この世界に来たばかりである……そう認識しているかもしれません。しかし、事実として、あなたたちはこの世界に一度来たことがあるのです。それ以上でもそれ以下でもありません」
「ちょっと待ってよ、シガナ。私、全然意味が理解できないんだけれどさ……」
シガナの言葉にヒガナが水を差す。
そう思うのも当然だろう。シガナの話は完全に彼女たちの常識から逸脱している。
「ですから、申しあげたとおり、この世界で生きていくためには、あなたたちも身の振り方を考えなければならないということです」
「いやいや、だからそういうことじゃなくてさ」
ヒガナは溜息を吐いて、シガナに苦言を呈す。
「どうして私たちがここに呼び出されてしまったのか、それについて問い質したいのだけれど」
「それについては簡単です。あなたたちが残したこと……それが何者かに知れ渡り、レックウザを手に入れようとしたのですよ。まあ、最終的にレックウザではない別の存在を手に入れようとしていますが、それについてはまだその組織以外知りません。プロジェクトAzothなんてものもありましたが、それ以上に被害が拡大するといっても過言ではありません」
「……いったいシガナはどこまでその情報を知っているというの?」
「世界の凡て……ですかね」
シガナは呟いた。
その言葉の意味を――二人は理解することなど、出来るはずも無かった。
◇◇◇
スカイ団アジト。
ソウジュという男が宝珠を見ながら、歩いていた。
ソウジュ――スカイ団首領を務める彼は、科学者だった。
「これでレックウザを自由に操ることが出来る。その先にあるものも、手に入れることが出来る――」
「ほんとうなのですか?」
ソウジュと一緒に歩く女性、ミソラはソウジュの部下であった。ソウジュもミソラの腕を見込み、彼女を右腕として使っているのである。
ミソラの言葉に頷き、話を続ける。
「ああ、そうだ。レックウザを呼び覚まし、宝珠を使うことでレックウザを操る。その力を用いて、『あいつ』を呼び出す。お調子者な性格であるから、呼び出すのは大変苦労するかもしれないが、しかしこれが一番効率のいいやり方と言えるだろう」
「位相空間を中和することで、強引にあの空間から引きずり出すということですね?」
その言葉にソウジュは頷く。
「レックウザには思う存分暴れてもらう。そのための宝珠なのだから。そして宝珠を使って暴れたその先に――位相空間の破壊を行う。正確には、時間の流れがこの世界と違う空間と、この世界を強引に接続すると言えばいいか。そこに、あいつは居る。『マジシャン』と謳われるポケモン、フーパは」